芝草関連用語のご紹介



482倶楽部会員各位
このページは当社の482倶楽部会員へ配信しております482倶楽部通信vol.28(2006年秋号)から連載しております芝草関連用語解説の内容をまとめたページです。芝草関連用語のミニ辞典サイトとしてご活用いただければ幸いです。
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株式会社 那須ナーセリー




《 更 新 情 報 》
2011.07.29 第18回「さ(1)」を追加しました。
2010.10.26 第17回「こ(3)」を追加しました。
2010.06.25 第16回「こ(2)」を追加しました。
2009.12.28 第15回「こ(1)」を追加しました。
2009.10.16 第14回「け」を追加しました。
2009.07.16 第13回「く」を追加しました。
2009.05.14 第12回「き(2)」を追加しました。
2008.12.26 第11回「き(1)」を追加しました。
2008.08.06 第10回「か(3)」を追加しました。
2008.06.24 第1回「あ」から第9回「か(2)」までを掲載しました。







 


<芝草関連用語解説一覧>

<はじめに>
今後、シリーズとして芝草や芝生管理に関する用語(一部、ゴルフ用語なども含む)を簡単にご紹介していきたいと思います。ご紹介する順番は一応、五十音順としますが、そのシーズンに是非とも紹介しておきたいと思った用語については順番を無視してご紹介するかも知れません。また、以下でご紹介する用語の説明もあくまで当方で収集した情報を基に記述したものであり、第三者の校閲を受けたものではありません。一応、全て手元にある専門書や用語集等で確認してはおりますが、分かりやすくを第一に考えて編集したいと思いますので、時には大雑把な説明になったり、大胆に私見を交えることもあろうかと思います。ただ、最低限、「当たらずとも遠からず」ではありたいと思いますので、どうか寛容な心を以てお読みいただきますようお願い申し上げます。

【用語の分類】
 ○農薬
 ○病害
 ○虫害
 ○雑草
 ○管理
 ○気象
 ○土壌
 ○造成
 ○ゴルフ
 ○生理・生態
 ○肥料・植物栄養
 ○育種・分類
 ○生産
 ○形態

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<あ> △TOPへ戻る

●アージラン(農薬)
除草剤の商品名で、一般名はアシュラムと言います。日本芝の雑草防除にはよく使用される定番とも言える除草剤です。茎葉処理剤としても土壌処理剤としても使用されます。残念ながら寒地型西洋芝には薬害があるため使用できません。日本芝の生育期と休眠期に使用でき、イネ科を含む多くの一年生雑草に効果があります。日本芝の生育期に使用できること(高温期ではいくらか薬害もあるようですが)やメヒシバなどのイネ科の雑草にも効果がある点などが本剤の人気の理由でしょうか。ゴルフ場専用の除草剤ではないので、一般の園芸店などでも入手可能かと思います。
注)日本芝を管理されている方向けに掲載してみました。当社の芝には使用できませんので、くれぐれもご注意下さい。

●赤焼病<あかやけびょう>(病害)
ピシウム菌による病気で、主に盛夏に発生します。発生すると芝生が赤く焼けたような症状になるのでこの名前が付けられました。日本芝やバミューダグラスには発生しませんが、寒地型の西洋芝には発生します。特にベントグラスには発生しやすいようなのでご注意下さい。
以前は一晩でベントグリーンをダメにするなどと言われ、大変恐れられていましたが、早期発見、早期防除が徹底されてきた昨今は、あまりこの病気での被害を聞かなくなりました。ただ、本病は進行が非常に速いため、依然として恐ろしい病気に変わりはありません。最初は直径2~3cmの小さなパッチですが、わずか数日で直径数10cmにまで拡大するそうです。特に、風通しや水捌けの悪い芝生で、熱帯夜の続く高温期、台風などでまとまった雨が降った時などは注意して下さい。どのような病気もそうですが、早期発見、早期防除が大切です。

●アキメヒシバ(雑草)
全国に分布する一年生のイネ科雑草です。メヒシバに似ていますが、メヒシバよりも小型で、茎や葉鞘が赤紫色を帯びており(メヒシバは通常緑色をしています)、比較的容易に見分けられます。メヒシバ同様、芝生内に入ると厄介な雑草なので注意してください。

●穴あけ(管理)
文字通り、芝生に穴を空ける作業のことです。芝生をいつまでも美しく維持管理する上で欠かせない大切な更新作業の一つです。
畑の場合、一度作物を収穫してしまえばすぐに耕耘や土壌改良などを行うことができますが、芝生の場合には一度、造成してしまいますと、後は芝を張り替えたりしない限り土壌の耕耘すら容易にはできません。それなのに芝生は毎日のように踏圧を受け、床土は固くなる一方です。これでは、いくら造成時に優れた床土を準備したとしても、年々、土壌の排水性や通気性は悪くなり、引いては芝の生育にも悪影響を及ぼしてしまいます。
そこで、窮余の策として、古の賢い人が考え出した方法が「穴あけ」という訳です。最初はただ単にフォークのようなものを芝生に突き刺して穴を空けただけでしょうが、それでも土壌の排水や通気にはかなりの効果があったと思います。しかしその後、フォークのような棒(ソリッドタイン、ムク刃)を突き刺しただけの穴あけ(フォーキングなどと言います)だと、その穴の周囲の土壌をかえって固めてしまうということが分かり、その対応策として、中空の棒(ハロータイン、中空タイン)で芝と土壌を抜くという方法(これをコアリングと言います)が開発されました。これだと、穴の周囲の土壌を固めずに穴を空けることができますので、穴あけの弊害もなく、安心して何度でも作業することができます。このコアリングの発明によって、芝生管理技術は一段と進歩したと言えるでしょう。
この芝生管理における穴あけ作業の重要性はだいぶ一般にも認識されてきたようで、今では一般の園芸店でも芝生の穴あけ器具を見かけるまでになりました。足踏み式のものなどは作業効率が極めて低そうですが、こうして専用の器具が市販されているだけでも画期的なことだと思います。是非、皆様にもこの「穴あけ」の大切さをご理解いただいて、造成2年目からは必ず穴あけを行っていただきたいと思います。
<補足:穴あけの器具について>
どのような穴あけ器具があるのかをネットで検索しましたら、今はいろいろなものがあるのですね。驚きました。当社のHPでご紹介しているシンプルなもの以外にも以下のような製品があるようです。
・グリーンパンチャー(http://www.greenpuncher.com/
ゴルフ場などで使用している業務用タインと同じものを使用したコアリング器具です。値段もそれなりですが、あまりに本格的なので驚きました。大面積は辛いかも知れませんが、小面積の芝生であれば十分に実用的な製品だと思われます。ただし、タインはあくまで消耗品ですので(使用するとすり減ってきます)、ランニングコストも考えて慎重にご検討下さい。
・芝生用穴あけ機(ローンスパイク)手押し式タイプ(http://www.engei.net/Browse.asp?ID=8200
イギリス製とのことですが、手押しタイプというのは非常に珍しいと思います。うまく機能すれば作業効率は高いでしょうが、ただ、これで穴を空けながら前進するにはかなりの力が必要かと思います。実際、注意書きとして「固めの土壌の場合は最初は力が要りますので、ご了承ください」と書かれていました。正にイギリス人の体力ならでは…の製品なのかも知れません。

●アメダス(気象)
気象庁の地域気象観測システムのことで、アメダスというのは略称です。英語表記(長いので省略)の頭文字を組み合わせるとAMeDASとなり、ここからこの略称が付けられました。天気予報などでも頻繁に出てくる用語なのですが、あくまで観測システムのことなので、どうも実態が分かりにくいという印象があります。
正式名に「地域」とあるようにアメダスは局地的な気象を観測しています。私たちの身近なところに観測地点があり(全国に約1300箇所)、それらの観測データが電話回線や専用回線を通じて東京は大手町にあります地域気象観測センターという所へ集められ、そこで集計、整理されて、アメダスデータとして配信されます。このアメダスのデータは気象庁のホームページで無料公開されていますので、皆様もお近くのアメダスデータを入手して、是非、日々の芝生管理にご活用下さい。
・気象庁 過去の気象データ検索http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php

●アルカリ性(土壌)
pHが7より大きい場合がアルカリ性ですが、土壌の場合は更に細かく区分されていて、pH6.6~7.2が中性、7.3~7.5が微アルカリ性、7.6~7.9が弱アルカリ性、8.0以上が強アルカリ性となります。
ただし、ここでのpHは土壌に水を規定量加えて測定した場合の数値であり、土壌のpHを測定する方法としては水の代わりに塩化カリウム溶液を加えて測定する方法などもあります。同じ土壌を測定しても両者では出てくる数値(pH)が若干異なりますので注意が必要です。
なお、寒地型芝草はアルカリ性の土壌を苦手としていますので、くれぐれも土壌がアルカリ性にならないよう肥培管理には十分にご注意下さい。

●アルミニウム(土壌)
土壌の主成分の一つなのですが、あまり植物には利用されていません。むしろ、土壌が酸性(pHが5以下)になるとこのアルミニウムが土壌溶液中に溶け出し、植物によるリン酸やカルシウム、マグネシウムなどの吸収を阻害してしまいます。ですから、土壌をあまり酸性にすると、リン酸などの肥料をいくら与えても芝草には利用されないことになりますので、くれぐれも土壌のpHを下げすぎない(pHを5以下にはしない)ようご注意下さい。

●暗渠排水(造成)
暗渠(あんきょ)とは覆いをしたり地下に設けたりして、外から見えないようになっている水路のことで、反対に覆いのない水路のことは明渠(めいきょ)と言います。したがって、暗渠排水とは地中に排水管を埋設して地中の余分な水を排除する(排水する)ことを言います。
ゴルフ場や競技場などの芝生には必ずと言っていいほどこの暗渠が設けられていて、降雨などで土壌水分が過剰になると速やかに排水される仕組みになっています。ただ、造成当初はうまく機能していた暗渠排水も、何年も使用していると土壌中の細かい土粒子などで排水管が目詰まりをおこし、排水不良となることも珍しくありません。特にゴルフ場のグリーンで暗渠排水が機能しなくなるとグリーン上に水が溜まりプレーの障害になるばかりでなく、芝の生育にも大きな悪影響を及ぼしてしまいます。お庭の芝生に暗渠を設けた方もいらっしゃるかも知れませんが、暗渠排水は恒久的なものとは考えず、何年かに一度は暗渠部分の芝生を剥がして排水管等のメンテナンスをされることをお勧めいたします。

●アンジュレーション(ゴルフ)
ゴルフ場のグリーンでゴルファーを時に苦しめ、時に楽しませてくれるのが、グリーンの微妙な起伏、すなわちアンジュレーションです。このアンジュレーションがあるがゆえにパッティングは難しく、また面白くもあるのですが、何もアンジュレーションはゴルファーを楽しませるためだけにあるわけではありません。本来はこの傾斜によってグリーン上に溜まった水を排水する(表面排水)という機能も併せ持っているのですが、ただ、最近の新しいゴルフ場、とりわけアメリカンテイストのゴルフ場のグリーンでは、ただ見た目の美しさとパッティングの難易度を高めることのみに特化したアンジュレーションのきつい、うねうねとしたグリーン(俗に言うポテトチップスグリーンというものです)が多いように思います。このようなグリーンではほとんど表面排水は期待できませんので、床土の排水性が悪かったり、暗渠が目詰まりを起こしたりしますとちょっとした降雨でも水溜まりができるようになり、ゴルファーにとってもまた管理者にとってもなんとも悲惨な結果になってしまいます。また、この種のグリーンは均一な刈り込みが難しい、散水ムラが生じやすいといった欠点もあり、管理者にしてみれば「もう少しアンジュレーションがなければ…」というのが本音だと思います。やはり、グリーンのアンジュレーションにしても「過ぎたるは及ばざるがごとし」なのだろうと思います。

●アントシアン(生理・生態)
アントシアンとは植物の花や葉、果実などに含まれている赤、紫、青などを示す色素で、これを含む代表的な果物としてはブドウ、リンゴ、イチゴ、チェリー、モモなどがあります。秋の紅葉の赤い色も実はこのアントシアンの色で、西洋芝にも低温になるとこのアントシアンが合成され、葉が紅葉してくるものがあります。冬場にビバターフ(ケンタッキーブルーグラス)の葉先が赤くなったり、ベントグラスに赤みがかったパッチ(斑)が現れたことがあるかも知れませんが、これもこのアントシアンが合成されたことによるものです。なお、ベントグラスにはアントシアンを合成しやすい系統とそうでない系統があるようで、品種によってパッチの出方がだいぶ異なります。また、造成当初は出なかったアントシアンのパッチが何年かして現れてくるということも多いようです。

●アンモニア態窒素(肥料)
アンモニア基(NH4)をもつ無機態窒素で、硝酸態窒素とともに植物への重要な窒素供給源となっています。土壌中では有機態窒素が土壌微生物により分解されて生成され、植物に吸収、利用されます。無機質肥料では硫安(硫酸アンモニウム)や塩安(塩化アンモニウム)、硝安(硝酸アンモニウム)などがアンモニア態窒素を含んでいますが、何れも速効性肥料(水に溶けやすく肥効の現れるのが速い肥料)ですので、使用に当たっては施用量、肥料焼け等に注意が必要です。

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<い> △TOPへ戻る

●イエローパッチ(病害)
リゾクトニア菌による病気で、冬の寒地型西洋芝に発生します。このため、ウインターパッチとも呼ばれますが、正式名は疑似葉腐病(ぎじはぐされびょう)と言います。
芝生上に直径20~50cm程度の円形パッチを形成し、しばしばリング状になります。大発生すると芝生の美観を損ないますが、芝が枯死するほどの深刻な被害になることは稀で、ほとんどの場合は気温の上昇に伴い自然回復します。
殺菌剤としては、住友化学園芸さんのシリーズですと「ロブラール水和剤」などが効果的ですが、発生時期が冬期間となるため芝の生育が悪く、ダメージからの回復が遅い(病斑が消えにくい)という問題があります。したがって、殺菌剤を使用するならば予防的に散布するか、発生のごく初期に散布した方がよいでしょう。

●イオウ(肥料)
植物の必須元素の一つで、窒素、リン酸、カリ、カルシウム、マグネシウムなどと共に植物にとって多量に必要な元素(多量要素)とされています。イオウが欠乏するとタンパク質の合成が阻害され、窒素欠乏と類似した症状を示すようですが、ただ、イオウの天然供給量が多い火山国の日本ではこのようなイオウ欠乏となることはほとんどないとされています(そのため、日本ではイオウは肥料成分として認められていません)。
ただ、これはあくまで一般の農地土壌についてであり、砂耕栽培やゴルフ場のサンドグリーンなどの特殊な土壌についてはこの限りではありません。このような土壌は養分の保持力が低いため徐々にイオウの溶脱が進み、いずれはイオウ欠乏になってくることが予想されます。ですから、砂をベースとした床土を造成されたお客様は、時折、硫安(硫酸アンモニウム)などのイオウを含む肥料を施用しておいた方が無難でしょう。ただ、この種の肥料は肥料焼けを起こしやすかったり、土壌を酸性にしたり、芝にとって有害な硫化水素の発生源になるなどの問題がありますので、くれぐれも施用時期や施用量などには注意して下さい。

●異常気象(気象)
最近はこの「異常気象」という言葉を頻繁に耳にするようになってきました。そもそも気象庁の定義としては「ある場所(地域)で30年に一回程度発生する現象」が異常気象ということですので、最近は過去30年間にはほとんど発生しなかったような現象が度々起こっている、ということになります。確かに「観測史上最も○○」だとか「観測開始以来、初の○○」などと言う表現も多く耳にしますので、この異常気象という用語の乱発もやむを得ないのでしょうが、ただ、こうも異常気象が多くなり、日常化してくるとこの定義自体を見直さないといけないように思えます。

●イタリアンライグラス(分類・種類)
本来は牧草として用いられていた一年生~越年生のイネ科植物ですが、寒地型芝草としても用いられます。和名はネズミムギです。代表的な寒地型芝草であるペレニアルライグラスとは同じLolium属の仲間ですが、ペレニアルライグラスよりも暑さに弱く、芝質も劣るため、単一の芝生として利用されることはほとんどありません。ただ、発芽や初期生育が非常に早いため一時的な緑化には適していて、冬枯れする暖地型芝草の上に播種して冬期間のみ利用する方法(ウインターオーバーシーディングと言います。詳しくは「う」の項でご説明します)などに利用されることがあります。日本では競馬場などでこの芝草を利用したウインターオーバーシーディングが行われているようです。

●一年生雑草(雑草)
一年以内に発芽、成長、開花、結実してライフサイクルを完了する雑草のことで、代表的なものとしてメヒシバ、オヒシバ、カヤツリグサ、スベリヒユ、エノコログサ、ヤハズソウ、コニシキソウなどがあります。この種の雑草が芝生内に発生してきた場合には、とにかく種子を落とす前に除草することが肝心です。
なお、一年生雑草には春に発芽して夏~秋に開花結実する雑草だけでなく、秋に発生して翌年の春~初夏に開花結実する雑草を含める場合もありますが、後者は越年生雑草として区別されることが多いため、ここでは前者の雑草のみを一年生雑草としてご紹介しております。

●市松張り(造成)
張芝工法の一つで、市松模様にソッドを張る工法です。ノシバを使った非常に低予算の工事などでは稀に行われるようですが、当方はまだ一度もこの工法で施工された現場を見たことがありません。
この張り方のメリットは何と言っても購入するソッドの量が芝生面積の半分で済むことですが、その分、目地が埋まり芝生が完成するまでには実に多くの時間がかかります。それまでに張ったソッドが動いてしまったり、目地に雑草が発生したり、目土が流亡したり等々、多くの問題が予想されますので、綺麗な芝生に仕上げるのはかなり難しいと思われます。よほどノシバの生育に適した温暖な地域でないと難しい工法だと言えるでしょう。西洋芝オーナーには全く無縁の工法ではありますが、取りあえずご紹介してみました。
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■□■□■(市松模様のイメージ)

●いもち病(病害)
イネに発生する病気として非常に有名ですが、寒地型芝草にも発生することがあります。夏場の高温期に発生し、淡褐色~褐色で直径10~30cmのパッチを形成します。多発すると芝生が裸地化するほどの被害になります。海外ではベントグラスやトールフェスクなどにも発生するようなことが言われていますが、国内ではまだペレニアルライグラスでしか発生は確認されていません。したがって、当社の芝ではあまり心配しなくてもよさそうです。

●インターシーディング(管理)
ある芝生の上にそれと同類の(これが重要)芝草の種子を播くことを言います。つまり、トールフェスクの芝生に別の草種(例えば、ケンタッキーブルーグラスなど)を播種することや、ベントグラスの芝生に別の新品種のベントグラスを播種することなどはこのインターシーディングに当たります。
この言葉は比較的新しい用語で、芝草の本場アメリカの専門書でも少し古いものでは全く使用されていなかったりします。おそらくは近年、芝生の草種転換や品種転換の技術が研究、開発されるにつれ、従来のオーバーシーディングと区別したより厳密な表現が必要になり、この用語が使われ出したのだと思います。
最近はゴルフ場のグリーンなどで新品種を使ったインターシーディングが盛んに行われるようになってきましたが、性質の全く異なる芝草同士のオーバーシーディングと違って、似た性質同士のインターシーディング(特に古い品種へ新品種を播種した場合など)はその効果を確認するのが非常に難しいというのが実情です。用語は瞬く間に広まりましたが、技術的にはまだまだ多くの課題が残されています。

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<う> △TOPへ戻る

●羽化<うか>(虫害)
昆虫が幼虫または蛹から成虫に脱皮、変態することを羽化と言います。これに対し、卵から幼虫になることは孵化<ふか>、幼虫から蛹になることは蛹化<ようか>と呼びます。
昆虫には幼虫から成虫に変わるまでに蛹になるものとならないものがあり、前者の幼虫→蛹→成虫という変態を完全変態、後者の幼虫→成虫という変態を不完全変態と言います。前者の代表例としてはカブトムシやチョウ、ハチなど、後者の代表的なものとしてはトンボやセミ、バッタなどが挙げられます。芝草の代表的な害虫であるコガネムシ類やシバツトガ、スジキリヨトウなどは何れも完全変態をする昆虫です。

●ウシノケグサ亜科(分類・種類)
イネ科を構成する亜科の一つで、寒地型芝草は全てこの亜科に属します。ウシノケグサ亜科にはベントグラスが属するコヌカグサ属、トールフェスクが属するウシノケグサ属、ペレニアルライグラスが属するドクムギ属、そしてケンタッキーブルーグラスが属するイチゴツナギ属などがあります。
他の芝草が属する亜科としては、バミューダグラスや日本芝が属するスズメガヤ亜科、センチピードグラスやセントオーガスチングラスなどが属するキビ亜科などがあります。

●ウスチャコガネ(虫害)
芝草の重要害虫であるコガネムシ類の一種です。分布は本州の関東以西、四国、九州とされています。
この虫は年1回の発生で、幼虫のまま越冬し、3月中旬頃から蛹化し、4月中旬頃から羽化、4月下旬頃から地上に現れはじめ、発生のピークは5月上旬頃になります。
芝への被害は幼虫が芝草の根を盛んに摂食する9~10月頃に現れます。防除方法としては幼虫に対して9月上旬頃に薬剤散布を行います。
参考HP:http://www.insects.jp/kon-koganeusutya.htm

●うどんこ病(病害)
芝草に発生する病害の一つで、芝の茎葉がうどん粉をまぶしたかのように白くなるのが特徴です。ケンタッキーブルーグラスなどのPoa属やトールフェスクなどのFestuca属に多く発生し、特に低日照条件下となる日陰部分や通気の悪い場所で発生しやすい傾向があります。対策としては、まず日陰にならないよう樹木の枝おろしや間伐、移植などを行い、周囲の環境を整備します。窒素肥料の過剰施用は避け、刈り高を高めにし、こまめに刈込みます。被害が深刻な場合には殺菌剤を散布しますが、ただ、何れの殺菌剤もまだ芝のうどんこ病には適用登録されておりませんので、芝に使用できる殺菌剤の中から他の作物のうどんこ病に適用のあるものを探して使用することになります。住友化学園芸さんのシリーズですと「サプロール乳剤」などがこれに該当するようです。
参考HP:http://www.sc-engei.co.jp/guide/syo00141.html

●雨量(気象)
専門的に言いますと、雨量とは「地表の水平面に達した雨の量を水の深さで表した量」となります。単位にはmmを使用し、0.5mm単位で計測されます。
ここで重要なのは、あくまで雨量は『雨』の量であり、雪やあられ、ひょうなどは含まれない、ということです。似た用語に「降水量」がありますが、こちらは文字通り「降った『水』の量」ですので、雪やあられ、ひょうなども含めて計測されます。

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<え> △TOPへ戻る

●エアレーション(管理)
芝生に穴を空け、通気を図る作業をエアレーションと言います。つまり、先にご紹介した「穴あけ」という作業もこのエアレーションに該当します。主に細い棒状のものを芝生に突き刺して行いますが、ゴルフ場向けですと、空気や水を高圧で注入して穴を空ける機械などもあります。固結した土壌は通気性が低下して土壌中の空気交換が滞り、根に必要な酸素などが不足してしまいます。エアレーションを行うことで新鮮な空気が入るようになり、根の発達が促され、また嫌気性細菌の繁殖や硫化水素などの有毒なガスの発生を抑えることができます。芝生地の場合、踏圧による固結が進みやすく、また一旦造成してしまうと土壌を耕耘することができませんので、このエアレーションを含めた更新作業は芝生を永年的に維持管理する上で必要不可欠な作業と言えるでしょう。

●栄養器官(生理・生態)
植物の花や果実、種子など生殖に関わる器官を生殖器官と言い、これに対し、それ以外の葉や茎、根などの器官を栄養器官と言います。芝草を芝生として利用する場合、花を観賞したり、種子を収穫したりはしませんので大切なのは栄養器官だけですが、西洋芝の場合にはほとんどが種子繁殖になりますので、品種の育成などの場面では種子の生産力も重要な性質になってきます。トールフェスクなどは初夏に丈夫な穂が出て管理者を困らせたりもしますが、穂が出ないような品種では種子も取れない訳ですから、なかなか難しい問題です。

●栄養繁殖(育種・生産)
種子による繁殖に対し、茎や葉、根などの栄養器官による繁殖を栄養繁殖と言います。挿し木や接ぎ木、株分け、球根繁殖などがまさにこの栄養繁殖に当たります。ノシバやコウライシバなどの日本芝は種子の発芽率が低いため主に栄養繁殖で生産されています。
栄養繁殖ですと親植物と同一の形質を持った個体を増やすことができますので、突然変異株などの品種保存に適しています。かつて当社でも「ミナクル」というベントグラスの新品種を開発しましたが、これも栄養繁殖によるものでした。

●液肥(肥料)
液体肥料のことで、大きく分けて土壌施用のものと葉面散布用のものがあります。土壌施用のものは他の固形肥料と同じように土壌に撒き、植物の根から吸収させますが、葉面散布用のものは植物体に直接散布して葉から養分を吸収させます。後者は根が障害を受けて十分に吸収できないような場合に大変有効です。液肥には肥料成分は低いものが多く、液体であるため成分量に対して割高にはなりますが、肥効が速く現れることや肥料焼けの心配が少ないこともあり、芝生管理においても利用価値の高い肥料です。

●越年草(生理・生態)
秋に発芽し、翌年に開花、結実、枯死する植物で、生育期間が1年以内のものを言います。生育期間が1年以内なので冬型一年草と言うこともありますが、年を越して生育することから二年草に含めることもあります。芝草ではイタリアンライグラスがこの越年草になります。

●N-P-K成分(肥料)
肥料3要素である窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)がそれぞれいくら含まれているかを%で表したもので、N、P、Kの含有率が同じものを水平型、リン酸の多いものを山型、窒素とカリが多くリン酸の少ないものを谷型などといった分類がなされます。通常、肥料の袋にはそれぞれの含有率が明記されていますので、肥料を購入する際には必ずチェックするようにしましょう。芝生初心者ならばN-P-K=8-8-8などの水平型で含有率も低めのものが良いでしょうが、より上級の芝生管理を目指すのであれば、芝の状態や季節に応じて異なる型の肥料を使い分けたいものです。

●MCPP(農薬)
ホルモン型除草剤の一つで、寒地型西洋芝ではケンタッキーブルーグラスに適用があります。茎葉処理剤ですので雑草が発芽した後に使用します。広葉雑草に効果があり、チドメグサ、クローバー、カタバミ、タンポポ、スギナなどの防除の難しい広葉雑草にも効くと言われています。一般のホームセンターなどでも「MCPP液剤」という商品名で販売されており、比較的入手は容易なようですが、あくまで除草剤ですので、使用する場合は芝に薬害が発生しないよう十分に注意して使用してください。

●塩害(生理・生態)
文字通り、塩(塩化ナトリウム)による障害のことで、潮風によって塩化ナトリウムが付着したり、海水が流入するなどして土壌の塩分濃度が高まると芝に障害が現れます。ノシバ、コウライシバ、バミューダグラスなどは塩害に強い性質(耐塩性)を持っており、海岸付近に自生するものもあるほどですが、寒地型西洋芝は全て耐塩性が低く、塩害を受けやすいので、海岸付近の芝生では注意が必要です。また、海岸から離れていても台風などで塩分を含む雨が降ることがありますので、台風通過後には散水して塩分を洗い流すなどの配慮も大切でしょう。

●塩基性肥料(肥料)
肥料の塩基性(アルカリ性)には化学的な塩基性と生理的な塩基性とがあり、前者は肥料の水溶液がアルカリ性を呈するものを言い、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム(炭カル)などの石灰質肥料や草木炭などがあります。一方、後者は植物に肥料成分が吸収された後に残された成分(副成分)がアルカリ性を呈するものを言い、石灰窒素、硝酸石灰、硝酸ソーダ、熔成リン肥などがあります。

●エンドファイト(育種・生産)
植物体内に寄生する糸状菌や細菌の総称で、これに感染した植物は病虫害に抵抗性を示したり、乾燥などの環境ストレスに強くなることなどが知られています。芝草でもこの特性が注目され、既にペレニアルライグラスやトールフェスクでは耐虫性品種としてエンドファイト感染種子が輸入、販売されています。

●塩類障害(生理・生態)
過剰施肥や蒸発に伴う水の表層移動によって、土壌溶液中に含まれる塩類が表層に集積し、これにより植物の根の水分吸収や養分吸収が阻害されるなどの障害を言います。土壌の種類によっても障害の程度が異なり、一般には粘土や腐植含量の少ない土壌ほど障害を受けやすいとされています。

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<お> △TOPへ戻る

●追い播き(管理)
芝生の密度を高めたり、薄くなった部分を補うなどの目的で芝生の上に再び同じ種類の種子を播くことを言います。芝生の補修目的などで実施されることが多いわけですが、ソッド(切り芝)による張替え補修と比較した場合、
・あまりコストがかからない(単位面積当たりではソッドよりも種子の方が安い)
・施工も比較的簡単である(傷んだ部分を剥がさなくても施工可能)
・施工面積を選ばない(小面積でも大面積でも対応できる)
などの点で優れています。ただ、実際には芝生の上から種を播くため、それらをきちんと発芽させ、成植物にまで育てるまでが難しく、施工後の養生管理にはかなりの手間と時間がかかります。
成否の鍵は、播種前の下地作りと施工時の覆土の厚さ、施工後の水管理などになるかと思いますが、完全に裸地化している場合や短期間で確実に補修したい場合、施工後はあまり手間をかけたくない場合などは多少コストはかかってもソッドによる張り替え補修の方がメリットは大きいと思います。やはり、ケースバイケースで使い分けるのが賢い補修方法と言えるのではないでしょうか。
※当社では種子の販売は行っておりません。悪しからずご了承ください。

●黄化(生理・生態)
植物が光や養分の不足などにより充分なクロロフィル(葉緑素)の生成ができず、葉や茎が黄色くなることを言います。同じ原因でも色素が目立たずに白くなる場合には「白化」と呼び、両者を合わせて「黄白化」とも言います。
もし芝生の一部もしくは全体にこの黄化が見られるようでしたら、日照不足か養分欠乏になっている可能性があります。日照時間やこれまでの施肥実績などを確認して、黄化の原因を推定してみましょう。日照不足ならば原因となる遮蔽物を取り除き(建物など不可能な物も多いでしょうが…)、養分欠乏であればすぐに施肥を行って下さい。ただ、養分欠乏の場合、どの要素が不足しているかまでは特定できませんので、微量要素を含めていろいろな要素を満遍なく施用しておくと良いでしょう。

●オオバコ(雑草)
オオバコ科の多年草で、踏み付けに強く、酸性土壌を好むので日本の芝生では非常に問題となる雑草です。多年生であるため駆除は難しく、やはり西洋芝の場合には手取り除草が中心になるでしょう。一応、生育期のこの草に効果があるとされている「ブラスコンM液剤」という除草剤が一般向けにも発売されており、ケンタッキーブルーグラスやトールフェスクならば使用できることにはなっているようですが、ただ、除草剤は使用量や時期などを少しでも間違えますと薬害が発生してしまう恐れがありますので、出来るだけ手取り除草で対処したいものです。
ブラスコンM液剤の商品紹介ページは以下の通りです。
http://www.hokkosan.co.jp/garden/ref/goods/burasu.html

●オーソサイド(農薬)
一般向けにも市販されている殺菌剤の商品名で、成分名は「キャプタン」です。葉腐病(ブラウンパッチ)や赤焼病、ピシウム病などに効果があり、住友化学園芸さんから「オーソサイド水和剤80」という商品名で発売されています。オーソサイド水和剤80の商品紹介ページは以下の通りです。
http://www.sc-engei.co.jp/guide/syo00160.html

●遅霜(気象)
晩春から初夏の頃に降りる霜のことで、晩霜(ばんそう)とも言います。低気圧の通過に伴って強い寒気が流れ込み、その後、移動性高気圧に覆われて良く晴れた時に起きやすく、発芽期や成長期に入った農作物などに大きな被害(晩霜害)をもたらします。寒さに強い西洋芝の場合にはあまり問題にはなりませんが、全く影響がないとは断言できないので注意することは必要でしょう。

●オーバーシーディング(管理)
「インターシーディング」の項でも触れましたが、既成の芝生の上に異なるタイプの芝の種を播くことを「オーバーシーディング」と言います。すなわち、暖地型芝草の芝生に寒地型芝草の種を播くことや寒地型の芝生に暖地型の芝の種を播くことが「オーバーシーディング」というわけです。近年、冬枯れする暖地型芝草の上にイタリアンライグラスなどの寒地型の芝草を播種して冬期間も芝生を緑にする技術(これを「ウインターオーバーシーディング」と呼びます)が広まり、ゴルフ場やサッカー場などで利用されるようになってきたため、最近はこれを単に「オーバーシーディング」と呼ぶこともあるようです。
なお、同じ意味で「オーバーシード」という用語が使用されているのを目にすることがありますが、厳密には「オーバーシード」は「overseed」という動詞であり、やはり名詞として使用するならば「オーバーシーディング」を用いるべきでしょう。

●オヒシバ(雑草)
一年生のイネ科の雑草で全国に広く分布しています。生育期間は4月~10月で、8月~10月頃に穂を出します。種子を落としてしまうと厄介なので、まめに芝生を刈り込んで種子を作らせないことが大切です。
同じイネ科の雑草であるメヒシバやアキメヒシバと似ていますが、穂の形状が異なるので穂を見れば容易に区別できます。ただ、芝生の中に生えたものですと穂を確認することが難しいので、茎が扁平であることでメヒシバやアキメヒシバ(両種とも茎は丸形)と区別すると良いでしょう。

●オルトラン(農薬)
殺虫剤の商品名で、成分名は「アセフェート」と言い、スジキリヨトウやシバツトガに効果があります。一般向けとしては住友化学園芸さんから「オルトラン水和剤」と「オルトラン粒剤」が発売されています。オルトラン水和剤の商品紹介ページは以下の通りです。
http://www.sc-engei.co.jp/guide/syo00117.html

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●害虫(虫害)
芝草の場合の害虫とは、直接もしくは間接的に芝草の生育に害を与えたり、芝生としての美観を損ねたりする昆虫やダニ類、線虫類などを言います。代表的なものとしては、コガネムシ類、シバツトガ、スジキリヨトウ、タマナヤガなどがいます。

●害虫防除(虫害)
文字通り、害虫による害を防ぎ除くことですが、大きく分けますと害虫を駆除することと予防することがあります。害虫の駆除は発生した害虫を直接的に殺虫することであり、予防は害虫の発生を抑えたり、害虫による被害を回避することです。
害虫はその生涯を通じて加害することは少なく、主として幼虫時代に加害するものや、成虫になってから加害するものなどがいます。したがって、その防除に当たっては害虫の加害様式や発生生態などを充分に理解した上で、最も効果的な対策を考えることが大切です。
防除の方法としては、殺虫剤や忌避剤などによる化学的防除、器具による捕殺や誘殺などの機械的物理的防除、害虫の発生や活動を抑制するように環境を改善したり、耐虫性の高い芝草品種を導入するなどの生態的防除、害虫の天敵を利用する生物的防除などがあります。

●界面活性剤(農薬)
気体と液体、液体と液体、液体と固体などの二層の界面に吸着しやすい性質を持ち、その界面の性質を著しく変える物質を言います。現在、界面活性剤は医薬品から洗剤、食品、化粧品、工業材料まで広く利用されており、農業の分野では農薬の製剤と散布された農薬成分の付着、浸透を高める展着剤などとして利用されています。

●改良品種(育種・生産)
有用な動植物をより利用価値の高いものへと人為的に改良された品種のことで、改良種とも言います。芝草でも多くの改良品種が生み出され、利用されています。西洋芝などはそのほとんどが改良品種であり、最近はノシバやコウライシバについても多くの改良品種が育成されてきています。

●化学的防除(管理)
いくつかある病害虫や雑草などを防除する手段の内、農薬などの薬剤を利用した防除方法のことを「化学的防除」と呼びます。化学的防除は最も簡便かつ効果的な方法ではありますが、かつて農薬の過剰使用による環境への悪影響が問題となり、それに対する反省から、近年は総合防除(IPM)という考え方が主流となっています。総合防除においては、耕種的防除や生態的防除、物理的防除などが重視され、化学的防除はそれらの方法で防除困難な場合に限り必要最小限、使用されることが望ましいとされています。

●化学肥料(肥料)
無機質の原料に化学的操作を加えて製造された人造肥料のことを言います。反意語は「天然肥料」になります。類似した用語に後述する「化成肥料」がありますが、意味が異なりますので注意が必要です。
化学肥料は自給肥料や有機質肥料に比べ、効き目が早く、成分濃度が高く、取り扱いが容易で含有成分当たりの価格が安い、等々の特長を持っています。
代表的なものに、硫安、尿素、塩安、硝安、石灰窒素、過リン酸石灰、熔リン、焼成リン、塩化カリ、硫酸カリ、リン安、高度化成肥料などがあります。

●火山灰土壌(土壌)
火山からの噴出物(主に火山灰)を母材とする土壌のことを言います。北海道・東北・関東・九州などに広く分布し、代表的な火山灰土壌としては黒色を呈した「黒ボク土」(くろぼくど)があります。
黒ボク土はわが国の畑地土壌の主流となっており、一般に腐植(土壌有機物)の含量が高く肥沃なのですが、リン酸を固定する力が大きいため、作物がリン酸欠乏になりやすいという欠点もあります。そのため、利用に当たってはリン酸肥料の大量投入による改良が必要となります。

●化成肥料(肥料)
窒素、リン酸、カリのいずれか2成分以上を含み、化学的操作により製造された肥料のことを言います。通常は粒状品であり、わが国で最も多く流通している肥料です。複数の肥料成分を含むため施肥回数を少なくでき、粒状なので散布しやすいという特長があります。
化成肥料は主成分の含有量によって高度化成(合計が30%以上)と普通化成(30%未満、低度化成とも言う)に区分され、また、主成分の種類によってNK化成、PK化成、リン安など、主原料の違いによってリン安系、硝酸系、有機入り化成などに分けられます。

●活着(生理・生態)
移植した植物が発根して成長する状態になることを言います。ソッドを張って造成した芝生では、芝の根が床土まで下りて根付いてくれば(ソッドが容易に剥がれない状態になれば)、充分に活着したと言えるでしょう。活着するまでは芝が乾燥しやすいので、水管理には特に注意する必要があります。

●カブラヤガ(虫害)
俗にネキリムシ(根切虫)とも呼ばれる害虫の一種で、幼虫期に多くの作物や芝を食害します。本州、四国、九州に分布し、関東以西では年3回ほど発生します。ゴルフ場ではグリーンに多く発生し、コウライシバよりもベントグラスのグリーンで多く発生する傾向があります。同じ仲間にタマナヤガがいます。
防除は主に発生量の多い第2回の発生時期(第二化期と言います)に若齢幼虫を対象とした殺虫剤散布を行います。幼虫の活動は夜間のため、地表近くに上がってきている夕方に散布すると効果的です。殺虫剤は「オルトラン水和剤」などが効果が高いようです。
参考HP:http://www.sc-engei.co.jp/guide/syo00117.html

●カリウム(肥料)
植物が必要とする三大栄養素の一つです。元素記号はKです。植物の光合成に関与し、炭水化物の蓄積量を高め、茎や葉を丈夫にします。結果、病害抵抗性や耐旱性、擦り切れ抵抗性なども高まります。茎葉が軟弱になりやすい日照の少ない芝生では多めに施用すると良いでしょう。ただし、多すぎますとマグネシウムや石灰の吸収を妨げてしまいますので、くれぐれも過剰にならないよう注意して下さい。

●刈屑(管理)
芝刈機で刈り取った芝の茎葉部分で刈カスとも言います。美しい芝生に仕上げ、維持するには刈屑をきれいに取り除くことが大切です。また、刈屑を放置しますと厚いサッチ層が形成され、芝生の劣化にも繋がります。

●刈込み(管理)
芝刈機で芝生を一定の高さに刈ることをいい、芝生の維持管理の中で最も基本的かつ重要な作業です。この作業によって初めて草むらが芝生となり、芝生として維持されるといってよいでしょう。
ただ、この作業は芝草の大切な茎葉部分を刈り取ってしまうため、芝草にとっては決して好ましいものではありません。当然ながら芝草の生育への影響も大きく、作業に当たっては芝草の種類や状態に応じた適切な方法、タイミングでの実施が求められます。芝生管理においては日常的な作業となりますが、一歩間違えれば芝草に甚大なダメージを与えかねない大変危険な作業でもあります。くれぐれも細心の注意を以て行いましょう。

●刈高(管理)
芝生を刈り込む際に設定した刃の高さ(刃と地面との距離)をいいます。したがって、あくまで機械の設定値であって、実際に刈り込んだ時の芝の高さ(芝の長さ)とは異なります。同じ刈高であっても芝の状態(芝が寝ているか立っているか)や地面の固さ、芝刈機の種類(リール式かロータリー式か)、芝刈機の性能などによって刈り込まれた芝の高さはかなり異なり、通常は芝の高さ>刈高になります。
刈高の設定は芝生の美観や利用性だけでなく、芝草の生育状態にも大きく影響する非常に重要な要素です。芝生の健全な維持管理を行うためには、何より芝の種類や状態、気象条件、芝生の用途などに合わせて適切な設定をすることが求められます。

●カリ肥料(肥料)
肥料の三大要素の一つであるカリ(カリウム)を有効成分とする肥料のことです。カリ肥料には硫酸カリ、塩化などがあります。国内にはカリ鉱床がないため、原料は全て輸入されています。自給肥料である家畜糞堆肥や草木灰(そうもくばい、草や木を燃焼させた後の灰のこと)などにもカリが多く含まれています。

●カルシウム(肥料)
植物の必須元素の一つで、元素記号はCaです。芝草の組織内では窒素、カリに次いで3番目に多く見られる元素です。細胞壁の重要な構成成分であり、分裂組織(成長点、頂芽など)の成長に必須の成分となっています。体内移行性が低いので切れ目無く吸収される必要があります。砂などの保肥力の低い土壌では欠乏に注意し、低濃度での継続的な供給を心掛けましょう。

●川砂(土壌)
砂は産地によって山砂、川砂、海砂などに区別されます。川砂は文字通り河川から採取された砂のことで、主に中流から下流にかけての川底や河口の三角州、ダムの湖底などから採取されます。山砂よりも細かい粒子(シルトやクレイ)が少なく、海砂のような塩分も含みませんので、床土や砂目土に使用するには適した砂だと言えます。
一口に川砂といっても粒子の大きさや形状はいろいろで、ダム底や上流で採取された砂は粒が大きめで角張っており、下流や河口などで採取されたものは細かく丸みを帯びています。土に混ぜて使用する場合はあまり問題とはなりませんが、砂主体の床土にするのであればこうした砂の形状や大きさにも配慮する必要があります。永続的な排水性や通気性の確保、そして造成後の床土の安定性(適度な固さ、締まり具合)を考えますと、床土としては細かい粒子を含まず、大きさの揃った砂で、なおかつ角張りすぎず、丸すぎない形状のものが理想的と言えるでしょう。

●寒害(生理・生態)
冬期の寒さによって植物が受ける被害のことです。寒害には大きく分けて、著しい低温により芝の細胞が凍結するなどのダメージを受ける場合と、寒い期間が長引くことによって芝の生育が阻害される場合とがあります。わが国で多いのはおそらく後者の方で、特にノシバやコウライシバなどの暖地型芝草が長引く冬の寒さによってダメージを受け、春の萌芽が遅れたり、萌芽しなくなるといった事例が多いようです。

●緩効性肥料(肥料)
化学的合成によってつくられ、水にはほとんど溶けず、土壌中で加水分解や微生物分解によって有効化し、植物に吸収、利用されるタイプの肥料で、広義では被覆肥料(コーティング肥料)もこれに含まれます。緩やかに肥効が現れるため施肥回数を少なくできることや、一度に多く施用しても濃度障害などが起こりにくいというメリットがあります。そのため初心者でも安心して使用でき、芝生管理においても大変使いやすい肥料と言えるでしょう。

●潅水(管理)
植物に水を与えること、つまりは水遣りのことです。昔から「水遣り三年」と言われるように、植物の栽培における潅水は非常に重要であり、なおかつ難しく、奥の深いものとされています。芝生の管理においても同様で、とりわけ寒地型西洋芝の管理における潅水は芝の生育だけでなく、病害等の発生や夏越しの成否にも大きく影響する大変重要な作業になります。
潅水を行うに当たっては、芝の状態(乾き具合や根の張り具合など)や土壌の排水性(保水性)、現在の含水量(湿り具合)、その日の気象条件(気温、湿度、日照、風の強さ、天気の変化)などを総合的に判断して、その都度、適切な潅水の量やタイミングなどを決める必要があります。しかも、芝生全面が均一な状態になっていることはほとんどなく、通常は芝生の中に乾きやすい箇所と過湿になりやすい箇所が混在しているものです。したがって、潅水の手段としてはスプリンクラーのみに頼らず、そうした部分的なバラツキを補正できる手撒き散水も併せて行うことが大切です。

●乾燥害(生理・生態)
植物について使用される場合には、植物体内の水分が不足して生じる「生理障害」のことを表します。それ以外にも、気象の分野では空気の乾燥によって起こる「災害」のことを表しますし、農業の分野では日照り続きなどで水不足となって生じる作物などの収量低下、枯死などの「被害」のことを表します。
芝草における乾燥害は茎葉の萎れに始まり、最終的には枯死に至る大変恐ろしいものです。特に寒地型芝草には乾燥に弱いものが多いため、乾燥しやすい時期は十分な注意が必要です。しかも、寒地型の芝生の場合には排水性の高い床土になっていることが多く、より一層乾燥しやすい条件にあると言えます。ただ、乾燥害を恐れるあまり過剰に潅水したのでは土壌が過湿となり、根腐れを起こしてかえって芝を弱らせることになってしまいます。乾燥害への注意も必要ですが、それと同じくらい、過湿による生理障害にも注意が必要です。

●寒地型芝草(分類・種類)
芝草を分類した呼び方の一つです。芝草を大別すると寒さに強く冷涼な気候を好む芝草と、暑さに強く温暖な気候を好む芝草とに分けられます。前者を寒地型芝草と呼び、後者を暖地型芝草と言います。
寒地型芝草としては、ベントグラス類、ブルーグラス類、フェスク類、ライグラス類などがあり、いずれも海外から導入された芝であるため、西洋芝とも呼ばれます。(注:暖地型の西洋芝もあるため、寒地型芝草=西洋芝ではありません)
寒地型芝草の生育適温は16~24℃とされ、日本では本州の高冷地や東北、北海道などの冷涼な地域に適した芝草です。しかしながら、日本芝のように冬枯れせず、冬でも緑を保つことや、葉色の美しさと葉の柔らかさなどの美点もあって、ゴルフ場や競技場などを中心に日本でも広く利用されるようになっています。ただ、暑さや病気に弱く管理が難しいといった欠点もあり、その普及にはまだまだ多くの課題が残されています。今後より耐暑性の高い品種が開発されれば、私たちにとってより身近な芝草となってくれるはずです。

●寒冷紗<かんれいしゃ>(管理)
目の粗い薄い布で、農業や園芸の分野では遮光、防寒、防虫などの目的で使用されます。目の粗さや色(黒、白、銀色)など様々なものがあり、用途に合わせて使い分けます。ゴルフ場などではあまり使用されませんが、一般のご家庭などでは冬期の保温や霜除け、夏期の遮光などに活用できるかと思います。ただ、使用に際しては芝が日照不足になったり、蒸れたりしないよう資材の選定に注意し、正しい使い方をしてください。

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●気象(気象)
大気の状態と大気現象の全てを言います。大気の状態を表す気象要素としては、気圧、気温、風、降水量、天気、雲などがあります。

●疑似サッチ(管理)
芝生を長く維持管理していますと、次第に芝生の下層部分と土壌表面との間に芝草の枯れた茎葉や刈屑などが堆積してきます。それらは時間と共に分解されて有機物の層を形成するようになりますが、それらの分解された堆積物のことを「サッチ」と呼びます。一方、サッチ層の上にはまだ分解されていない枯葉や刈屑なども残っています。そうしたサッチの上層にある未分解の残葉や刈屑からなる堆積物については「疑似サッチ」と呼び、サッチと区別しています。

●疑似葉腐病(病害)
リゾクトニア属の糸状菌により発生する病気の一つです。この病気には発生する芝種や時期が異なる3種類の病気が存在します。

(1)疑似葉腐病(春はげ症)
ノシバやコウライシバなどの日本芝に発生する最も一般的な病気で、春の萌芽期に直径30~50cmの円形もしくは不定形の褐色パッチとなって現れます。出現したパッチは芝の生育が旺盛となる5月中~下旬から消えはじめ、梅雨頃には自然に治りますが、パッチが出現してから殺菌剤を施用しても効果はないので、予防散布が重要になります。病原菌の感染は前年の休眠期前、すなわち晩秋ですので、殺菌剤による防除は10月下旬~11月上旬に行います。

(2)疑似葉腐病(象の足跡)
ノシバ、コウライシバ等の日本芝に発生する病気で、パッチの形状から「象の足跡」と呼ばれています。発生は通常、9月上旬から休眠期までですが、早い場合には5月頃から発生することがあります。パッチは褐色で直径30~50cmの円形もしくはリング状となります。枯れるのは地上部のみですので、放置しても裸地化することはありませんが、多発すると大変見苦しいので、発生初期に薬剤防除を行った方が良いでしょう。

(3)疑似葉腐病(イエローパッチ)
主にベントグラスに発生する病気ですが、ケンタッキーブルーグラスやライグラスなどにも発生します。冬期の1月~3月に発生するため「ウインターパッチ」とも呼ばれます。パッチは直径20~50cmの円形ないしはリング状で黄褐色~褐色を呈します。3月下旬以降、気温の上昇と共にパッチは消え、自然に治ります。
被害は地上部に限られ裸地化することはありません。ただ、多発すると大変見苦しいですし、発病後の薬剤散布ではパッチを消すことができませんので、美観を重視する場合には発生直前の12月中旬~1月上旬に予防的な薬剤防除をお勧めします。

●忌避剤(農薬)
有害もしくは不快となる昆虫や鳥、小動物などを忌避させる目的とした薬剤で、ゴルフ場ですと主にモグラなどの駆除に使用されています。お庭の芝生ではしばしば野良猫などの糞尿害が問題となりますが、これに対してもよく用いられています。また、私たちがよく夏場に使用する蚊を寄せ付けないための防虫スプレーやローションなども忌避剤の一種になります。

●きめ(管理)
「きめが粗い」などとよく使われる言葉の「きめ」です。「物の表面に現れたこまかいあや。手ざわりの感じ。」(広辞苑第5版)という意味です。特に専門用語という訳ではありませんが、芝草の分野ではよく使用される言葉です。漢字で書くと「木目」ということなるようですが、「もくめ」とも読めてしまいますし、誤解を避ける意味でもひらがな表記の方が良いようです。
英語では「texture」と言い、芝生の品質を評価する場合の重要な評価項目になっています。先細で葉幅の狭い芝が密に生えている状態であれば「きめ」の細かい芝生であり、高い評価となります。一方、密度が低く葉幅の広い芝であれば「きめ」の粗い芝生と言うことになり、芝生としての評価は低下してしまいます。特にゴルフ場のグリーンにおいては芝生の「きめ」がボールの転がり(グリーンの速さ)に大きく影響してきますので、状態や品質を評価する上での重要な要素となってきます。

●客土(造成)
在来の土壌を改良する目的で他の場所の性質の異なる土壌を搬入して混ぜること、もしくはその混ぜる土のことを言います。芝生を造成する場合、とりわけ寒地型西洋芝の芝生とする場合には床土の排水性や通気性が非常に重要になってきますので、粘土質土壌などの場合には必ず客土を行って改良します。材料としては透水性や通気性が高く、固結しにくいものが望ましいため、しばしば粒径の揃った砂(川砂、洗い砂など)が使用されます。また、優れた生育基盤を整えるためには客土を行う厚さ(深さ)も重要であり、一般家庭の芝生であっても15~20cmは客土を行うことが望ましいと言えます。

●キャプタン(農薬)
殺菌剤の一つである「オーソサイド水和剤」の成分名です。果樹や野菜、イネ、花類などの様々な病気に効果があり、農業や家庭園芸の場面で広く使用されています。芝草では葉腐病(ブラウンパッチ)と赤焼病に適用があります。このオーソサイド水和剤は住化タケダ園芸さんからも販売されていますので、ホームセンターなどで容易に入手可能です。

●厩肥(肥料)
家畜の糞尿や敷きわらなどを堆積発酵させた堆肥のことで「きゅうひ」と読みます。稲わらや落ち葉などの植物を堆積発酵させた「堆肥」と区別するために使用される用語ですが、今では家畜の糞尿単独で製造されることが少なく、わら類やおがくずなどと混合されることが一般化したため、堆厩肥(たいきゅうひ)もしくは堆肥と総称されるようになっています。
家畜の種類や敷きわらの量、堆積の方法などによって性質や肥料成分含有量が異なるため、使用に当たっては詳しく確認することが必要です。一般に、牛糞は繊維分が多く肥料効果は少なめで、土壌改良材的な利用に適しています。一方、鶏糞はほとんど繊維分を含まず化成肥料なみの肥料効果があり、堆肥としてより有機質肥料としての利用に適します。豚糞は両者の中間的な性質を持っています。また、堆肥、とりわけ厩肥は未熟なものを使用しますとガス障害や肥料焼けの原因となりますので、出来るだけ完熟した(十分に発酵した)良質のものを使用することが大切です。

●休眠(生理・生態)
植物の種子や芽、球根などが何らかの原因で成長や活動を一時的に停止することを言います。冬になると日本芝やバミューダグラスなどの暖地型芝草では地上部が白く枯れてきますが、これも休眠の一例です。寒地型の西洋芝と言えば別名、冬芝などと言われることもあり、冬でもすくすくと元気に成長するように思われがちですが、やはり生育適温を下回るほどの寒さになれば生育を停止して休眠してしまいます。ただ、日本芝などのように地上部全体が枯れてしまうことはなく、多少なりとも(部分的にでも)緑を保ちますし、適した生育環境になれば早期に成長や活動を再開できますので、日本芝などとはだいぶ異なる休眠状態だと言えるでしょう。

●ギョウギシバ(分類)
日本にも自生する暖地型の芝草で、学名はCynodon dactylonと言います。あまり聞き慣れない名前かも知れませんが、英語名はバミューダグラス(bermudagrass)だと言われればお分かりになる方も多いかと思います。日本でもノシバ、コウライシバと並びポピュラーな芝草なのですが、あいにくソッド(切り芝)としての生産はほとんどなく、もっぱらこれの改良種である「ティフトン」シリーズの生産が主流となっています。したがって、もし純粋なバミューダグラスの芝生を造成したい場合には、播種からの芝生造成が必要となります。

●切芝(育種・生産)
芝生造成用に一定の規格(大きさ、厚さ)で切り出された芝片のことで、ソッド(sod)とも呼ばれます。わが国ではノシバやコウライシバの切芝が主流ですが、当社のように寒地型西洋芝の切芝を生産、販売している業者も少ないながら存在します。
ノシバ、コウライシバの切芝の産地としては、西の鳥取県、東の茨城県が古くより二大産地となっていますが、最近では鹿児島県や宮崎県などでも暖地型の切芝が生産されているようです。一方、寒地型の切芝(この場合は通常、ソッドと呼ばれます。また、ロール状に丸めた状態で流通することが多いため、ロール芝などと呼ばれることもあります)は主に本州の高冷地や東北、北海道など、寒地型芝草に適した冷涼な地域で生産されています。
日本芝の切芝と寒地型西洋芝のそれとでは、大きさや厚さといった規格や販売単位、更には価格、流通ルートなども異なるため、購入する場合には注意が必要です。特に日本芝の場合には、古くは産地毎に独自の規格が存在していたこともあり、未だに混乱が見られることがあります。また、寒地型西洋芝は通常、目地を開けずに張りますので(べた張り)、表示面積=切芝の面積になっていますが、日本芝の切芝は目地を開けて張る施工方法(目地張り)が多く、従来は(今も?)目地分を含めたおおよその数値になっていることがあります。そのため、1平米分の切芝を買ったとしても、べた張りしたり、目地が狭かったりしまいますと1平米に満たないということもありますので、購入する際には表示されている面積の単位(平米か坪か)はもちろんのこと、それが目地の分を含めた面積なのか、実際の切芝の面積なのかも確認することをお勧めします。

●霧状散水(管理)
主に高温時の芝の冷却や芝に付着する朝露や霜の除去などを目的に、芝生表面に少量の水を霧状に撒くことを言います。芝生管理者の間では、英語のSyringingそのままにシリンジングと呼ぶことの方が多いようです。
夏場の霧状散水(シリンジング)は「打ち水の原理」を利用した暑熱対策の一つですが、タイミングや散水量などを間違えますと芝が蒸れて、かえって芝にダメージを与えることもあります。特に日本の夏は湿度が高いため安定した効果を得にくく、実施に際しては細心の注意が必要です。

●キレート鉄(肥料)
一つの金属イオン(または原子)を挟み込むように一つの分子が2ヵ所以上で結合して、環状の化合物を形成することがあります。この形が「蟹の爪」(ギリシャ語でキレート)で挟み込んだ形に見えるので、こうした結合を「キレート」と言います。キレート鉄とは鉄を有機酸やアミノ酸などの有機分子でキレート化したもののことです。
鉄は植物に必要な微量栄養素の一つですが、土壌中の鉄はリン酸と容易に結合して、植物が吸収、利用しにくい形になってしまう傾向があります。そのため、リン酸の多い土壌(火山灰土壌など)では植物が鉄欠乏になってしまうこともあります。その点、キレート鉄であれば土壌中のリン酸に固定されにくく、植物が容易に吸収、利用できるので、肥料として非常に有用というわけです。

●菌核(病害)
菌糸(次項参照)が固く密に集まって形成された小さな粒状のもので、耐久性があり、厳しい環境にも耐えられます。形は小球状、腎臓形、馬蹄形、角状などさまざまで、色は黒色、褐色のものが多いようです。大きさは通常1~20mmほどあり、肉眼で見ることも可能です。芝草の病気で菌核を形成するものとしては雪腐大粒菌核病、雪腐小粒菌核病などがあります。

●菌糸(病害)
カビやキノコ類といった糸状菌(しじょうきん)の栄養体を構成する基本構造のことで、通常、細胞が細長い列をつくり糸状になっています。菌糸は成長とともに分化し、種によって一定の形の菌核(前項で紹介)や子実体(しじつたい)などを形成します。
ちなみに、私たちが眼にするキノコは子実体であり、菌糸が集まった繁殖のための一構造にすぎません。実は、菌の本体は樹幹内や土壌中に広がった菌糸の方なのです。

●菌糸体(病害)
糸状菌の体はほぼ同じ構造を持った菌糸からなり、それらが枝分かれしながら成長し、広がっていきます。この分化した菌糸の全体、または集団のことを菌糸体と呼びます。つまり、菌糸体とは糸状菌の栄養体のことでもあります。

●菌類(病害)
カビ、キノコ、酵母類の総称で、粘菌類なども含めます。細菌や変形菌と区別するため真菌(しんきん)と呼ばれることもあります。外部の有機物から栄養を取る、いわゆる従属栄養生物であり、葉緑素を持たず、光合成は行いません。世界中の至る所に分布し、生態系においては分解者として物質循環に重要な役割を果たしています。動植物に寄生、共生するものも多く、芝草病害の大部分はこの菌類が病原体となっています。

●菌類病(病害)
菌類が原因となって起こる病気のことです。芝草の菌類病は数多く、例としては、ピシウム病や赤焼病、葉腐病、立枯病、フザリウム病、さび病(以上はカビによるもの)、フェアリーリング病(キノコによるもの)などがあります。

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●草丈(生理・生態)
草丈(くさたけ)とは草本植物(一般に草と呼ばれる植物のこと)の茎の地際から一番先端の葉を伸ばしたところまでの高さを言います。これと似た用語として草高(そうこう)がありますが、こちらは地際からその植物が自然に生育している状態での最上部までの高さを言います。通常、葉は先端がいくらか垂れた状態にありますので、草丈>草高という関係になります。

●苦土(肥料)
植物の必須栄養素の一つであるマグネシウムのことを肥料の分野では苦土(くど)と呼びます。舐めると苦いことに由来するそうです。
植物の必須要素としては窒素、リン酸、カリの三大要素(多量要素)が有名ですが、それに次ぐ大切な要素(中量要素、二次要素)と言われるのが、カルシウム、イオウ、そして苦土(マグネシウム)です。植物体内では葉緑素の構成成分であり、光合成で重要な役割を果たします。また、リン酸の吸収や体内移動を助ける働きもあります。
降水量の多いわが国の場合、酸性土壌や砂質土壌では苦土分が流亡しやすく、肥料で補給する必要があります。また、カリやカルシウムの過剰施用によっても苦土欠乏は起こるので注意が必要です。

●苦土石灰(肥料)
マグネシウムを含む石灰質肥料ですが、もっぱら土壌改良剤として酸性土壌の矯正を目的に利用されます。同じ石灰質肥料である生石灰や消石灰よりも酸性矯正力は劣りますが、緩やかに効くため扱いやすく、同時にマグネシウムも補給できるため大変便利です。石灰質肥料としては炭カル(炭酸カルシウム)と並んで使いやすい肥料と言えるでしょう。

●グラウンドキーパー(管理)
野球場やサッカー場、ラグビー場、ホッケー場などのグラウンドを維持管理する担当者のことです。狭義ではその管理責任者のことを指します。
野球場の場合には人工芝や土であったりしますので、キーパーに求められる知識や技術も異なりますが、サッカー場やラグビー場などについてはゴルフ場と同様、芝生部分の維持管理が中心になってきます。したがって、ゴルフ場のグリーンキーパー経験者がそのままグラウンドキーパーとして従事することも多いようです。ただ、グラウンドの芝生とゴルフ場の芝生とでは利用の形態が異なるため、求められる芝質も使用後のダメージも全く異なってきます。ゴルフ場の経験だけで直ぐに一人前のグラウンドキーパーになるのは難しく、やはりそれなりのノウハウと経験が必要になってきます。

●クリーピングベントグラス(分類・種類)
学名をAgrostis palustrisと言い、ユーラシア大陸原産の芝草です。わが国には明治時代に輸入され、北海道で牧草として栽培されました。和名はハイコヌカグサです。
クリーピング(Creeping)とは「匍匐(ほふく)性の」という意味で、その名の通り、長い匍匐茎を出し、地上を這って横方向に伸びる性質があります。低い刈込みにも耐え、緻密で柔らかく美しい芝生を形成します。その特性からゴルフ場のグリーンやローンボーリング場(日本ではあまり馴染みがありませんが)などに使用され、品種改良も盛んです。
この芝草の代表的な品種が当社でも生産している「ペンクロス」であり、1954年にアメリカのペンシルバニア農業試験場で育成されました。55年も前の古い品種ではあるのですが、今でも世界中で広く利用され、標準品種としての地位を維持しています。
なお、ペンクロスの名前の由来ですが、ペンはペンシルバニアのペンから、クロスは交雑、交配という意味のクロスに由来しています。

●グリーン(ゴルフ)
ゴルフコースを構成するエリアの一つで、正式にはパッティンググリーンと言います。パッティングのために特別に整備されたエリアで、その中に直径10.8cmのホールカップが一つ用意されています。
グリーンの芝生には低刈りに耐える芝草(クリーピングベントグラス、コウライシバ、バミューダグラスほか)が採用され、常に5mm以下の低い刈高で維持されています。特に近年はボールの転がりやスピードが重視されるため、より刈高が低くなる傾向にあり、トーナメント開催コースなどでは3mm台が標準になってきています。
グリーンの大きさや形状は様々ですが、わが国のゴルフ場で特徴的なこととして、一つのホールに二つのグリーンを持つ、いわゆる2グリーン(ツーグリーン)があります。本来は一つのホールには一つのグリーンしかないわけですが、コウライシバの1グリーン(ワングリーン)ですと芝が枯れる冬場に傷みやすいことや来場者の増加に対応できないなどの理由から、コウライグリーンを二つ造る2グリーン方式が誕生しました。
これはわが国独自の方式で、その後、夏用のコウライグリーンと冬用のベントグリーンを二つ造る方式に変わり、さらにはベントグラスの2グリーンも造られるようになりました。そして現在はゴルフ本来の姿である1グリーンへの要求が高まり、ベントグラス1グリーンのコースも非常に多くなっています。
こうした変遷の背景には、もちろんベント化へのプレーヤーからの強い要望もあるのですが、それ以外にもベントグラス新品種の耐暑性の向上や砂床土の普及、管理機械や資材の進歩等によって、わが国でもベントグリーンの通年利用が可能になったという事情があります。そして今では、不可能と考えられていた九州地区においても、ベントグラスのグリーンを楽しめるまでになったというわけです。

●グリーンカバー(管理)
冬期間の乾燥、低温障害、凍結、色落ち等の防止、霜除け、早春の緑化促進などを目的として芝生に掛けるカバーのことです。素材としては通気性を確保しつつも、良好な保温性と透光性(日中も使用する場合)、耐候性を備え、軽量かつ丈夫であることが求められます。

●グリーンキーパー(管理)
ゴルフ場のコース管理者、とりわけ管理責任者のことを言います。ゴルフ発祥のイギリスでは日本と同じくグリーンキーパーと呼びますが、ゴルフ先進国のアメリカではスーパーインテンデントと呼び、さらに大きな権限と責任、そして社会的な地位を持っています。
グリーンキーパーに必要とされる能力としては、芝草管理の高い技術から、ゴルフプレーへの深い知識、人材の育成・管理能力、予算管理能力など非常に多岐にわたります。また、非常に幅広い知識も必要とされ、芝草管理一つにしても、気象、土壌、肥料、農薬、植物生理、植物生態、育種、植物病理、応用昆虫、雑草、造園、土木、機械、等々、実に様々な分野が関連してきます。
かつては先輩の背中を見て育った職人気質のグリーンキーパーが多かったようですが、近年は農学系の大学を卒業した学究肌のグリーンキーパーも増えてきており、わが国のグリーンキーパーも多彩になってきました。キーパーの資格としては、平成2年より開始された「芝草管理技術者」資格認定制度(1級、2級、3級)があり、平成19年には財団法人日本ゴルフ協会(JGA)からも公認資格として認定されております。

●グリーンスピード(ゴルフ)
ゴルフ場のパッティンググリーンにおいてボールの転がる速さを示す指標で、スティンプメーターという専用の器具を使って測定します。基本的な測定方法はスティンプメーターに載せたボールをグリーン上に転がして、自然停止するまでの距離を測定するというものです。したがって、単位はmないしcm(アメリカではft)になります。わが国でも多くのゴルフ場で採用され、ほとんどのゴルフ場が今ではスタート前のプレーヤーに向けその日のグリーンスピードを掲示しているようです。
グリーンスピードのおおよその基準としては、一般アマチュア用とトーナメント用とで異なり、一般用の場合、2.55mで「速い」、1.95mで「普通」、1.35mで「遅い」となっています。ただし、この基準は1977年の作成と非常に古く、その後の管理技術の進歩と品種改良によってどこのゴルフ場でも当時よりグリーンスピードは速くなっています。むしろ、この時のトーナメント用とされている基準(3.15mが速い、2.55mが普通、1.95mが遅い)の方が今の一般アマチュア用に近いように思います。
なお、グリーンスピードに影響する管理要因としては、芝の刈高、芝刈機の刃の切れ味、芝の密度と立性、芝目の強さ、グリーン表面の硬さ、乾燥具合、目土と転圧などの有無などがあり、特に刈高は大きく影響してきます。したがって、グリーンを刈り込んだ直後の朝と芝が若干伸びた夕方ではグリーンスピードが異なりますし、芝の季節的な生育変化の影響も大きいと言えます。

●黒土(土壌)
黒くて腐植分の多い土のことで、通常は関東地方の台地上の多腐植質黒ボク土の表土部分を指します。軽くて軟らかく、保水性と保肥力もあり、団粒化していれば透水性や通気性にも優れます。ただ、リン酸を固定しやすいので、リン酸質肥料の肥効が現れにくいのが欠点です。

●黒ボク土(土壌)
一般に腐植質~多腐植質の黒色火山灰土を指します。上記の黒土もこれに含まれます。元々は俗称だったのですが、最近は学術用語として用いられています。
他の鉱質土壌との違いは、表土が腐植に富むこと、仮比重が小さく軽いため風で飛散しやすいこと、酸に溶けやすい鉄やアルミニウムが多いためリン酸固定力が大きいことなどです。
ちなみに、当社圃場の土壌もこれに該当し、土壌の分類区分としては「粗粒黒ボク土壌」に分類されます。色が黒いため付着すると芝が汚れてしまいますが、土壌としてはかなり良質なものと言えると思います。

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●ケイ酸(肥料)
ケイ素と酸素が結合した物質で、土壌中に多量に存在しています。一般植物の必須養分でありませんが、イネ科植物の体内には多く含まれており、イネ科植物にとっては重要な養分と考えられています。植物体内においては表皮細胞を丈夫にし、病虫害に侵されにくくする効果があるとされています。特に芝草の場合には踏圧を受けることが多いため、より重要な養分だと思われます。

●鶏糞(肥料)
文字通りニワトリの糞ですが、肥料としての鶏糞はそれを堆肥化させたもののことを指します。通常は鶏糞に藁やおが屑などを混ぜ、堆積発酵させたものになります。牛糞などに比べますと、窒素、リン酸、カリなどの肥料成分を多く含むため、元肥として利用されることが多いようです。ただし、同じ鶏糞でも生鶏糞を乾燥させただけの乾燥鶏糞と発酵させてある発酵鶏糞とがあり、使用に当たってはそれぞれ注意が必要です。特に、乾燥鶏糞は水分を含むと悪臭を放ちますし、土に混ぜてもしばらく(1ヶ月位)はガス障害などが発生するため作付けなどができません。発酵鶏糞よりも安値だとは思いますが、くれぐれも注意して使用して下さい。もし鶏糞を元肥として使用されるのであれば、使いやすい発酵鶏糞の方をお勧めいたします。ただし、発酵鶏糞にも品質のバラツキがありますので、十分に発酵の進んだ良質なものを選び、床土に混ぜてから1週間は寝かせておくことをお勧めいたします。

●茎葉(生理・生態)
茎と葉のことですが、草本植物(いわゆる草と呼ばれる植物)の場合、茎と葉を合わせて扱った方が便利なことがあり、それらを一括りに茎葉(けいよう)と呼んでいます。特に芝草の場合には葉と茎の区別が容易でなく、また、わざわざ分けて扱う必要もないため、よくこの言葉を使用します。後述する茎葉処理剤や茎葉密度などがその例です。

●茎葉処理(農薬)
除草剤に関する用語で、出芽後の雑草の茎葉に除草剤を散布し、有効成分の茎葉との接触ないしは茎葉からの吸収によって雑草に作用し、処理する方法を言います。これに対し、雑草が出芽する前の土壌に散布して雑草を抑える処理を土壌処理と言います。

●茎葉処理剤(農薬)
前述した茎葉処理を行う除草剤のことで、茎葉処理除草剤とも言います。代表的な茎葉処理剤にはMCPP(商品名:MCPP液剤など)、トリクロピル(商品名:ザイトロンアミン液剤など)、グリホサート(商品名:ラウンドアップマックスロードなど)があります。
寒地型西洋芝で使用できる茎葉処理剤は非常に少なく、また、適用のある製品にしても使いこなしが難しく、あまりお勧めできるものではありません。規定の使用量を守ったとしても芝の状態や使用時期などによっては薬害が発生することもありますし、薬剤毎に効果のある雑草の種類は限られています。やはり寒地型西洋芝の場合には、雑草の早期発見、早期手取り除草が最善の雑草対策だと思います。また、常日頃から雑草が生えにくい環境作り(芝生の密度を高く保つ、芝生の周囲の雑草を防除しておく、雑草が実を付ける前に必ず除草する、雑草種子の混入した土などを目土に使用しない、など)を心掛けることも非常に有効な雑草対策だと言えるでしょう。

●茎葉密度(生理・生態)
単位面積当たりの茎葉の数を茎葉密度と呼びます。通常、平方センチ当たりの本数で表します。茎葉密度が高いほど緻密できめの細かい芝生になります。ただ、あまり密度が高すぎますと芝が細く、軟弱となり、各種のストレスにも弱くなります。また、芝がマット状になりやすくなり、より頻繁な更新作業が必要になります。あくまでその芝生の管理条件や利用条件に合った適切な密度を維持することが大切です。
茎葉密度は芝の種類(草種、品種)だけでなく、管理条件や環境条件、季節などによっても大きく変動します。ゴルフ場のベントグリーンですと一般には10~20本/平方センチ位、最新の高密度品種で20~30本/平方センチ程になります。茎葉密度が高いほどボールの転がりがスムーズになり、速いグリーンに仕上げることができます。

●ケラ(虫害)
俗にオケラとも言い、黄土色~黒褐色をした直翅目(バッタ目)ケラ科の昆虫で、体長は3cm前後、穴を掘るのに適した大きな前肢を持っています。年1回の発生で、5~7月頃に卵を産み、早いものは秋までに成虫になり、遅いものは幼虫のまま越冬します。土壌水分の多い場所を好み、地表から15~25cmの深さの所に生息孔を掘り、その中で生活します。雑食性で、植物の根やミミズなどを食べ、農作物の根も食害するため害虫とされています。芝生地では地表近くの芝の若芽を食害するほか、潜入孔によって芝の根が浮き上がり、芝が枯れる原因にもなります。近年はゴルフ場のグリーンでの被害が多くなっています。
防除方法としては薬剤防除ということになりますが、昼間は地中に潜っているため効果的な防除は難しくなります。一応、活動が活発となる6~7月の、特に雨上がりの夕方に登録のある殺虫剤(オルトラン水和剤など)を散布すると良いとされています。また、先述のように土壌水分の多い場所を好みますので、土壌の排水を改善することも有効な防除方法だと思います。

●ケンタッキーブルーグラス(分類・種類)
イネ科ウシノケグサ亜科イチゴツナギ属の寒地型芝草で、和名をナガハグサ、学名をPoa pratensis L.と言います。ユーラシア原産の多年生植物で、牧草としても広く利用されています。芝生雑草の代表格であるスズメノカタビラ(別名:アニュアルブルーグラス)とは同じ属になります。
ケンタッキーの名から分かるとおり、アメリカのケンタッキー州に広く自生しており、このことからケンタッキー州は別名ブルーグラス・ステイト(ステイトとは州のこと)とも呼ばれています。まさにアメリカを代表する芝草と言っても過言ではありません。
生育は旺盛で、草丈は20~40cmになりますが、芝草用としてはより伸びが遅く、草丈の低い、矮性の品種が開発されています。地下茎を有し、踏み付けにも強く、緻密で美しい芝生を形成しますが、耐陰性や耐乾性はあまり高くありません。発芽とその後の初期生育が遅いため、種子による芝生造成はかなり難しいかと思います。
利用は寒冷地が中心となりますが、ゴルフ場のティーグラウンドやフェアウェイ、サッカーグラウンド、競技場のほか、公園やお庭の芝生としても使用されています。当社でもこれのソッドを生産販売しており、当社商品の中でも人気の高い主力商品となっております。

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●コアリング(管理)
用語紹介(1)の「穴あけ」の項で既にご紹介いたしましたが、土壌に穴を空ける方法の一つで、中空の棒(ハロータイン、中空タイン)を芝生に突き刺し、土壌を引き抜く作業のことを言います。空けた穴には新しい土壌(砂もしくは床土と同じ土壌)を擦り込みます(目土作業)。一度に入れ替えられる土壌の量や深さはわずかですが、造成後の土壌改良が困難な芝生地においては数少ない土壌改良手段の一つであり、長期にわたって良好な芝生を維持する上で大変重要な作業となっています。
最近はホームセンターなどで個人向けのコアリング器具(ローンパンチ等)を見かけるようになりました。それだけ、この作業の重要性が広く認められるようになったのだと思いますが、ただ、こうした器具での作業は相当な労力を必要としますので、あくまで小面積の芝生用だと思います。基本はやはり、床土の準備段階で固結し難い良質な土壌を用意することであり、コアリング器具は排水不良箇所が発生した場合などの部分的な改善に使用するというのが現実的な使用方法となるように思います。

●コイチャコガネ(虫害)
別名チャイロコガネとも言い、小型のコガネムシで日本全土に分布しています。クリやカキ、ナシ、ブドウといった果樹の重要害虫ですが、芝生に飛来して土中に産卵し、孵化した幼虫が芝の根を食害するため、芝草の害虫でもあります。
年1回の発生で、大部分は成虫のまま越冬します。芝草の被害は主に8月下旬~9月上旬に多く、幼虫に根を食べられてしまうため芝が黄変ないしは枯死してしまいます。防除法としては、まず、芝生の周辺にクリやナラ、ケヤキといったこの虫が好む植物を植えないことですが、発生してしまった場合には、成虫を対象として、土中に潜っている夕方や地表に現れる早朝に適用のある殺虫剤を散布します。

●耕耘(造成)
「耘」の字は当用漢字ではないので読みにくいかと思いますが、「うん」と読みます。「耕うん」と表記する方が適切なのでしょうが、意外とこの難しい漢字がそのまま使われることが多いようです。
耕耘とは簡単に言えば田畑を耕すことですが、難しく言えば、播種床の整備を目的として耕耘機などを使って人為的に土を耕し、土壌を膨軟にする作業ということになります。
耕耘は田畑の土作りの最初の一歩となる大変重要な作業ですが、これは芝生の床土作りにおいても同様です。できるだけ時間を掛けて丹念に耕耘しておきましょう。
なお、耕耘する際に注意していただきたいのは、降雨後など土壌水分の多い状態の時は避けるということです。水分を多く含んだ土を耕耘しますとかえって土壌の固まりを作ってしまい逆効果になります。くれぐれも土がほぐれる状態の時に耕耘を行うよう注意してください。

●高温障害(生理・生態)
芝草に限らず、植物にはそれぞれ生育に適した温度というものがあります。生育する環境がそうした生育適温を超えた場合、植物には様々な障害が現れてきます。これを高温障害と呼びます。
寒地型芝草はもともと寒冷地に生育する芝ですので、その生育適温は16~24℃とかなり低めになっています。したがって、30℃を超えるような日本の真夏には多かれ少なかれ高温障害が現れ、生育の低下や病害の発生などが起きてきます。これに不適切な管理や乾燥などが加わると状態は更に悪化して、芝が枯死(夏枯れ)してしまうこともあります。これが寒地型芝草の最大の難点であり、管理者にとってはいかにこの夏場の高温障害を抑え、夏を乗り切るかが腕の見せ所になってきます。寒地型芝草の品種改良も進み、その耐暑性も徐々に高まってはきていますが、同時に地球の温暖化も進んできているようですので、まだまだ寒地型芝草の管理者にとってこの高温障害は悩みの種となりそうです。

●孔隙(土壌)
土壌は土壌粒子の集まりですが、その粒子と粒子の間には隙間があり、それを孔隙(こうげき)と言います。土壌中の空気や水はこの孔隙の中に含まれており、したがって、土壌中の孔隙の量や大きさが土壌の通気性や透水性、さらには植物の根の張り方などにも深く関わってきます。

●交雑種(育種・生産)
種や品種、系統などの異なる個体間の交配(交雑)によって生じた新しい種(品種、系統)のことです。雑種とも言います。しばしば両親よりも優れた強健性を示すことがあり、これを雑種強勢と呼びます。

●コウシュンシバ(分類・種類)
イネ科シバ属に属する暖地型芝草で、学名をZoysia matrellaと言います。聞き慣れない芝の名前かも知れませんが、実は、一般に言うところの「コウライシバ」のことです。植物分類学上の正式な種名ではあるのですが、残念ながらほとんど一般には知られておりません。おそらく国内の流通、利用等の場面で「コウシュンシバ」と言っても全く通用しないと思われます。ですので、知識としてこの種名を覚えておくだけにした方が賢明かと思います。

●耕種的防除(管理)
栽培的防除とも言い、植物の品種選定や栽培方法や環境の改善、被害植物の適切な処理などによって病虫害や雑草を防除することを言います。これに対して、農薬などを使った防除のことを化学的防除と言います。
芝草の場合ですと、芝の生育を改善して病害への抵抗力を高めたり、害虫の餌植物を除去して害虫の飛来を防いだり、芝生の密度を高く保つことによって雑草の発生を防ぐ、などがこの耕種的防除に当たります。ほとんどが予防的な効果を期待したものになりますが、芝生の病害虫・雑草対策においてベースとなる非常に大切な防除方法だと思いますので、是非とも実践していただきたいと思います。

●更新(管理)
芝生面を大きく撹乱することなく、土壌の固結緩和や通気性・通水性の改良、サッチの除去等を行い、芝生の若返りや芝草の活性化を図ることを「更新」と呼んでいます。また、これを目的として行う管理作業のことを「更新作業」と言い、代表的なものとしては前回ご紹介した「コアリング」を始め、「スパイキング」や「スライシング」、「バーチカルカッティング」、サッチを除去する「サッチング」などがあります。更には、目土(目砂)散布や芝目を矯正する「グルーミング」なども広義の更新作業と言えるでしょう。

●降水量(気象)
大気中の水分が雨や雪、雹(ひょう)などの形で地上に降ってくる現象のことを降水と呼び、一定時間内に起こった降水の量を「降水量」と言います。したがって、降雨の量だけを計った「雨量」と降水量とは必ずしもイコールではありません。
降水量は雨量計に溜まった降水の深さ(mm)で表しますが、雪や雹の場合にはどうするのでしょうか?答えは簡単で、雨量計に入った雪や雹を解かして計測するのです。昔は室内に持ち込んで解かしたそうですが、現在の雨量計にはヒーターが入っていてすぐに解けるようになっているそうです。
ちなみに、1日の降水量(日降水量)の日本での最高記録は、奈良県上北山村で1982年8月に観測された844mm、ひと月の降水量(月降水量)の最高記録は、宮崎県えびの市で1993年7月に観測された2299mmとなっています。日本の年間降水量がおよそ1800mmと言われていますので、もの凄い降水量であったことが分かります。

●耕盤(土壌)
土壌環境の維持・改善にはコアリングやスパイキング等の更新作業が必要となりますが、常に同じ深さで更新作業を行っていますと、その深さの直下の土壌が次第に固まり、排水性や通気性の低い固い土層が形成される場合があります。これを「耕盤」または「耕盤層」と言います。英語ではCultivation Panと言うことから、そのままカルチベーション・パンと呼ぶこともあります。
大型の機械で更新作業を頻繁に行うゴルフ場のグリーンなどですと耕盤も形成されやすく、しばしば排水不良の原因として問題にもなりますが、一般家庭の芝生で耕盤が形成され問題となった事例はまだ聞いたことがありません。むしろ、一般家庭の芝生における排水不良の原因は床土の土質に問題があったり、床土の深さが不十分といった場合がほとんどだと思います。

●広葉雑草(雑草)
植物には発芽直後に1枚の葉を開くものと2枚の葉を広げるものがあり、前者を単子葉植物、後者を双子葉植物と言います。芝生に発生する雑草の内、後者の双子葉植物に属する雑草のことを葉幅が広いことから「広葉雑草」(こうようざっそう)と呼び、芝生業界人は更にこれを簡略化して「ひろは」などと呼んでいます。
ちなみに、どういう理由かは分かりませんが、単子葉植物に属する雑草を総称する呼び名はなく、イネ科に属する雑草は「イネ科雑草」と呼び、その他の科に属する雑草(例えばカヤツリグサ、ヒメクグ、スギナなど)はそのまま種名で呼んでいます。

●コウライシバ(分類・種類)
学名をZoysia matrellaと言い、分類学上の種名はコウシュンシバ、英語ではManila grassと言います。日本に自生する芝、すなわち日本芝の一種で、わが国ではノシバなどと共に古くから芝草として利用されてきました。そのため園芸的な分類も進んでおり、ヒロハコウライ(葉幅の広いコウライシバ)やヒメコウライ(葉幅が狭く小型のコウライシバ)などと呼ばれて流通しているものもあります。
暖地型芝草に属しますので、温暖な地域での利用に適します。海岸沿いに自生する芝なので、耐塩性が高いという特長があります。ノシバよりも小型で、より密な芝生を形成します。成長も緩やかなため刈込みなどの手間もあまりかからず、管理しやすい芝だと言えます。ただし、ノシバ同様に日本の気候では、通常、冬期になると休眠し、冬枯れしてしまいます。
芝生を造成する場合には播種ではなく、切芝(ソッド)を利用します。切芝はホームセンターなどでも容易に入手できます。ちなみに、生産地としては西日本では鳥取県が、東日本では茨城県の筑波地方が有名です。

●コガネムシ(虫害)
甲虫目(鞘翅目)コガネムシ科に属するコガネムシの仲間の総称です。日本中に分布し、成虫は植物の葉を、幼虫は根を食べて生活します。農作物に大きな被害を及ぼすものも多く、芝草においても重要害虫になっています。
芝生の被害としては幼虫による根の食害が主ですが、その幼虫をカラスが補食する際に芝生に穴を開けるといった二次的被害も発生します。また、成虫が芝生内に潜り込む際に芝の根を浮かしたり、ミミズの糞塚のように土壌を排出することからゴルフ場のグリーンなどで問題になることもあります。
芝草の害虫となるコガネムシとしては、マメコガネ、ウスチャコガネ、チビサクラコガネ、ヒラタアオコガネなどが代表的です。

●固結(土壌)
土壌が踏み固められることなどによって、固く締まることを言います。芝生の場合には人が歩いたり走ったりしますし、芝刈機などの重い管理機械も走行しますので、より固結しやすい環境にあると言えます。
固結した土壌は水や空気の通り道である孔隙(土粒子間の隙間)が少なくなり、透水性(排水性)や通気性が著しく低下してきます。そのまま放置しますと、芝草の生育にも悪影響を及ぼすようになり、最悪の場合、芝生が枯れてしまうこともあります。そのため、芝生の造成に当たってはできるだけ固結しにくい床土(砂質土壌など)を使用し、維持管理においては必要に応じてエアレーションなどの更新作業を行い、固結の軽減に努めることが大切です。

●枯死(生理・生態)
植物が枯れてその個体の生命が失われることを言います。したがって、部分的に茎葉が枯れただけでは枯死とは言いません。日本芝の冬枯れも地上部だけの枯れであり、地下部は生きておりますので、枯死ではありません。(冬期休眠と言います)
芝生の場合、病虫害や暑さ、乾燥、土壌不良、管理作業のミスなどによって芝草が枯れることがありますが、その後の処置については芝草が枯死したのか、部分的な枯れなのかの見極めが大切になります。もし枯死しているのであれば回復は望めませんので、枯死した芝を取り除き、張替えや播種を行います。もし部分的な枯れであれば回復を期待してそのまま養生することも可能です。その際の判断材料としては、地際に緑の部分(新芽)が残っているか、新鮮な白い根が多く残っているか、何日か経過観察して多少なりとも回復傾向が認められるか、などが参考になるかと思います。ただ、例え芝が枯死していなくてもダメージが大きい場合には回復に多くの時間が必要となることもありますので、「時間がかかりそうだな」と思ったら、迷わず張替え補修してしまうことをお勧めいたします。

●コケ(雑草)
俗に「コケ」と呼ばれるものには、コケ植物と地衣類が含まれます。地衣類は菌類と藻類からなる共生生物であり、植物ではありません。コケ植物は小さいながらもその名の通り立派な植物であり、世界中で2万種ほどが確認されています。多くは緑色ですが、赤色や褐色のものも存在します。コケ植物は更に蘚類(せんるい)、苔類(たいるい)、ツノゴケ類などに分類され、蘚類で有名なものとしては、ミズゴケやスギゴケ、ギンゴケなどがあり、苔類の代表格としてはゼニゴケがあります。
近年、コケは藻類と並んで芝生、とりわけゴルフ場のグリーンに多く発生し、大きな問題になっています。グリーンに発生するコケとしてはギンゴケが最も多いようですが、一旦発生しますと完全な除草が難しく、グリーンキーパーの悩みの種になっています。最近はコケ用除草剤なども発売されるようになりましたが、完全に防除できるまでには至っていないのが実情です。

●固相(土壌)
土壌は固体、液体、気体で構成されていますが、それら三つの部分を固相(こそう)、液相(えきそう)、気相(きそう)といい、それらをまとめて土壌三相と呼んでいます。固相は砂やシルト、粘土などの無機物と動植物の遺体などからできた有機物で構成され、液相は土壌水、気相は土壌空気で構成されています。土壌の性質を理解するときには三相それぞれの割合を知ることが大切で、それを三相分布と呼び、%で表します。
一般に、砂質土壌では固相の割合は小さく、粘土質土壌では固相の割合が大きくなります。西洋芝向けの土壌としては、排水性や通気性の良さが重視されますので、固相の割合が小さく、液相と気相の割合が大きな土壌が理想と言えます。

●根系(生理・生態)
植物の根の部分全体を総称して根系と言います。根系には様々な形がありますが、大きく分けますと、主根と側根とがはっきりとわかれるタイプ(多くの双子葉植物がこれに該当します)、ひげ状の根(ひげ根)をもつタイプ(多くの単子葉植物がこのタイプです)とに分けられます。芝草の場合には全てひげ根タイプの根系になります。
根系の大きさは植物の生育状態を知る良い目安となり、芝草の生育診断の場合にも大変役立ちます。養分不足であったり、土壌が過湿であったり、暑さが厳しかったりといった理由で芝の生育が悪くなりますと、根は浅くなり、根系は小さくなります。また、芝の刈り高との関係も深く、刈り高が低くなればなるほど根も浅くなる傾向があります。寒地型西洋芝を上手く夏越しさせるためには、夏までにいかに根を深く張らせるか、そして夏の間に根上がりをどれだけ抑えられるかが重要になってきます。更なる管理技術の向上を目指される方は、是非とも、地上部の状態だけでなく、根の状態についても定期的に観察されることをお勧めいたします。

●根茎(生理・生態)
地下茎の一種で、根のように地中または地表近くを這うものを言います。そのため根と間違われやすいのですが、内部構造は茎と同じで、節からは根や芽を出します。根茎をもつ代表的な植物としてハスやタケなどがあります。寒地型西洋芝の代表格であるケンタッキーブルーグラスも根茎をもっており、これが芝生の隙間を埋めるのに役立っています。ただ、ケンタッキーブルーグラスの根茎はノシバやクリーピングベントグラスの匍匐茎ほどの旺盛な伸長はしないので、過度な期待は抱かない方が良いでしょう。

●混合剤(農薬)
2種類以上の有効成分を含む薬剤を混合剤と言います。一方、有効成分が1種類だけの場合には単剤(たんざい)と呼びます。
通常、2種類以上の病気や害虫、雑草などを同時に防除する目的で、それぞれに有効な成分を混合しますが、それ以外にも協力作用を持つ成分の組み合わせや、一方の成分が他の成分の薬害を抑えるような組み合わせもあります。

●混合土壌(土壌)
土または砂に土壌改良剤(材)などを混ぜ合わせた土壌のことです。ゴルフ場のグリーンやサッカー場などの床土には通常、砂にピートモスなどの有機質系改良材やゼオライトなどの無機質系改良材を混ぜた混合土壌が使用されます。これらの混合土壌は、基本的に既存の土壌よりも排水性や通気性が高まり、固結し難い性質を持っています。当社でも寒地型西洋芝向けの床土として、既存の土のままでなく、これに砂や土壌改良剤を混ぜた混合土壌をお勧めしております。

●混播(造成)
2種類以上の異なる種子を一緒に播くことを混播(こんぱ、こんぱん)と言います。芝生の場合ですと、寒地型西洋芝を2種類または3種類混ぜて播種する(混播する)方法が最もポピュラーな例になります。当社の商品の一つである「ジョイターフ」もケンタッキーブルーグラスとトールフェスクを混播した芝生ですし、これにペレニアルライグラスを加えた3種類の混播は俗に「三種混合」と呼ばれ、しばしば寒地型西洋芝の芝生造成に用いられます。
本来、混播はそれぞれ異なる性質の草種を混ぜることによって各々の欠点を補い合い、より高い品質を実現する目的で行われるものなのですが、かつて、わが国で寒地型西洋芝の芝生を造成する際によく用いられた三種混合は「芝生地の環境条件に合った何れかの芝種が残れば大きな失敗にならない」といういささか後ろ向きとも言える理由で採用されたものが少なくありませんでした。しかしながら、3種の内の1種が残ったとしても、芝生として十分な品質にまで仕上がることはなく、その後に追播が必要になるなど、決して好ましい結果にはならないことが多いようです。やはり、混播を成功させるコツは、事前に芝種(品種)それぞれの性質(長所と短所)をよく理解し、用途や気象条件に合った最適な組み合わせを探ることだと言えるでしょう。

●根毛(生理・生態)
根を構成する器官の一つで、根の先端付近に形成される毛状の小さな突起のことです。根と土壌との接触面を増大させ、根を地中につなぎ止める役割を果たしています。一般には、水や養分の吸収にも重要な役割を果たしていると言われますが、詳しいところはまだ解明されていないようです。

●根粒菌(土壌)
マメ科植物の根に侵入して、根粒という瘤を形成する細菌のことです。マメ科植物と根粒菌との間には、根粒菌が土壌空気中の窒素を取り込んで植物に供給し、植物からは光合成産物を供給してもらうという共生関係が成り立っています。
昔、水を張る前の水田でレンゲソウ(マメ科の植物です)を栽培し、緑肥としてすき込むことが行われていました。これはレンゲソウの根粒菌に窒素固定を行わせ、それを基肥として利用することが目的だったのですが、なぜか最近はあまり見かけなくなってしまいました。春、水田のあちこちが一面のレンゲソウ畑となって淡い紅紫色に染まる光景は非常に美しく、それは見事な田園風景でした。農家にもそれなりの事情があるのでしょうが、あの光景を見て育った者としては寂しい限りで、再びあのレンゲ畑が復活することを期待したいものです。 ●細菌(病害/土壌)
原核生物(げんかくせいぶつ、構造的に区別できる核を持たない細胞から成る生物)の一群で、「バクテリア」とも呼ばれます。直径0.5~1μmほどの非常に小さな単細胞生物です。寄生性のあるものの中には動植物に対する病原性を持つものがあり、芝草でもいくつかの細菌性の病害が知られています。最近、ベントグラスでの発生事例が見られるようになった「かさ枯病」という病気もその一つです。
細菌は酸素に対する反応によって、好気性細菌(こうきせいさいきん、酸素がないと生育できない細菌)、偏性嫌気性細菌(へんせいけんきせいさいきん、酸素があると生育できない細菌)、通性嫌気性細菌(つうせいけんきせいさいきん、酸素があってもなくても生育できる細菌)に分けられます。また、栄養素として有機物を必要とするかどうかで、従属栄養細菌(有機物を必要とする細菌)と独立栄養細菌(無機物だけで生育できる細菌)とに分けられます。
細菌は土壌に最も多く存在する微生物であり、土壌中の物質循環に深く関係しています。土壌中の肥料や有機物が分解され、アンモニア態窒素や硝酸態窒素となって、芝草が養分として吸収できるのも細菌等の働きによるものです。

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●剤型(農薬)
農薬を製品化する場合、原体(有効成分)の物理化学性や対象となる生物の生態、使用方法などに適した形に加工して製剤されます。そうした農薬の形態を剤型(剤形)と言います。代表的なものとしては、粒剤、粉粒剤、水和剤、顆粒水和剤、乳剤、液剤、フロアブルなどがあります。
なお、これら剤型の違いによって散布方法や希釈方法などが異なりますので、取扱説明書などをよく読んで正しい方法で使用してください。もし間違った方法で使用しますと効果が低下するだけでなく、場合によっては薬害が発生しますのでくれぐれもご注意ください。

●砕砂(さいさ)(土壌)
天然の岩石を破砕機・粉砕機等で人工的に小さく砕き、砂状にしたもので、2.0~2.5mmのふるいを通過し、75μmにとどまる部分を集めたものです。主に建築や土木の分野で使用されます。天然の砂が全体的に丸みを帯びた形状であるのに対し、砕砂は角張った形状をしているため固まりやすく、芝生用としてはあまり適しません。

●最少養分律(肥料)
「植物の生育量は、その植物に供給される各種養分の内、その量が最少である養分によって支配される」とされており、これをリービッヒの最少養分律と言います。このことから、芝生管理においても芝が必要とする養分が一つでも欠乏すると、それによって芝の生育が制限される、ことが分かります。つまり、肥料はその施用する量だけでなく、バランスも非常に大切だと言うことです。
窒素、リン酸、カリといった多量要素については、通常の肥培管理で欠乏するという心配はあまりありませんが、それら以外の中量要素(カルシウム、イオウ、マグネシウム)や微量要素(鉄、マンガン、モリブデン、亜鉛、銅、ホウ素、塩素)については注意が必要です。特に砂を主体とした土壌ですと肥料の偏りが起こりやすいので、多量要素だけでなく、他の養分についても意識的に施用する必要があるでしょう。

●最適温度(生理・生態)
芝草に限らず植物にはその植物の生育が最も盛んとなる温度範囲があり、その温度範囲を最適温度(生育最適温度)と言います。最適温度よりも高温もしくは低温になると生育が徐々に低下し、更に著しい高温や低温になると生育が停止したり、枯死したりします。
ベントグラスやケンタッキーブルーグラスといった寒地型芝草の場合の最適温度(気温)は16~24℃、ノシバやコウライシバ、バミューダグラスなどの暖地型芝草の最適温度は27~35℃と言われています。更に詳しく見ると地上部(茎葉)と根の最適温度にも違いがあり、地上部のそれは上記の通りですが、根の最適温度(地温)については寒地型芝草が10~18℃、暖地型芝草が24~29℃とされています。

●栽培的防除(管理)
第15回で取り上げた「耕種的防除」と同じ意味の用語です。病害、虫害、雑草害などを薬剤を用いずに環境条件、特に栽培条件を適正化することで防除することを言います。芝生管理においては、刈り込みや施肥、水やり、更新作業などを適切に行うことで芝の健全な生育を図り、病虫害や雑草の発生を抑えることが栽培的防除だと言えます。したがって、栽培的防除の場合には、病気や害虫、雑草の発生をいかに予防するかが重要になってきます。

●栽培品種(育種・分類)
農業などでの利用を目的に選抜や交配を繰り返して、ある有用な形質を持つ個体群が作られます。その有用な形質が固定され、生殖または栄養繁殖によって次世代に伝えられることが確認されますと、新しい品種として認められます。これを栽培品種と呼びます。園芸の分野では主に園芸品種という用語を使用しますが、これと同じ意味です。
芝草もアメリカを中心に盛んに品種改良が行われており、これまで数多くの品種が作られてきました。クリーピングベントグラスの品種としては「ペンクロス」が最も有名ですが、これは半世紀以上も前の1955年に作られた非常に古い品種です。最近では当社が今年販売を開始した「シャーク」をはじめ、「007(ダブルオーセブン)」、「Tyee(タイイー)」、「962(きゅうろくに)」、「T-1」、「LS-44」、国産品種である「CY-2」などが注目を集めています。

●在来種(育種・分類)
外国から種子などを輸入され、国内に導入された植物、いわゆる外来種に対し、もともと国内に自生または栽培されていた植物を在来種と呼びます。芝草の分類の一つである西洋芝、日本芝という分け方はまさにこの外来種、在来種に準じていると言えます。ただ一つ、ギョウギシバという芝(英名ではバミューダグラス)は日本にも自生する在来種なのですが、どういう訳か日本芝としては扱われず、暖地型の西洋芝として扱われます。もしかしたらこれは、古来、ギョウギシバは日本で芝生として利用されなかったという歴史が関係しているのかも知れません。

●砂質土壌(土壌)
文字通り砂を多く含む砂質の土壌のことです。これに対し、粘土を多く含む土壌のことを粘土質土壌と呼びます。
土壌を構成する無機物の粒子はその大きさ(粒径)から粘土、シルト、細砂、粗砂に分けられます。その区分の仕方は国によって違いがありますが、わが国でも採用している国際土壌学会法では、粘土が0.002mm未満、シルトが0.002~0.02mm、細砂が0.02~0.2mm、粗砂が0.2~2mmとなっています。
土壌の性質を表す指標に「土性」というものがありますが、これは上記の粒径別組成を百分率で求め、それぞれの組み合わせによって重埴土から砂土までの14段階で定義するものです。この土性を知ることは土壌の大まかな排水性や通気性、保水性、保肥力を知ることでもあり、植物を栽培する上では非常に大切なことです。しかし、実用上そこまで厳密な区別は必要ないので、粘土が多めの土壌であれば粘土質土壌、砂(細砂や粗砂)が多めであれば砂質土壌という大雑把な区別がよく用いられます。

<つづく>








那須ナーセリーの社是「いきいき、わくわく」


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