このページは当社の西洋芝ソッドをお買い上げいただいた482倶楽部会員各位へのサポートを目的として作成したものです。したがって、本ページのURLの公開はご遠慮いただきますようお願い申し上げます。




秋期の西洋芝管理について

<お断り>
以下でご紹介する管理方法等は、当社の位置する関東エリアの一般的な(理想的な)条件下で生育する西洋芝を想定したものです。お客様方の気象条件(気温、雨量、日照時間など)や立地条件(日陰の有無、風通しの良否など)、土壌条件(保肥力、排水の良否など)、メンテナンス方法等によっては適切でない場合もございますので、予めご了承の上でご一読いただきますようお願い申し上げます。


--------------------------------------------


 暑かった夏が過ぎ、秋らしい陽気になってくると西洋芝も夏バテから徐々に回復し始め、次第に生き生きとしてまいります。さて、皆様の芝生は今どのような状態でしょうか?
 お客様の中には「今年は(も)なんとか全滅せずに夏を越せた!」と満足されている方もいらっしゃることでしょう。しかしその一方で、「夏のダメージでほとんど枯れてしまった…。」と悔しい思いをされている方も決して少なくはないように思います。そのようなお客様には誠にお気の毒としか言いようがありませんが、もしこれに懲りることなく奮起し、来年、再び夏越しに挑戦されるご覚悟であれば、是非とも以下の内容をお読みいただき、この秋にじっくりと手直しをしていただきたいと思います。来夏まではまだまだたっぷりと時間はございます。是非とも今年の反省をもとに更なる技術の向上を図り、来年こそは夏越しに成功できるよう頑張ってみて下さい。
 秋は新規の張芝や傷んだ芝の張替え(補修)の好機であると同時に、夏のダメージ回復を図る大切な時期です。皆様の芝生も程度の違いはあるにせよ、それぞれにダメージを受けているはずだと思います。是非とも、西洋芝が再び元気を取り戻すこの秋にきちんとした手入れを行い、再びあの美しい芝生を蘇らせてあげて下さい。以下に秋の西洋芝管理についての要点をご説明しておきますので、是非ともご一読いただき、これからの芝生管理にお役立ていただきますようお願い申し上げます。
 なお、ある程度のダメージならば芝の旺盛な生育と共に徐々に回復していきますが、どの程度のダメージまでなら回復するのか、そして今秋中にどの程度まで回復するのかについては芝の体力との兼ね合いもあり、事前に判断しにくいのが実情です。よって、張り替えるべきか回復を待つべきかについてはあくまで各自のご判断にお任せするしかなのですが、もし経済的に許されるなら、傷んだ箇所は全て張り替えてしまった方が確実だと思われます。ソッドというのは芝生を造成する場合だけでなく、補修する場合にも大変便利なものです。もしダメージが深刻な場合や傷んだ箇所の面積が大きい場合には新しいソッドによる張り替えをお勧めしたいと思います。


■■■ 傷んだ部分はどうすればよいのか? ■■■



●傷んだ部分が小面積の場合
 傷んだ部分が小面積(スポット状)で散在している状態でしたら、慌てて張り替える必要はないでしょう。刈込みや施肥、更新作業などの秋期の管理を適切に行っていけば、残った芝の芽数が増してきますし、また、周りの芝からも新しい分げつや匍匐茎(地下茎)が侵入してきますので、傷んだ箇所は次第に目立たなくなるはずです。適切な管理を心掛けつつ、芝の自然回復を待ってみてください。
 ただ、もし傷んだ箇所が完全に枯死しているようでしたら、その部分の芝だけ取り除いておくことをお勧めします。完全に枯死した芝ですと再生は期待できませんし、分解されるにも時間がかかります。そのまま放置しておきますと周りの芝からの新しい分げつや匍匐茎(地下茎)が入りにくくなりますので、包丁や鎌のようなものを使って取り除いておきましょう。

●傷んだ部分が大面積の場合
 大面積であっても傷みの程度によっては回復する可能性があります。もし傷みが軽微で地下部や成長点が生きていれば(枯れた地上部を取り除いた時に新しい芽が出ているかを確認します)、秋期の管理をしながら回復具合を見てみましょう。新しい芽に勢いがあれば遅くとも来春中(今秋中は難しいかも知れませんが…)には目立たなくなると思います。
 一方、残念ながら枯れた部分の回復が見込めない、もしくは早期に芝生を復旧させたい場合はソッドによる張り替えが最適です。張り替える場合は、枯れた部分の芝を包丁や鎌などで切り取り、根も出来るだけ取り除きます。根ごと掘り取ると相当量の土も一緒に上がってきてしまうと思いますが、それらはもったいないので丁寧に振り落とし、埋め戻して再利用しましょう。もしそれでも土量が足りない場合は、同じ仕様の床土を用意して補充します。
 また、張り替えは床土改良のまたとない好機でもあります。もし枯れた原因が床土の不良にあると思われる場合は、ソッドを張る前に床土を入れ替えるなり、耕耘して土壌改良材を入れるなりして納得の行くまで改良しておきましょう。これを怠ったのでは、せっかくの失敗を来年の成功へとつなげられません。今年、偶然にその箇所が傷んだわけではありませんので、来年も同じ結果になる可能性が高いと思います。
 張り替えの手順は特に難しいことはありません。枯れ芝を掘り取り、床土を整えた後は表面を平らに均し、用意したソッドを補修箇所の形状に合わせて張ってゆきます。ソッドは包丁などで容易に整形できますが、張った後の養生を考えますとあまり小さく切り刻まない方が良いでしょう。あくまでソッドは長辺方向の長さを調節する程度に留め、できるだけ芝生の方をソッドの形状に合わせるようにします。張った後は通常の張り芝と同じ要領で転圧し、目土を入れ、たっぷりと散水して完了です。
 その後の養生についても既に各位が経験されている通りで、何も特殊なことはございません。ただ、ソッドを小さく切った分、芝が動きやすくなっておりますし、一層乾燥しやすくもなっていますので、潅水はこまめに、刈込みの際には芝が動かないようご注意ください。

●ほぼ全面が枯れた場合
 不幸にも芝がほぼ全滅の状態になってしまった場合は、芝生の全面張り替えをお勧めいたします。
 張り替える場合、枯れた芝生部分をすべて剥がし、床土内の根も全て取り除きます。その後、床土を耕耘し、十分に整地した後に張り芝します。その後の養生などについては造成時と同じです。もし手順等に不安があれば当社HP内の「張り芝手順のご紹介」をご覧ください。
 なお、芝生がほぼ全滅したということは、それなりの原因があったはずです。この原因を解決することなく張り芝をしたのでは、来年もまた同じ結果になると予想されます。管理上の失敗(不適切な刈込みや散水の過不足、肥料の過不足、病害虫防除の失敗など)が原因だった場合ならばよいのですが、もし排水不良や環境条件などに原因がある場合は、張り替えの前にしっかりと改善対策を実施しておいてください。また、原因が害虫による被害だった場合は、張り替え前に十分な害虫駆除をお願いします。これが不十分ですと、来春、越冬した害虫によって再び被害を被ることになりますのでご注意ください。


■■■ 秋期における西洋芝管理のポイント ■■■



  以下に、夏のダメージから回復させるためのポイントも含めながら、秋期における西洋芝管理について簡単にご説明いたします。

1.刈込み
 夏の高温で息も絶え絶えだった芝も、秋にはすっかり元気を取り戻し、再び生き生きと茎葉を伸ばし始めます。暑さで弱っていた芝が再び元気に伸び始めた姿を見ますと、春の間は面倒に感じていた刈込み作業も妙にうれしく感じられるものです。夏のダメージで薄くなっていた芝も、これから刈込みを繰り返すことによって次第に芽数を増し、再び密な美しい芝生に戻ってゆきます。春のような美しい芝生に戻すためにも、どうか面倒がらずにこまめに刈込んであげてください。適切な刈込みであれば、刈り込むほどに芝生は美しくなるものです。
 秋の刈込みで注意していただきたいのは、まず刈込みの高さ(刈高)です。何をいまさら、と思われるかも知れませんが、夏越しのために刈高を上げていたという方には是非とも注意していただきたいのです。
 先の夏期の管理についてのアドバイスの中で、夏越しの成功率を高めるためは刈高を上げましょう、とご案内いたしました。実際、そのように実行なさった方も多くいらっしゃっることと思います。そのような方は、これから再び夏前の刈高に戻してゆくわけですが、この時にくれぐれも一気に刈高を下げることのないようお願いいたします。芝が元気になったからといっても刈込みの基本は変わりません。現在の草丈(注:刈った時の高さではなく、現在の芝の高さです)の2/3(できれば3/4)より低い刈高には設定しない、それが刈高設定の鉄則です。養生期間の刈込みと同様、あくまで少しずつ刈高を下げてゆくようお願いします。1日も早く夏前の美しい芝生に戻したいお気持ちはわかりますが、どうか焦らず、ゆっくりと時間をかけて下げていってください。
 なお、最終的にはHPでご案内している芝種ごとの推奨刈高まで下げられますが、決して無理をなさらないようお願いいたします。高すぎて枯れることはありませんが、低すぎては枯れてしまいます。あくまで芝生の状態に合わせて、各自、適切な刈高をご判断ください。

2.殺菌剤および殺虫剤の散布
 10月になり気温が低くなっても病害虫が発生する可能性はあります。むしろ、西洋芝の生育の良い初夏と秋に大発生する病害虫の方が多いくらいです。できれば秋の内に一度は予防も含めて殺菌剤、殺虫剤を散布しておくべきでしょう。
 対象となる病害は葉腐病(ブラウンパッチ)、ダラースポット病、ピシウム病など、害虫はコガネムシ類、スジキリヨトウ、シバツトガなどです。害虫については、来年の被害を抑えるためにも是非とも駆除を徹底させ、幼虫を越冬させないようにしてください。
 越冬幼虫は気温の低下とともに土中深くに潜ってしまい、殺虫剤も届かなくなってしまいます。秋の害虫防除のコツは、幼虫が大きくなる前に、そして表層付近に生息している内(気温の高い内)に殺虫剤を散布することです。

3.施肥
 ダメージから回復させるためには芝に頑張って光合成をしてもらう必要があります。それには光や水、二酸化炭素だけでなく養分も必要です。また、この時期は生育が好転し、刈込みにより失われる茎葉(刈屑)の量も増えるため、夏よりも施肥量は多めにします。
 秋期は最低でも月に1回は肥料散布を行ってください。月間の散布量の目安は窒素成分で平米当たり3g(10月、11月)程度でしょうか。もちろん、芝生の状態によって加減は必要ですし、速効性の肥料を使う場合は分施する必要があります。また、この時期は夏場に衰退した根を伸ばしてあげるためにもカリとリン酸を多めにあげると良いでしょう。
 なお、毎度のことですが、肥料を散布する場合はくれぐれも肥料焼け(濃度障害)にご注意ください。

4.エアレーション(穴あけ)
 秋の成長が旺盛な時期は更新作業の適期です。特に芝生に穴を開けるエアレーションは、床土の通気性や排水性などを改善するとともに、古くなった根や茎葉、枯れた葉を取り除き、新たな分げつや発根を促進させる効果があります。そのため芝をダメージから回復させるのにも大変有効な作業です。傷んで疎らになった部分には集中的に行うと良いでしょう。
 更新作業の中でも代表的なのがエアレーションと目土散布です。エアレーションは専用の道具を使用して芝生全体に穴を開けます。道具はホームセンターなどで「ローンスパイク」、「ローンパンチ」などの商品名で販売されています。当方で入手したものは一度の作業で直径1cm程度の穴が4つ開けられるタイプでしたので、このタイプならば5cmピッチ位で開けたいところです。
 エアレーション用の機具には、スパイクで穴をあけるだけのものと中空の爪で芝を抜き取るタイプのものとがあります。エアレーションの効果としてはコア(抜き取った筒状の芝のこと)を抜き取った方が良いのですが、穴を開けるだけのものに比べ作業性が落ちるという欠点があります。どちらのタイプを使用するかはご自身の判断ですが、比較的新しい芝生(何年も経過していない芝生)であればスパイクによる穴あけだけでも十分でしょう。
 なお、エアレーションを行った後は芝生の表面が荒れてしまいますので、穴を埋める程度の目土を行い、平らに仕上げる必要があります。これについては次項の目土散布でご説明したいと思います。

5.目土入れ
 健全で美しい芝生を維持するには目土入れも欠くことのできない大切な作業です。
 目土には床土と同じものを使用するのが基本ですが、西洋芝の場合、床土が土であってもできるだけ川砂か洗い砂を使用してください。そうすることで、徐々にではありますが床土の改良にもなり、排水性や通気性も高まります。特に今夏、排水の悪さを実感された方には強くお勧めします。
 また、エアレーション後の目土入れは床土改良の絶好のチャンスでもあります。今夏、排水性は高いものの保水性や保肥力が足りないことで散水や施肥でご苦労された方(床土が砂のみの方など)には砂に土壌改良材(当社HPの園芸店で購入できる資材紹介ページに簡単な紹介がございます)を混ぜたものを目土として使用されることをお勧めします。エアレーションで開けた穴に土壌改良材入りの目土を施せば多少なりとも床土の改良につながります。これを春、秋と何度か繰り返すことで徐々に効果も現れはじめ、西洋芝の管理が一段と楽になってくるはずです。
 目土の散布量は芝生の葉が隠れない程度の量が目安です。芝生の凹凸が気になるからといって厚い目土をしたのでは、芝が生き埋め状態になってしまいます。不用意な厚目土は芝を傷めることになりますので十分にご注意ください。
 目土散布後は箒やレーキなどで平らにすり込み、最後に仕上げの散水を行います。この散水は乾燥防止のためだけでなく、高温になりがちな目土を冷やし、浮いた目土を芝の間にしっかりと落ち着かせるためでもありますので、弱い水圧で丹念に行うと良いでしょう。

 以上、秋期のメンテナンスのポイントとして5項目ほど挙げてみました。もちろん、上記以外の通常の管理作業も大切で、芝生の種類や状態に応じて適宜、適切に実施するようお願いします。もし、ご自身の管理方法に不安のある方は、今一度、当社のHPや芝生管理の手引書、インターネットの情報等をご覧になり、秋期の管理方法についてご確認ください。
 なお、上記の注意点を守り、適切な管理を行ってもダメージからの回復が遅い、もしくは一向に回復しないという場合や、短期間で高品質の芝生にしたいという場合は、傷んだ部分だけでも張り替えるべきかと思います。関東以南であれば11月上旬頃までは安心して張り替えられますので、どうか張り替え補修についても前向きにご検討下さい。




当サイト内に記載されている写真、図版、文章等について 許可なく転用・転載することは固くお断りいたします。
Copyright © 2000-2020 Nasu Nursery,Inc. All rights reserved.