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夏期の西洋芝管理について

<お断り>
以下でご紹介する管理方法等は、当社の位置する関東エリアの一般的な(理想的な)条件下で生育する西洋芝を想定したものです。お客様方の気象条件(気温、雨量、日照時間など)や立地条件(日陰の有無、風通しの良否など)、土壌条件(保肥力、排水の良否など)、メンテナンス方法等によっては適切でない場合もございますので、予めご了承の上でご一読いただきますようお願い申し上げます。


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西洋芝ユーザーにとっては梅雨期以上に大変なのが、梅雨明け後の夏場の管理です。これからの夏越しこそが西洋芝管理における最大の難関であり、管理者にとって腕の良し悪しが試される試練の時期になります。これからは皆様のちょっとした油断や作業ミス、対応の遅れが、西洋芝にとっての命取りにもなりかねませんので、くれぐれも慎重かつ適切な判断と迅速な対応をお願いいたします。以下に夏場における管理上の注意点をご紹介しておきますので、必ず最後までお読みいただき、これからの西洋芝管理に是非ともお役立ていただきますようお願い申し上げます。


■■■ 夏期における西洋芝管理の注意点 ■■■

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その1.もう一度、刈込みについて確認しましょう
その2.病気の発生に注意しましょう
その3.害虫の発生にも注意しましょう
その4.夏は窒素を控えめに、肥料は液肥を使いましょう
その5.夏の管理では散水の仕方にも注意しましょう
その6.夏場にやってはいけないこと・・・
その7.夏枯れさせないことだけを考えましょう
裏技?のご紹介 芝生の温度を下げるための最終手段
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その1.もう一度、刈込みについて確認しましょう

 芝生の種類によって最適な刈込みの高さは異なります。芝の種類と現在の刈り高を再度確認して下さい。

【適正な刈り高】※以下はあくまで芝生としての美観や機能性等から考えた場合の“適正”です。芝の夏越しを優先するならば、ビバターフやジョイターフでは40~50mmがむしろ“適正”といえます。

・ベントグラス(グリーンの状態で管理している場合) ・・・・・・5mm前後
・ベントグラス(お庭の芝生として管理している場合) ・・・・・・10~15mm
・ビバターフ(ケンタッキーブルーグラス) ・・・・・・・・・・・25~30mm
・ジョイターフ(トールフェスク&ケンタッキーブルーグラス) ・・30~35mm

 この時期の刈込みのポイントは刈り高を適正範囲の中でも高めに設定することです。現在、既に芝が弱っている場合や毎年ダメージがある場合は、今の刈り高よりも更に50%程度は上げてみてください。間違っても夏に刈り高を下げるようなことはしないで下さい。もし芝の衰弱がひどく、伸びも止まっているようであれば刈込みはしなくても構いません。生育が回復し、再び芝が伸び始めるまで刈込みは見合わせて下さい。
 刈込みに際しては芝刈機の刃の切れ具合も確認しましょう。うまく刈れずに刈り残しが出てしまう場合や、刈った葉の先が引きちぎられたようになっている場合などは要注意です。切れ味が悪くなっているようであれば、刃を研磨するか新しいものと交換して下さい。切れない刃での刈込みはかえって芝を傷めてしまいます。
 刈込むのはあくまでも緑の葉の上部、前回の刈込み以後に伸びた分だけです。万一、上記の適正刈り高の上限値に設定しても軸刈り(茎刈り)になってしまう場合は、この上限よりも高く設定します。夏場の軸刈りは致命的なミスにもなりかねませんので、くれぐれもご注意ください。
 なお、上記の適正刈り高はあくまで“芝生としての美観や機能性”を重視したものであり、決して“芝草の生育”重視で決められたものではありません。したがって、夏に30℃を越える高温となり、熱帯夜も珍しくないような地域では「芝生としての美観」よりも「芝を無事に夏越しさせる」ことが優先されるべきであり、それに合った適正な刈り高というものも上記とは別に存在します。単に芝草の生育だけを考えるならば、夏場は刈込み作業を控え、芝を伸ばし放題にする、というのが適正な刈り高?ということになるわけですが、ただそれでは“芝生”ではなく、ただの“草むら”になってしまいます。もちろん、ご自身でそれをよしとされるならば、それも一つの夏越しに向けた芝生管理の正しいあり方だと思います。ですが、例え夏期にあっても芝生としての最低限の美観を維持したいというのであれば、ご自身の許容できる範囲で刈り高を上げ、その高さで定期的に刈り込む必要があります。その高さが何mmかは、芝刈機の設定可能な範囲とも関係してきますので、総合的に判断してください。
 とにかく、刈り高は芝草の光合成量に直接影響する非常に重要なポイントです。少しでも夏場の光合成量が増えるよう刈り高はできるだけ高めに設定してください。とくに熱帯夜が何日もあるような厳しい地域にお住まいの方は、上記で紹介した数値に縛られず、ご自身の環境、ご自身の芝生にとっての「適正な刈り高」を見つけていただくようお願いいたします。

その2.病気の発生に注意しましょう

 夏場は病気発生のピークです。また、この時期の病気は進行が速く、被害も大きくなる傾向があります。したがって、夏期は例え病気が発生していなくても、予防的に殺菌剤を定期散布することをお勧めします。
 家庭園芸用の殺菌剤となりますと種類も少なく、今のところ全ての病気に対応できるわけではありません。しかし、入手できるものをうまく使い分けられれば大体の主要病害は予防できるはず(?)です。当社HPに園芸店で購入できる殺菌剤の紹介がありますので、是非そちらを参考に、適切な予防をお心掛け下さい。
 散布した薬剤の効果は、もちろん薬によって異なりますが、おおよそ10日から3週間くらいとお考え下さい。効果がなくなればまた発病の危険が高まりますので、もう一度散布する必要があります。ただし、薬剤によっては使用できる回数に制限がありますので、使用する前に注意書きを良くお読みください。(注:特定の薬を連用することにより、病原菌がその薬に対する耐性を持ってしまうことがあります。そうした危険がある場合、年間の使用回数等を制限することがあります)
 西洋芝に発生する病気には実に多くの種類があり、しかも病名のないものや原因の分からない障害、有効な殺菌剤がない病害なども数多く存在しています。私ども専門業者にとっても病気は大変頭の痛い問題です。ただ、病気にも多く発生するものと稀にしか発生しないものとがあり、頻繁に発生する主要な病害だけを知っていればそれほど困ることはありません。西洋芝の場合、夏場に発生するのは大体が葉腐病(ブラウンパッチ)かダラースポット病、ピシウム病、赤焼病、フェアリーリング病の何れかです。ただし、芝の一部が枯れているのを見つけて「病気だ!大変だ!」と騒いだものの、実際は乾燥害や暑さによるダメージだった、ということもありますので、くれぐれも慎重にご判断ください。
 病気の発生を確認するには早朝の露が降りた状態が最適です。芝生の変色部分の形と大きさはどうか、また、輪郭部分に褐色の帯が見られるかどうか、その部分に綿状の白い塊はないか、クモの巣が張ったようになっていないか、などを確認するだけでも有効な手がかりとなります。病虫害関係の専門書を1冊でも手元に置いておきますと何かと頼りになるはずです。
 ただ、経験豊富なゴルフ場のキーパーならともかく、経験も浅く、情報も少ないアマチュアの方に病気の診断は非常に難しいことも事実です。実際、病気の種類を正確に判定するには植物病理の専門家でないと難しく、ゴルフ場のキーパーでさえ「たぶん○○病だろう」という程度の判断で使用する殺菌剤を決めています。ですから、アマチュアの方にはどうしても無難な「予防散布」をお勧めすることになってしまいます。これまでほとんど殺菌剤を散布していないという方はこれからでも結構です。是非とも数種類の殺菌剤をご用意いただき、それらを交互に、そして定期的に散布するようにして下さい。
 なお、殺菌剤とはいえ、希釈倍率や散布量を間違えますと薬害の出る恐れがあります。また、日中の気温の高い時間帯に散布しますとより薬害が発生しやすくなりますので、散布は朝夕の気温が低く、風のない時間帯をお勧めいたします。

その3.害虫の発生にも注意しましょう

 病気にばかり気を取られていると害虫の発生を見落としてしまいます。もし、芝生に何の模様(病斑)も出来ずに枯れてきた場合、害虫の発生を疑ってみる必要があります。特に前年、芝生に何かの昆虫が潜ったような痕跡を見た記憶がある場合には、一度、害虫についても確認しておくべきでしょう。
 判断の目安としては、枯れた地上部を引っ張り、簡単に抜けるかどうかを確認します。害虫の被害を受けた芝は根を食べられていることが多く、簡単に抜けてしまいます。また、芝生に鳥が飛来し、嘴で芝生を突っつくことがありますが、このような場合は、まず間違いなくコガネムシ等の幼虫がいるはずです。移植ごてなどでその近辺の芝生を10cmくらいまで掘り起こし、土壌中に幼虫がいることを確認します。確認できた場合は速やかに殺虫剤を散布します。確認できなかったとしても、怪しいと思う場合は散布しておいてください。使用する殺虫剤については当社のHPでいくつかご紹介してあります。
 なお、殺虫剤の使用に際しては殺菌剤同様、希釈液の濃度や散布水量(害虫の場合は特に重要です)、それと散布する時間帯、天候等にもご注意ください。

その4.夏は窒素を控えカリを多めに、肥料は液肥を使いましょう

 この時期は肥料、特に窒素肥料を与え過ぎると芝が徒長して軟弱となり、より暑さに弱くなってしまいます。そのため夏場の施肥、とりわけ窒素施肥は難しく、慎重な判断と丁寧な施用が求められます。過剰施用は絶対に避けなければなりませんので、夏には一切、窒素肥料を与えない、というのも一つの方法です。ただ、この場合は夏までにしっかりと肥料を与え、万全の状態にしてあることが条件となります。もし、これまでの施肥量が少なく、既に肥料切れの兆候が見られる場合は、やはり夏期であっても肥料を与えなければなりません。その場合は、窒素成分が少なくカリ成分の多い肥料(カリには根を伸ばし、耐暑性を高める効果があります)を用意し、少量を散布します。その後は芝の状態を経過観察して、もし問題がなければ更に少量を散布するようにします。このように、夏期は液体肥料を少量ずつ分けて施用し、芝に余計な成長をさせないことが大切なポイントになります。
 また、この時期は気温が高く、より肥料焼けしやすくなっています。できるだけ肥料には液体肥料(液肥)を使い、少量を夕方の涼しい時間帯に散布するようにしてください。もしやむを得ない事情で粒状の化成肥料を使用する場合には、雨天や曇天の日の夕方などに散布し、その後散水によりできるだけ肥料を溶かすようにしてください。ただ、先述のように夏場の施肥は少量ずつの多回数散布となりますので、できるだけ液体肥料を使用すべきでしょう。

その5.夏の管理では散水の仕方にも注意しましょう

 夏場の西洋芝の管理は散水に始まり散水に終わる、といっても良いほど散水は大切な作業です。
 夏場は最も散水を必要とする時期であるのですが、また同時に、散水のタイミングや量の決定が一番難しい時期でもあります。毎日、朝夕と定期的に散水したのでは、水はけの悪い芝生や十分に根の伸びた芝生の場合には散水のし過ぎとなり、逆に芝を傷めることになってしまいます。しかし一方で、あまり根張りの良くない芝生で1日1回の散水ですと、日中に水不足となり、僅かの間に芝が乾燥して取り返しのつかない状態になることもあります。しかも、葉が萎れはじめたからといって、慌てて日中の猛暑の中で散水すれば、瞬く間に水が温水に変わり、かえって芝生を傷めることにもなりかねません。このように、散水一つをとっても夏期は非常に難しく、管理者の高度な判断と技術が必要になるのです。
 散水が必要かどうかの判断は、まず早朝に芝生を観察し、芝生に露がおりているかどうかを確認して行います。もし露が降りていればある程度の水分はあるものと判断し、このような場合は散水を夕方に行うか、不安があれば朝の内に軽い散水をしておきます。もし露がないようでしたら、水が浮かない程度の量をじっくりと時間をかけて散水しておきます。そして夕方に(できれば昼にも)再度、芝生を観察し、芝生に萎れた部分がないかを確認してください。芝が萎れますと葉は細り、色も全体に黒ずんできますので経験のない方でもすぐに分かります。
 夕方の散水はあくまで足りない分を補充するだけです。夜間は日中ほど水が蒸発するわけではないので、必要以上の散水は禁物です。与えすぎますと過湿となり、夜間に赤焼病やピシウム病などが発病する危険性が高まります。また、夕方の散水では水温にも充分注意して下さい。日中の暑熱で温かくなった水道の水をいきなり撒いたのでは、かえって芝を傷めることになってしまいます。かつて、グリーンキーパーは猛暑の際にタンクに氷水を入れて撒いた、という話もあるくらいです。散水前に必ず水温を確かめることは当然ですが、できれば少しでも水温を下げるような工夫をしたいところです。
 散水はあくまで芝に水分を補給してあげることが目的なのですが、これとは別に「シリンジング」といって暑さの厳しい日中、芝の葉面をうっすらと湿らす程度のミスト散水を行なう方法があります。これは玄関先などに撒く「打ち水」と同じ目的で行うもので、葉面に付着した水分が蒸発する際に気化熱として熱を奪い、芝の温度を下げてくれる効果を期待するものです。ただ、暑い最中に散水するわけですから、かなり危険な方法ではあります。特にわが国の場合は日中の湿度が高い傾向にあり、風速などの条件によってはうまく機能せず、かえって芝が蒸れて逆効果になることも考えられます。それでも、暑さという自然の猛威に対して講じられる数少ない対策の一つであることは事実ですので、湿度が低く、ある程度の風がある場合には試してみるのもよいでしょう。ただし、実施する時はくれぐれも水温と散水量に注意していただくようお願いいたします。

その6.夏場にやってはいけないこと・・・

 これまでにご案内したことも含めて、以下に夏場に犯しやすい間違いや夏場の管理における禁止事項をご紹介しておきます。管理者の不注意で芝生を枯らすことのないよう、以下の禁止事項を必ずお守りいただくようお願いいたします。

×決して低刈りをしてはいけません
 夏場は芝の体力が落ちるため、必要以上の低刈りは芝の命取りになりかねません。必ず上記でご案内した適正刈り高の範囲かそれ以上の刈り高で維持管理して下さい。
 また、夏場の刈込みは頻繁に、定期的に行えばよいという訳ではありません。暑さで芝の伸びが止まっている場合には刈込みを行わない方がよいでしょう。刈込みは芝生を美しく保つのに必要不可欠な作業ですが、芝にとっては迷惑なストレス源でしかありません。あくまで芝の健康を第一に考え、刈込みを行うタイミングについては芝の状態(伸び)に合わせて判断するようにして下さい。

×ホース内に溜まった水や蛇口を開けた直後の水を撒いてはいけません
 夏場は水道水の温度が高くなっていることが多いので、芝生に散水する前に必ず水温を確かめるようにして下さい。特に、ホース内に溜まった水や蛇口を開けた直後の水は高温になっていることが多く、それをいきなり芝生に撒いたのでは芝生を枯らすことにもなりかねません。出始めの温かい水は芝生以外の用途に使い、水温が低下するのを待ってから芝生に撒くようにして下さい。

×速効性の化成肥料を使用してはいけません
 速効性の化成肥料は効果が早く現れるものの、肥料焼けを起こしやすく、特に夏場の使用は非常に危険です。したがって、夏場の肥料としては薄めの液体肥料(液肥)を使用するようにして下さい。また、肥料の散布に当たっては日中の高温時を避け、散布ムラのないよう心掛けてください。

×目土をしてはいけません
 夏場に目土(特に砂目土)をしてはいけません。この時期に目土を行うと目土が日中に高温となり、芝の茎葉を傷めてしまいます。また、目土が葉を被覆してしまえば、芝は一層光合成が出来なくなり、夏枯れを助長することにもなりかねません。もし、既に目土を撒いてしまった場合は取り除ける分だけでも取り除き、残りは丁寧に擦り込んでおいてください。また、日中、目土が高温になりすぎないよう軽い散水で目土の温度を下げてください。

×除草剤を散布してはいけません
 除草剤の使用も夏場は禁物です。例え寒地型の西洋芝に適用のある除草剤であっても、使用する時期や芝生の状態次第では薬害が発生することがあります。特に暑さで弱った芝生に撒けば、非常に高い確率で薬害が発生し、最悪の場合、芝生を全滅させることもありえます。西洋芝の場合、除草の基本はあくまでも「手取り」とお考えください。

×芝生の上にあまり立ち入ってはいけません
 夏場の芝は弱っていますので、むやみに立ち入るべきではありません。ですから、秋が来るまではお子様を芝生の上で遊ばることは避けて下さい。また、万が一、芝生内に自動車やバイクを乗り入れている方がいらっしゃいましたらくれぐれもご用心下さい。タイヤによる踏圧は勿論のこと、停車直後の車(バイク)から発せられる熱気によっても芝は傷んでしまいます。

×何日も芝生を放置してはいけません
 夏場の管理で最も犯しやすいミスは、実は上記のような管理上のミスではなく、夏休みやお盆の帰省などで何日も家を空けてしまい、その間、芝生を放置してしまうことです。それまで丹念に面倒を見て、このまま無事に夏を乗り切れるかに思えていた西洋芝が、3~4日の楽しい休暇から戻ってきたら全て枯れていた、などという悲惨な話しも決して珍しくはありません。夏場の西洋芝の状態は急速に変化しますので、出来るだけ芝から目を離さないことです。間違っても連日の猛暑の中、何日も芝生をほったらかしにするようなことだけはしないで下さい。
 しかし、だからといって芝生のためにお盆の帰省や大切な家族旅行を諦めろというの非常に酷なお話で、実際的な話ではありません。ですから、ここでは妥協案として、留守中に散水だけでもできるよう自動散水装置を導入するか、どなたかに早朝の水遣りだけでもお願いしておくことをお勧めしておきます。留守中に散水だけでもできれば、芝生が全滅する危険性はかなり抑えられるものと思います。

その7.夏枯れさせないことだけを考えましょう

 上記のような諸注意を正しく守り、適切な管理を行っていたとしても、その年の夏の気温やお住まいの地域によってはうまく夏越しできないことも考えられます。そのような場合には、芝生の美観の維持は諦めて、とにかく芝を枯死させずに秋まで保たせるような管理に切り替えることが大切です。
 例えば、見てくれは悪くても思い切って芝を長く伸ばし、なおかつ、日中は芝生を寒冷紗やヨシズなどで覆う、などの思い切った防暑対策が考えられます。また、費用はかかりますが、ゴルフ場のグリーン並みに大型の扇風機を導入し、夜間だけでも芝生に送風するといった方法もございます。最後は費用対効果の問題になるのでしょうが(秋に張り替えた方が安上がりの場合もあります)、とにかく芝の密度が低下して芝生が薄くなったり、芝生というより草むらに近い状態になったとしても、芝が枯死してさえいなければ、秋の内に芝を回復させ、また再び美しい芝生を取り戻せるかも知れません。もし夏越しが難しそうだと感じましたら、潔く「美しい芝生を維持する管理」から「芝を枯死させないための管理」に切り替えられることをお勧めいたします。


 以上、夏期のダメージを最小限にするための注意すべきポイントとして7項目ほど挙げてみました。毎度同じ内容になりますが、これらは夏越しを成功させるために大変重要なことです。少なくともここに挙げた全項目は全て覚えていただき、間違いのないようお願いいたします。とにかく、夏場の管理は細心の注意と適切かつ迅速な対応こそが肝要ですので、日々、芝生の状態を観察し、芝の変化を見逃さないようにして下さい。

 最後に、夏期ならではの内容として「夏期の西洋芝管理の心構え」についてもご案内しておきます。
 先の注意点「その7」とも共通することなのですが、夏期の心構えとして大切なのは「絶対にダメージを避けるんだ!」という意気込みではなく、「西洋芝は夏になれば弱り、少なからずダメージを受けるものだ…」と割り切れる心の余裕だと思います。特に、熱帯夜が続くような東京などの都市部や西日本の気温の高い地域にお住まいの方には必要不可欠な考え方だと思います。こうした余裕を持たないと、夏場の西洋芝の管理は苦痛でしかありません。グリーンキーパーのように職業として芝生管理をするならともかく、会員の皆様は趣味として楽しむために芝生を管理しているわけですから、毎日、胃の痛む思いをしながら芝生と接していたのでは本末転倒になってしまいます。ですから、夏期においては連日の暑さを恨むのではなく、夏こそご自身の腕試しの好機と捉え、これまでの管理経験を活かしながら、ご自分なりの暑さ対策をいろいろと工夫してみて下さい。上記にそのためのヒントは示しましたので、初めての方でもそれなりの工夫はできるはずです。万一、失敗したとしても秋に傷んだ箇所を張り替えれば良いのですから、どうか気持ちを楽にして、西洋芝ならではの芝生管理の奥深さをお楽しみ下さい。きっと手間を掛けるほどに心地良い緊張感が味わえるものと思いますし、また、成功した暁には、芝生造成時に味わった満足感とはまた違った、新たな満足感、達成感が得られるものと思います。どうか本ページがその一助となって、一人でも多くの方が夏越しに成功され、喜びと達成感をもって秋を迎えられますよう祈念いたしております。


●裏技?のご紹介
上記のような通常の夏枯れ対策ではどうにもならない場合、最終手段として、日中の「日除け」をお勧めします。方法は芝生の周囲と芝生の中に園芸用の支柱を立てておき、そこに日中、寒冷紗を掛けておくだけです。こうすることで、日中の強い日射しが遮られるため、芝生の温度上昇をかなり抑えることができます。もちろん、芝生を観賞したり、芝生の上に立ち入ることはできなくなりますが、「背に腹は代えられない」ということです。さらに、夜間だけでも大型の送風機で「芝生に向けて」風を送れれば、より暑さによるダメージを抑えることができます。電気代や騒音の問題もあるでしょうが、そこをクリアできるのであれば強くお勧めしたい対策です。



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