<お断り>
以下でご紹介する管理方法等は、当社の位置する関東エリアの一般的な(理想的な)条件下で生育する西洋芝を想定したものです。お客様方の気象条件(気温、雨量、日照時間など)や立地条件(日陰の有無、風通しの良否など)、土壌条件(保肥力、排水の良否など)、メンテナンス方法等によっては適切でない場合もございますので、予めご了承の上でご一読いただきますようお願い申し上げます。
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■■■ 梅雨期における西洋芝管理のポイント ■■■
以下に梅雨期において注意したい管理上のポイントをご紹介いたします。
● 刈高の確認
現在の刈高はいくつになっていますか?芝張り後の養生期間を除き、当社の扱う西洋芝の適正な刈高は以下のようになります。今一度、芝刈り機の刈高をご確認ください。
・ベントグラス<ゴルフ場のグリーン並みに管理している場合> ・・・5mm前後
・ベントグラス<お庭の芝生として管理している場合> ・・・・・・・10~15mm
・ビバターフ(ケンタッキーブルーグラス) ・・・・・・・・・・・・25~30mm
・ジョイターフ(トールフェスク&ケンタッキーブルーグラス) ・・・30~35mm
以上のように芝の種類ごとに適切な刈高は異なりますので、くれぐれもお間違いのないようお願いします。なお、上記はあくまで「芝の生育」と「芝生としての美観」を考慮して当社で設定した一つの目安です。したがって、芝の生育が良くない(芝が弱っている)場合や夏越しが不安な場合には「美観」よりも「生育」を優先して上記の目安よりも高い刈高で維持されることをお勧めします。
もし北海道などの寒冷地以外にお住まいで、なおかつ刈高が上記よりも高い場合は、敢えて刈高を下げずに秋までそのまま維持されることをお勧めいたします。また、上記の下限値よりも低く刈り込んでいる場合は、寒冷地、暖地を問わず、すぐに上記の範囲まで戻してください。上記の刈高よりも低く刈ってしまいますと芝はその刈高に耐えられなくなり、次第に生育が衰えてきてしまいます。これから夏にかけては西洋芝にとって体力勝負の持久戦となりますので、不用意な低刈りはそれだけで芝生を全滅させる原因にもなりかねません。設定する刈高で迷ったときには、必ず高い方の刈高をお選びいただくようお願いいたします。
注)芝草は刈高が高いほど根も深くまで伸び、暑さなどのストレスにも強くなる傾向があります。したがって、夏の暑さが厳しい地域では、夏越しに備えてできるだけ高めに(推奨刈高よりも高く)設定することをお勧めいたします。ただし、あまり高くしすぎますと芝が寝てしまい、きれいに刈り込めなくなりますので、芝刈り機の設定幅なども含めて総合的にご判断ください。
● 刈込み頻度
梅雨期は雨天続きでどうしても刈込みが疎かになってしまいます。それまでは週に3回刈り込んでいたのに、連日の雨で延ばし延ばしになり、ついには週1回のペースになってしまった、などというパターンにもつい陥りがちです。気温が高ければ生育も鈍りますのでそれほど芝が伸びすぎることもないのでしょうが、雨の日は気温もさほど上がらず、寒地型の西洋芝にとって快適な気温だったりいたします。また、土壌水分も十分すぎるほどありますので、それまで以上に芝が伸びてしまうこともあるでしょう。大雨の中をびしょ濡れになりながら刈り込んで下さいとまでは申しませんが、今の美しい状態を維持するためにも、できるだけ刈込み頻度を落とさないようお願いいたします。
この時期のトラブルとして多いのは、雨で刈込みができずに芝を刈高の2~3倍の高さにまで伸ばしてしまい、それを以前の刈高のままで刈ってしまうことです。こうした刈込みを行いますと、場合によっては芝が弱って変色したり、最悪の場合には芝生が全滅してしまうこともあります。もし芝を伸ばしすぎてしまった場合には、その時点の芝の高さに合った刈高に設定し直してから刈り込んで下さい。
刈高設定の基本は、あくまで現在の芝の高さの2/3~3/4以上を確保するということです。つまり、20mmで刈っていた芝を45mmにまで伸ばしてしまった場合、それを20mmで刈るようなことはせずに、一旦、刈高を30mm(=45mmの2/3)以上に上げて刈り、徐々に20mmに戻すようにしなければなりません。また、使用する芝刈機の刈高上限が30mmであるならば、芝が45mmまで伸びる前に刈り込まなければならないということでもあります。とにかく、刈込みによる芝へのストレスを軽減するには一度に刈り取る葉の量を少なくすることが肝要ですので、刈高の設定には十分に注意し、梅雨の間も出来るだけ刈込み頻度を落とさない(刈込みの間隔を開けない)よう心掛けてください。
● 薬剤散布
6月に入り、そろそろ寒地型西洋芝の重要病害である葉腐病(ブラウンパッチ)やダラースポット病の発病適期になってきました。また、この時期はシバツトガやコガネムシ幼虫の発生時期にも当たります。6月中に一度、殺菌剤と殺虫剤を散布しておきましょう。
葉腐病(ブラウンパッチ)という病気は円形に近い病斑で黄色く変色し、輪郭部分だけが汚い褐色を呈します。大きさは様々ですが、いくつかの病斑が融合して1mほどの大きな病斑になる場合もあります。病原菌の生育適温は25~30℃とされています。
一方、ダラースポット病というのは文字通り1ドル硬貨大の麦わら色の病斑がスポット状にいくつも発生する病気で、6月頃から9月頃までが発生盛期になります。ダラースポット病の場合は、早朝に芝生を観察していただきますと、病斑部分にクモの巣のような菌糸が現れているので容易に識別できます。しかも芝が枯れ始める前に菌糸の発生を確認できますので、早期発見・早期防除にも役立ちます。
注)クモの巣状の菌糸と思いきや、本物のクモの巣だった、ということもございます。小型のクモが芝生に巣を張ることも珍しくないので、クモの巣状のものを見てすぐにダラースポット病と決めつけずに、その下の芝の様子、とくに葉先が枯れはじめているかどうか、葉の変色が見られるかなども確認してください。芝に異変がない場合はクモの巣である可能性が高いので、しばらく経過を観察してみましょう。
シバツトガやコガネムシの幼虫は土中に生息しているため、どうしても発見が遅れがちです。造成間もない芝生だから安心というわけではありません。乾燥や病気でもないのに芝が枯れてきたら害虫の発生も疑ってください。害虫の場合は、枯れた部分の芝を剥がすと容易に見つかります。
これらの病害虫は西洋芝ではごく普通に発生するものですし、被害が発生してからでは芝の回復が難しいものもありますので、予防も含めた定期的な薬剤散布をお勧めいたします。もちろん、既に一部でも発病(発生)している場合は早急な防除をお願いします。とにかく病害虫については早期の発見、早期の防除が肝心です。
薬剤を散布する場合は気温の高い日中は避け、曇天の夕方などの気温の低い時に散布します。殺菌剤(水和剤・液剤)と殺虫剤(乳剤・液剤)とは水と混合して一緒に散布できますので、同時に散布すると手間が省けます。また、散布する際には薬剤の効果を上げるために必ず展着剤も加えるようにしましょう。
上記の病気や害虫に効く薬剤は一般の園芸店やホームセンターで入手できます。詳しくは当社HP内の芝草関連情報コーナーをご覧ください。また、ご使用の際には、薬剤のパッケージにある使用方法等の説明を良く読み、正しい方法で使用するようお願いいたします。
● 肥料散布
6月に入りますと気温がかなり高くなりますので、施肥についてもこれまで以上に注意が必要です。市販の手引き書には5月同様の施肥量と書かれているものもありますが、それは北海道などの梅雨のない地域の話です。
梅雨のある地域では、施肥は5月よりも控えるべきです。梅雨に入り雨天や曇天が続きますと、芝にとっては日照不足気味となってきます。そのため、多かれ少なかれ芝は徒長し、軟弱になってきます。しかも、雨天続きで刈込みの方も疎かになり、芝を必要以上に伸ばしてしまいがちです。このような時期に肥料を多く与えますと、より芝を軟弱にするだけでなく、徒に芝を伸ばし、刈込みの手間を増やすことにもなってしまいます。6月のおおよその目安としては、窒素の成分量で月に平米当たり2g程度でしょうか。もちろん、5月に十分すぎるほどに与えたのであれば、更に少なくてよいはずです。なお、これからの気温の高い時期は少量多回散布が鉄則です。一度に月の予定施肥量を撒いてしまい、徒に芝の伸長を刺激することのないようお願いします。
梅雨の時期には肥料の種類にも注意が必要です。先に肥料は控えめにとお願いしましたが、それはあくまで窒素成分についてです。カリは根の伸長を促進し、芝の耐暑性を高めるため、これからの時期はむしろ必要な成分になります。したがって、肥料を購入する際にはカリ成分が多く、窒素成分の少ない肥料を選ぶようにしましょう。もしそうした肥料が見つからない場合は、数種類の肥料を組み合わせて、窒素を少なく、カリを多めに与えるように調節します。また、肥効の穏やかな有機質肥料も使用できますが、その場合はカリ成分を補うために別途、カリ肥料を与えるようにします。さらに、キレート鉄のような鉄剤も散布しますと、芝を丈夫にしつつ葉色も保てて効果的です。なお、お店の規模によっては、N-P-K=8-8-8というようなごく普通の肥料しか置いていないこともあるでしょう。どうしても成分の調節ができない場合には、やむを得ませんのでカリの増量は諦めて、窒素の量を基準に散布量を決めて下さい。
園芸店などに行きますと芝生用肥料というものも目にすることがあります。しかしこれらは芝生に撒きやすい細かい粒状になっているだけで、特別な成分などは入っていないようです。ですから、肥料を選ぶ場合は芝生用ということに拘らず、有機肥料か化成肥料か、緩効性か速効性か、芝生に撒きやすい形状のものかどうか、肥料の成分と量、バランスはどうなっているかなどを確認し、その時々の用途に合ったものを選ぶようにすべきです。
また、気温が高くなってきますと肥料焼け(芝が茶色に変色する、肥料による濃度障害です)の心配も出てきます。もし固形の化成肥料を使用する場合には肥料散布後にタップリと散水し、肥料をできるだけ溶かしてください。気温の高い時に肥料の粒が残った状態が続きますと芝が肥料焼けをおこす恐れがあります。また、小雨の日や降雨の直前に撒くのも散水の手間が省けてお勧めなのですが、あまり雨の日を待ちすぎて施肥のタイミングを逃すことのないようご注意下さい。
● 排水不良箇所の確認と対策
雨天の日に芝生を観察し、水溜りはないか、周囲からの水の流入はないか、表面水はうまく芝生の外へ流れているかを確認しましょう。もし不良箇所があれば排水管を敷設するなり、穴をあけて砂を入れるなりして排水の改善を行います。排水不良を放置しておくと梅雨明けを待たずに芝が枯れてしまうことにもなりかねませんので、十分な対策をお願いいたします。
● 更新作業
本来、目土やエアレーション(穴あけ)といった更新作業は芝が伸び始める春(3月から5月頃)に行うものです。稀に排水対策などの理由でこの時期に行う場合もありますが、この時期は気温が高いため、作業直後に芝生が傷んだり乾燥したりして、かえって芝のダメージを広げてしまう可能性もあります。これから更新作業を行う場合はできるだけ早い時期に行うと共に、気温の高い日中には行わないなどの工夫が必要です。また、作業後は芝が乾燥しますので充分な散水を行うようお願いします。
● 散水
この時期は毎日のように雨または曇りの天気となりますので、芝張り後間もない芝生ならともかく、十分に根付いている芝生の場合にはあまり散水の必要はないでしょう。むしろ芝生が過湿にならないようご注意ください。ただ、時として梅雨の晴れ間には真夏のような暑さになることもありますので、晴天が続いた場合は芝の乾燥にも注意する必要があります。
以上、梅雨期の管理について注意すべき点を一通りご説明しましたが、とにかく、梅雨期は夏期と並んで西洋芝にとっては危険な時期です。刈込み以外の作業に関しては、くれぐれも天候や気温に注意して行うようにしてください。また、これからの時期は芝生に病虫害が発生したり、芝の茎葉や根の状態も大きく変化しますので、日々、芝生の状態をよく観察し、適切かつ迅速な対応をお願いいたします。これからの長い梅雨の時期をどのような状態で維持できるかが、その後の夏越しの成否にも大きく影響してきます。是非とも上記のポイントを押さえつつ、当社のホームページや市販の手引書などを参考に、適切かつ緻密なメンテナンスを実行していただくようお願いいたします。
どうか皆様の西洋芝が無事に梅雨期を乗り越えられますよう祈念いたしております。
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