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冬期の西洋芝管理について

<お断り>
以下でご紹介する管理方法等は、当社の位置する関東エリアの一般的な(理想的な)条件下で生育する西洋芝を想定したものです。お客様方の気象条件(気温、雨量、日照時間など)や立地条件(日陰の有無、風通しの良否など)、土壌条件(保肥力、排水の良否など)、メンテナンス方法等によっては適切でない場合もございますので、予めご了承の上でご一読いただきますようお願い申し上げます。


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<目次>
1.厳密には、寒地型西洋芝も「常緑の芝」ではありません
2.冬場の色落ちは病気や生理障害ではありません
3.色落ち抑制にはシート掛けによる防寒対策が有効です
4.保温シートは夜間のみ掛けるのが基本ですが、そこは臨機応変に
5.二者択一の難問:シートを掛けるか、色落ちを許容するか
6.寒冷な地域では乾燥と霜に注意してください
7.積雪地域では雪腐病に注意。根雪前に予防散布を
8.温暖な地域では冬でも芝が伸びるので、通常の管理を行います
9.冬期の西洋芝管理の要点
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1.厳密には、寒地型西洋芝も「常緑の芝」ではありません

 寒地型の西洋芝はしばしば常緑の芝だとか冬芝などと表現されることがあります。こうした表現自体の適否はともかく、問題は、その言葉の響きからほとんどの方が西洋芝を1年中緑鮮やかな芝、冬でも青々と生育する芝だと思ってしまうことです。
 一部の暖かい地域を除けば、日本芝(コウライシバやノシバ)は通常、冬には地上部が白っぽく枯れ(冬枯れして)休眠状態に入ってしまいます。一方、寒地型の西洋芝は比較的寒さに強いため、日本芝のように白く冬枯れしてしまうことはありません。ただ、西洋芝にも生育に適した温度というものがあり、この温度よりも気温が低くなりますと芝の生育は一気に低下し、茎葉や根はほとんど伸びなくなり、葉も退色して鮮やかな濃い緑からくすんだ緑ないし黄緑色に変色してきます。
 さらに霜が降りはじめ、最低気温が氷点下にまで下がりだしますと、西洋芝の成長はほぼ停止して休眠状態となり、葉色もより黒ずんだ色になってしまいます。しかも場合によっては葉に赤い色素(アントシアニン)が生成されて赤みを帯びたり、葉先が白く枯れたりすることもあります。こうなるともはや西洋芝も「緑の絨毯」ではなくなってしまいます。

2.冬場の色落ちは病気や生理障害ではありません

 冬でも緑の芝生にしたいと西洋芝を購入された方としてはなんとも遣り切れない思いでしょうが、こうした冬季の色落ちは決して芝の病気や生理障害でもなければ、管理上のミスでもありません。単に西洋芝が寒さと乾燥にさらされた時に起こす「反応」、「適応」にすぎないのです。しかもこれは、あくまで西洋芝が寒さと乾燥に耐え、ジッと気温が上がるのを待っている状態にすぎませんので、条件(温度と水分)さえ整えば芝は再び緑を取り戻し、成長を開始します。ですから、もしご自宅の芝の伸びが止まり色が落ち始めたとしても、シート掛けや散水などで芝生を寒さや乾燥から保護してあげれば、冬でも十分、緑を保持することが可能なのです。

3.色落ち抑制にはシート掛けによる防寒対策が有効です

 どうしても緑を維持したい、そのためには労を惜しまない、という方は、保温シートの導入をお勧めします。夜間、保温シートを掛けることで防寒、防霜対策になり、芝の色落ちを大幅に抑制できます。
 ゴルフ場や当社の圃場などでは主に芝生用に製品化された大きな保温シートを使用しておりますが、それらは業務用であるため一般のホームセンターなどでは入手困難で、しかもお庭用には大きすぎて扱いにくく、非常に高価でもあります。ですから、個人で使用する場合には「バロネスダイレクト」さんで扱っているような小面積用のものを購入するとよいでしょう。また、芝生用は高価すぎるという場合には、ホームセンターなどで販売されている農業(園芸)向けの保温シートで代用することも可能です。ただ、一口に農業(園芸)用の保温シートといっても、実際にはいろいろな種類があるので購入する際には注意が必要です。
 芝生用の保温シートの場合、保温性だけでなくある程度の通気性や光透過性を兼ね備え、しかも軽くて丈夫なものが最適です。ただ、これはあくまで理想であって、これに縛られては「適したものがどこにも無い」ということにもなりかねません。一般に農業用の保温シートとして販売されているものには不織布(ふしょくふ)タイプのものが多いようですが、商品によっては通気性のないものもありますので、どのような性質の素材かを確認してから購入するようにしてください。また、既に「寒冷紗(かんれいしゃ)」をお持ちであればそれを重ね合わせて使用するという方法もあります。実際には最寄りのホームセンターなどで入手可能なものから、各自のご予算や好みに合ったものをお選びいただくのがよろしいかと思います。
 なお、ご購入の際にはシートの大きさ(寸法)にも注意して下さい。シート1枚で芝生全体をカバーできれば問題ありませんが、そうでない場合は全体を覆えるだけの枚数を購入しなければなりません。この時に重なり部分も見込んで大きめに用意する、ということがポイントです。また、シートの固定用に「はと目釘」(シートの縁にある穴にさして固定する釘)も必要です。風の強い地域では多めに用意したほうがよいでしょう。ブロックや重めの石などを重しにしてもシートは固定できますが、重しはくれぐれも芝生の外に置いていただくようお願いいたします。
注)上記では「バロネスダイレクト」さんの扱う商品ページへのリンクを貼っておりますが、先方のサイト更新によりリンク切れとなっていた場合には「バロネスダイレクト」さんのホームページでお探しください。

4.保温シートは夜間のみ掛けるのが基本ですが、そこは臨機応変に

 保温シートは基本的に気温の下がる夜間にのみ使用し、気温の上がる日中は外しておきます。ただし、厳しい寒波が降りてきて日中も冷え込むような時は無理に外さず、そのまま掛けておいた方がよいでしょう。あくまで芝の防寒が目的なので、天候に合わせて臨機応変に判断することが大切です。そのためにも、シートを選ぶ際にはある程度の通気性と透光率のあるものを選ぶようにしてください。もし通気性の悪いシート(農業用のマルチングシートなど)や遮光用シートなどを購入してしまった場合には数日にわたる連続使用は避け、芝が光合成や呼吸ができるよう時々は取り外すようにしてください。これを怠ると芝が蒸れて軟弱になり、かえって寒さや病気にも弱くなってしまいます。

5.二者択一の難問:シートを掛けるか、色落ちを許容するか

 先述の通り、暖かい地域以外で冬でも緑の芝生を維持し、その芝生を観賞しようとすれば、冬の間は毎日のようにシートの掛け外しをしなければならないことになります。これは、実際に行うとなると非常に大変な作業です。ゴルフ場やJリーグのサッカー場ならともかく、個人のお庭で果たしてそこまで可能なのか、芝の問題とは別のまた新たな問題が発生してきます。
 西洋芝を選ばれた理由が「冬でも緑の芝生」だからというお客様に対して、当方からこのようなことを申し上げるのは大変心苦しいのですが、寒冷な地域にお住まいの方はある程度の色落ちを許容することも必要ではないか、と考えます。おそらく冬季の色落ちが深刻な方ほど、夏季には楽な思いをされているはずですので、「その分冬は我慢するか…」と割り切られてはいかがでしょうか。どうしても常緑にこだわるというのであれば、先にご案内した保温シートを導入していただかねばなりませんが、「冬の間中、毎日シートを掛け外しするなんて出来ないよ…」という方も少なくないはずです。ですから当方としては、必ず霜が降りるような地域の方で、しかも今年初めて冬を迎えるという方には、とりあえずこの冬をシート掛けなしで済ませ、芝生がどの程度色落ちするのかを実際に確認されることをお勧めしたいと思います。もしかしたら見事に色落ちしてしまうかもしれませんが、それでもいいと思えればわざわざシート掛けなどしなくても良いでしょうし、「やはりこの芝生の色では寂しすぎる…」というのであれば、来冬は保温シートの導入を検討すべきかと思います。とにかく、まずは実際にご自分の目で冬場の芝生の色を確認してみることが大切だと思いますので、是非一度、お住まいの地域で冬場に西洋芝がどのような状態になるのかを試していただき、その上で色落ちを許容するのか、それともシート掛けで緑度保持を行うのかを検討してみてください。

6.寒冷な地域では乾燥と霜に注意してください

 西洋芝の伸びが止まり、多少なりとも色落ちするような寒い地域では、芝の防寒だけでなく、乾燥防止にも努めてください。芝の葉色低下は低温に乾燥が加わった時に最も激しくなりますので、芝の乾燥を防ぐことである程度の色落ち抑制効果は期待できるはずです。
 乾燥防止への対応は単純に散水することですが、散水をする上でいつくかの注意点があります。それは散水する日を選ぶことと決して撒きすぎないことです。散水は寒さの和らいだ日を選び、暖かい日中に行いましょう。量は控えめに、撒きすぎて浸透しないまま夜を迎えるようではいけません。付着した水分が凍結して芝にダメージを与えてしまいます。
 また、寒い地域では、よほどの暖冬でもない限り霜の降りる日があるはずです。霜自体も芝にとっては良くないのですが、最も注意すべきは「霜の付いた芝生へは絶対に立ち入らない」ということです。芝生に入る場合は、必ず霜が解けてからにしてください。そうしないと、きっとあなたの歩いた所の芝が傷み、足跡が何日も残ることになるでしょう。場合によってはその足跡が春まで消えない(回復しない)、ということにもなりかねませんので、どうか霜にはくれぐれもご注意下さい。

7.積雪地域では雪腐病に注意。根雪前に予防散布を

 積雪の多い地域では冬は雪に覆われ、ほとんど芝生を楽しむことができません。その分、芝生の管理もありませんので、ただひたすらに春の訪れを待つのみです。それでも冬季には一つだけ大切な作業があります。それは雪腐病(ゆきぐされびょう)予防剤の散布です。
 意外に思われるかもしれませんが、雪の下というのはほぼ零度で保たれますし、湿度もありますので、思ったほど芝生は傷まないものです。ただし、そうした環境に長期間おかれますと雪腐病という積雪地特有の病気が発生します。この病気は春に根雪が解けてはじめて発生を確認できるので、非常に厄介な病気です。最悪の場合、芝生のほとんどが枯れるほどのダメージを受けてしまいます。ですから積雪地帯にお住まいの方は根雪になる直前に雪腐病の予防剤を散布しておくことをお勧めします。
 ただし、残念なことに現在、ホームセンター等で購入できる農薬の中に、この雪腐病に効く殺菌剤はありません。住友化学園芸さんなどから販売されるのを待つしかないのですが、業務用であれば、バロネスダイレクトさんで「グラステン水和剤」などいくつか扱ってくれています。詳しくは、当社の「園芸店で購入できる芝生用資材のご紹介」ページでご確認ください。

8.温暖な地域では冬でも芝が伸びるので、通常の管理を行います

 温暖な地域では冬でも通常の管理を行います。暖かい日が続けば芝も伸長しますので、時々は刈込みや散水を行い、必要ならば肥料も与えてあげましょう。冬季は害虫や雑草の心配がなく、病気にしてもさほど重大なものは発生しませんので、一年で最も安心して管理のできる季節です。注意すべきは乾燥くらいでしょうか。日本の太平洋側は冬季に非常に乾燥しますので、蒸発散の少ない冬であっても必要と判断されればその都度、散水するようお願いいたします。ただし、この場合も寒い日は避け、くれぐれも撒きすぎないように注意してください。

 以上、いろいろと冬季の心構えや注意点などをご説明しましたが、十分にご理解いただけたでしょうか?積雪地帯にお住まいの方や、冬でも霜が降りないような温暖な地域にお住まいの方はそれ程迷うことはないと思いますが、それ以外の方とっては、かえって不安や迷いを与える内容だったかも知れません。ですが、ある程度のコツや割り切りができてしまえば、夏ほどの苦労はないはずです。どうかご自身の判断でこの冬を粗放的(省力的)な管理で済ますのか、それともシート掛けなどの手間を掛けても緑度を保つのかをお決めいただくようお願いいたします。最後に、冬期も通常の管理が必要な方のために、メンテナンスの要点のみご紹介しておきます。

9.冬期の西洋芝管理の要点

1)刈込み
 芝が成長している場合には定期的に行う必要がありますが、伸びが止まっている場合はあまり必要ありません。たまに芝生上のゴミを除去するために行う程度で十分です。
 刈込みの高さはやや高めのほうが良いでしょう。もし設定可能であれば、秋の高さよりも数ミリ程度上げて刈り込んでください。

2)肥料散布
 冬でも成長しているのであれば、少量の緩効性肥料を与えます。もはや成長が止まっているのであれば、これ以上肥料分を与えても芝は吸収してくれませんので、わざわざ与える必要もないでしょう。

3)散水
 芝が伸びているのであれば散水も必要です。降水量が少なく乾燥気味であれば適宜散水を行い、水分を補ってあげる必要があります。
 伸びが止まった芝についても散水は有効です。もちろん生育期ほどに葉からの蒸散があるわけではないのですが、寒さに乾燥が加わりますと芝の色落ちが早まったり、春の緑化が遅れたりしますので、乾燥しすぎないよう時々は散水してあげるとよいでしょう。
 晩秋以降に張って根づいたばかりの芝生ですと、散水はより重要となります。このような芝生では根の張りも少なく、大変乾燥しやすくなっています。ともすれば春先の成長に悪影響が出るばかりか、枯れてしまう恐れもあります。乾燥には十分に注意し、適度な散水を心がけてください。

4)目土
 特には必要ありませんが、もし夏や秋にダメージがあったり擦り切れているような場所がある場合は砂を散布しておきましょう。ただ、くれぐれも厚目土はしないようお願いします。

5)薬剤散布
 夏季の高温の状況とは違い発病の可能性は少ないのですが、積雪地域では雪腐病、それ以外の地域では低温で発生するイエローパッチ(正式名は疑似葉腐病(イエローパッチ)といい、気温の低い時期に出るので別名、ウインターパッチとも呼ばれます)などに注意が必要です。
 雪腐病については既にご説明した通り、根雪になる直前に予防効果のある殺菌剤を散布しておきます。イエローパッチは冬期に黄色がかった薄茶色~白色のリング状のパッチが発生する病気ですが、雪腐病ほど深刻な病気ではないので、毎冬発生するのでもない限りとくに予防散布は必要ないでしょう。もし発生してしまった場合には殺菌剤を散布しますが、ただ、こちらも雪腐病同様、家庭園芸向けのものがないので、業務用の殺菌剤に頼ることになります。バロネスダイレクトさんで扱う殺菌剤の中では「トップグラスドライフロアブル」がこの病気に効果があります。

6)凍上対策
 冬特有の問題に霜柱による凍上の被害(芝生が持ち上がって根が切れたり、地下部が寒さと乾燥に曝される害)があります。砂を床土に使用している場合はあまり問題にはなりませんが、土の上にソッドを張ったような場合は霜柱にご注意下さい。芝生に凹凸が生じますので簡単に見つかりますが、対応が遅れますと持ち上がった部分の芝が枯れてしまうこともあります。
  凍上箇所が見つかりましたら、霜柱の解けるのを待ってから板などで平らに押し戻しておきます。もちろん足で踏みつけても戻せますが、芝生に凹凸ができやすいのであまりお勧めはできません。また、全ての霜柱が必ずしも目視できるほどに成長するとは限りません。目立たない程度の小さな凹凸もできているはずですので、春になりましたら一度、芝生全体を転圧して平らに均しておくとよいでしょう。

7)除雪
 これも冬特有の問題です。根雪になるような地域ならば必要ありませんが、年に数回しか降雪のない地域では除雪をすべきかどうかが問題となります。特に除雪作業をしなくても芝自体はそれ程影響は受けませんが、芝生というのは地面と雪とが接触しないために地熱が伝わらず、いつまでも雪が解けないという特徴があります。ですから、もし可能ならば早めに除雪してしまった方がよいでしょう。特に保温シートをかけて緑を維持しているような場合は早めの除雪をお勧めいたします。

 以上、冬のメンテナンスの要点をご紹介しましたが、冬季は保温シートの掛け外しの手間はあるものの特に刈込みや水やり作業に追われることもなく、また寒冷地を除けば重大な病害虫の発生も少ないため、夏に比べれば遥かに管理が楽だと言えるでしょう。しかし、西洋芝はノシバなどのように完全には休眠しないため、これまでご紹介したような西洋芝ならではの問題も発生いたします。気を緩めずに、本メールや当社のHP、お手元の手引書などを参考にして、適切な冬場の西洋芝管理を実践してください。そして、今年初めて冬を迎えられたお客様には、お住まいの地域の気候条件とご自宅の芝生の環境条件に合ったご自分なりの冬季の管理方法を併せて模索、検討していただくようお願いいたします。シート掛け等の管理の手間とご自分の期待する芝生の緑度との妥協点がうまく見つかれば、来冬の管理は一層やさしくなるはずです。
 最後に、会員各位が無事に冬越しされ、万全の状態で春を迎えられることを祈念しております。



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