ゴルフ場が構造不況業種と呼ばれ続けて数年が経ちますが、ゴルフ場の売上げ減少の傾向は、まだ底の見えないのが現状のようです。そうした中で、ゴルフ場の生き残り策として、売上げ増を目指しながらも、経費を最小限に削減するということが否応無しに求められてきています。
しかしながら、売上げ増が非常に難しいという現実が片方にあり、経費の削減をどこに求めるかということが、ゴルフ場経営の中での最大の要点となっているようです。ゴルフ場の経費削減では、芝草管理費も当然のことながら対象となるわけですが、管理費の削減はゴルフコースそのものの品質の低下という問題が伴ってきます。このコース管理費をどのようにしたら削減でき、また、削減によってどのような問題が発生するかについて考えてみたいと思います。
まず、コスト削減に当たって何よりも大切なことは、コース管理の現状を正しく把握することです。これには、コースの状態診断は勿論のこと、人件費、資材費等の各費用項目別の詳細な分析や、コースの土壌条件、地形、芝草の種類等、管理コストに関わる各種データの分析なども含まれます。
それら各項目を種々検討、分析した後、はじめてコース管理コストの見直しに入ります。こうした資料の収集と検討が十分でなければ、従来のコース管理における無駄な部分の指摘ができず、削減の方策を立案することも困難になります。
コース管理費用の削減に当たっては、例えば10%とか20%の金額削減の提示があったとしても、どの部分を削り、そのためにどの程度の品質の低下が予測されるかについて検討されなければなりません。つまり、ここならば削れる、またこの部分だけは絶対に減らせない、というところが必ずあるはずで、そこをうまく見つけ出すことが最も大切なのです。こうした作業が適切に行われていなければ、どの部分にメスを入れるかという判断は難しいわけで、全ての経費を10%とか20%減らすという単純な問題ではありません。
こうした検討もされないまま費用額だけを低く抑えるという方法では、必ずやそのしわ寄せが管理品質の著しい低下という形で現れることになり、最終的には経費の無駄使いにもなってしまいます。
ゴルフコースの芝草管理にとって、見た目の美しさという要素は非常に大切なことです。しかし、当然のことながら、管理費の削減が限度を超えてしまいますと、ゴルフコースの品質低下が起きてきます。こうした場面では、管理をする側の能力やセンスといったものがいつも以上に問われることになり、その有無や良し悪しがコースの見た目を大きく左右してしまいます。経費削減を行いつつも、コース品質の低下が見られないような管理がなされた場合、これは管理者の優れたセンスと高い技術による成果として高く評価されて然るべきです。
ゴルフコースの品質の内で最も重要性が高いものは、やはりグリーンのパッティングクオリティーということになります。ティグラウンド、フェアウェイが100%の品質であっても、グリーンがレベル以下であっては、ゴルフコーストータルの品質もレベル以下と言わざるを得ません。特に近年、アマチュアゴルファーのグリーンの品質に対する評価にはかなり厳しいものがあり、しかも評判はすぐに他のゴルファーにも伝わりますから、例え大幅な費用削減を行ったにせよ、グリーンの品質には充分に配慮しなければいけません。
あるゴルフ場のコース全体の評価が10段階中、6の評価であるとした場合、ラフの評価が9、ティグラウンドが2といった評価が出たとすれば、これはバランスの良い管理(経費の使い方)とは言えなくなります。
確かに、地形がフラットであったり、樹木が少なかったりしますと、機械力をフルに発揮できますので、少ない人数で効率良く管理が行え、全体的なバランスの取れた美しいコースとなりますが、日本ではそのようなコースはほんの僅かで、大部分のコースがそれぞれに固有の悩みや問題を抱えているようです。ですから、こうしたコースでは、全体のバランスを取るためにも、コース事情に合わせた経費配分を考えることが重要となります。例えば、ゴルフコースの地形、土壌条件、気象条件によって、人件費がどうしても大きく削れない場合や、グリーンの床土が悪いために各種の病害や種々の障害が発生する場合などは、費用をそこに集中的に配分することにより、ゴルフコース全体のバランスを保つことが必要になります。
コスト削減を進めるに当たっては、管理技術の向上が極めて大きな要素であり、最後はこの一言に尽きるとも言えます。
日本のグリーンキーパーの技術は、20年前位から見ると明らかに向上してきており、アメリカのゴルフコースの管理状態などを見ても、同じ条件ならば日本のキーパーの方が優れているのでは、とさえ思います。しかしながらこれは、これまでがある程度経費的に恵まれた環境にあったからであって、今日のようなコスト削減を主眼としたコース管理については、ほとんどのキーパーが未経験であるはずです。現在、彼らには新たな発想への転換と種々の面での更なる技術力の向上が求められてきており、それらの達成なくしては、管理コストの削減はできたにせよ、結果は決して良いものにはならないはずです。
今日のゴルフコースの芝草管理には、人的資源の有効利用から目土に使われる砂の選択まで、実に幅広い技術と経験が要求されており、また、それら全てが管理コストに直に関わってきています。ベテランキーパーが持つ長い年月を経た様々な経験と技術の価値は計り知れないほどですが、例えキーパー個人の技術が完璧なものであっても、実際に作業をする一人一人の技術がそれに伴わなくては、決して100%の力は発揮できません。当然、グリーンキーパーの指図を100%理解した上での作業と、指示されただけの作業を実行するのとでは、結果に大きな開きが生じてきます。つまり、グリーンキーパーは自身の知識向上に努めることは勿論のこと、それらの知識を作業員全員に伝え、正しく理解させることにも鋭意努力しなければならないのです。
また、コスト削減のためには、10人の作業員が15人分の働きをすることも必要でしょう。ただし、これは10人が1.5倍の時間を働くことでも、各人の負担が1.5倍になるということでもありません。これはすなわち、一人一人が明確な意識と正しい知識を持って作業することにより、従来の1.5倍の作業効率を達成するということなのです。それには、作業員全員の機械操作等のテクニック向上は勿論ですが、芝草に対する知識の向上も不可欠です。
このように、真のコスト削減を達成するには、グリーンキーパーのみならず、管理者全員の意識の向上と持続的な努力が必要なのですが、もしこれらが完全に実行できれば、「コースの品質を落とさずにコストを削減する」という理想は決して不可能ではなくなるはずです。
常に大きなテーマとなる人件費は、管理費の中でも比重が大きく、この削減は重要課題ですが、明らかな品質低下を抑えながら、最大の削減をすることがポイントになります。例えば、人員を15人から10人に減らした場合、5人分の労働力が減るわけですから、その不足分を何らかの方法でカバーし、品質の低下を防がなくてはなりません。しかも、当然のことながら、費用のなるべくかからない方法を選ばなくてはならないわけです。そこで、人件費削減については、常勤の社員数を極力抑えた上で、不足分を他の手段、例えばパートや人材派遣の利用などに求めることが基本的な考え方になってきます。
労力の配分から見て、コース管理の中でウエイトの高い作業は、グリーンの刈込みとラフの刈込み、そして冬期のグリーンカバー掛けなどです。つまり、この三つを他の何らかの方法に頼ることで、従来よりも安く、しかも品質を落とさずに実施できれば、人件費の削減は大成功と言えるでしょう。
ラフの刈込みについては単純作業ということもあり、さらにシーズンも限られていることから、他の方法に頼ることも比較的容易なのですが、グリーンの刈込みと冬期のカーバー掛けは早朝や夕方遅くの作業であるため、その解決は非常に難しいのが実情です。
ラフの刈込み作業を減らす手段としては、ラフの芝草の生育を抑えることが考えられます。これには、肥料の施用を減じることと生育調節剤の利用が考えられます。しかし、両者ともにある程度の効果はありますが、同時にマイナスの影響もあります。例えば、肥料の減少は雑草の発生や病害発生、芝草の回復力低下といった新たな問題を抱えることになります。削減手段の選択に当たっては、こうしたプラス面とマイナス面、双方の兼ね合いを考えて、慎重に決定する必要があります。
グリーンの刈込みについては作業員の技術的な問題もあり、これもよく人員削減の障害として指摘されますが、これは毎日行う作業ということもあって、ある程度の手間と時間をかければ、パートやその他の手段で置き換えられる可能性はあります。
人件費が全コストに占める割合を落とすための大きな要素として、機械力によって作業効率を上げることが考えられます。また、これがコスト削減に大きく寄与することも事実です。しかしながら、日本の夏の気候条件である高温多湿を考えれば、大型機械導入のマイナス面についても充分に考慮しなければなりません。
機械力導入に当たって問題になるのは、ラフの刈込みにどのような機械が使えるかということです。ゴルフコースの造形によっては、傾斜地のラフ面積が大きかったり、植栽樹木が多いために刈込み作業の能率が極端に低下したりする問題が生じます。後者の場合には、やはり樹木の間伐が必要でしょう。そうすることで、目に見えて作業能率はアップしますし、周囲の樹木や芝草の生育が改善されるという効果も期待できます。
さらに大きな問題点として、機械そのもののメンテナンスが充分に行えているかどうか、という問題があります。特に近年のコース管理は機械力に頼る部分が多くなり、何れの管理事務所にも各種の機械が数多く配備されております。それだけに、芝草管理の中における機械メンテナンスの比重も大きくなってきています。
機械の寿命はメンテナンスの良否によって大きく左右されるもので、3年で駄目にしてしまうこともあれば、消耗部品の交換のみで10年以上使用できることもあります。当然、その差は管理コストにも大きく反映されるわけで、いずれはメンテナンスの人件費をカバーするのに充分な程のコストの差になってきます。このように、10年単位でコース管理を考える場合、機械の寿命をいかに延ばすかが、コスト削減を図る上での大きな課題になるのです。
ゴルフコース管理で使用する主な資材として、肥料、農薬、砂の3種類が挙げられますが、それらをいかに有効に利用するかが、コストを削減する上でも、また高い品質の芝草を維持する上でも大切なことです。そのためには、まず各種資材の徹底した研究が必要です。
例えば一昨年、散布薬量が微量で、残効期間が長く、しかも殺菌スペクトラムが広いという新しい殺菌剤が認可されて話題になりましたが、そうした優れた薬剤を使用すれば、散布回数や所要時間を従来よりも大幅に減らすことができるわけですから、良いことずくめのように思われます。しかし、それだけに1回の作業が大変重要となり、散布のタイミングや散布精度の良し悪しで、結果に大きな違いが出ることにもなります。つまり、こうした優れた薬剤の出現により、散布の技術自体が従来の数倍の価値を持つようになったわけです。
また、砂の利用については、性質の違いを見分け、最適な砂を選択する目を持つことが重要となります。この技術の有無が、10年という長い単位で考えると非常に大きな差になってきます。しかも、予算の許す範囲で最適なものを選ばなければならないわけですから、予算が限られてくればくるほど選択が難しくなり、それだけ高い技術が要求されてくると言えます。
現在、各種業界におけるコスト削減の一つの大きな目玉として、アウトソーシングと呼ばれる業務の外注化が盛んに取り上げられています。実際、ゴルフ場業界においても、コース管理部門の全面的な外注化を図るゴルフ場が数多く登場してきています。以下に、そうしたコース管理の外注化がもたらす利点をいくつか挙げてみます。
ゴルフ場は経費全体に占める人件費の割合が高いため、各種の福利厚生や退職金などは決して無視できない問題となっています。コース管理の全面的な外注化は、ゴルフ場側の雇用人数を大幅に削減することにつながり、ゴルフ場全体の負担軽減というメリットをもたらします。
先述のように、グリーンキーパーや作業員の技術力不足は、今後のコスト削減と品質低下の抑制を両立する上での大きな障害となります。ただ、この問題は非常に複雑でデリケートな部分を含むため、もし、この問題に直面したとしても、改善に長期間を要したり、改善が困難だったりすることの方が多いようです。これはある面で致し方ないわけですが、この解決策として、ゴルフ場側がコース管理の外注という方法を決断することも少なくないようです。
ゴルフ場がコース管理を外注する場合に最も大切なことは、委託業者の選定です。外注に当たってゴルフ場が委託業者に要求する事項として、
などがありますが、これらの要求全てが満たされるかどうかは、委託業者の技術力次第です。
豊かな経験と優れた技術を持つ業者であれば、従来よりも管理費を抑えつつ、より良質のコース管理を提供してくれるでしょうし、作業員の雇用問題についても、両者協議の上、ほぼ満足のいく結果が得られるはずです。
また、優れた専門業者であれば、常にいくつかの管理を請け負っておりますので、日々の業務の中で蓄積された技術的なノウハウはおそらく膨大なものになっているはずです。コース管理を外注することにより、そうしたノウハウが活用できるわけですから、ゴルフ場にとっても大きなプラスになると思います。
これまで、コース管理コストの削減方法について綿々と述べてきましたが、コース管理を全面的に外注することにより、こうした面倒な問題を全て専門の業者に任せることができます。しかも、年間の契約額を希望する金額で合意できれば、その時点でコスト削減は100%達成できたことになります。
もちろん、初年度はどのような結果になるか不安はあるでしょう。しかし、多くの実績を持つ信頼できる専門業者であれば、全面的に任せてしまった方がかえって良い結果になるようです。後は、両者がどれだけ信頼を深められるかでしょう。
以上、コース管理におけるコスト削減の考え方とそれに伴う様々な問題を考えてみましたが、何れにしましても、現在のような不況期にあっては、コストを最小限に抑えるコース管理が最優先に求められていることは事実です。また、これを避けては、ゴルフ場の存続そのものが厳しい時代になってしまったことも確かでしょう。
当社は30年を超える芝草専門会社としての歴史と実績があり、特にコース管理業務については、当社の有する経験と技術が最も有効に発揮できる場であると考えております。もし、読者諸賢の中に、コース管理の外注化等をお考えの方がいらっしゃいましたら、是非とも当社にご相談いただきたいと思います。
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