芝生の情報

芝生の種類、芝生の張芝手順や管理方法に関する情報

あなたにもできる!西洋芝の管理

はじめに

近年、わが国でもゴルフ場やサッカー場、テーマパーク、結婚式場などを中心に、ベントグラスやケンタッキーブルーグラス、トールフェスクといった寒地型の西洋芝(注1)が広く利用されるようになりました。
これらの芝は元来、寒冷地に生育する芝であるため寒さに強く、日本に自生するノシバやコウライシバと違って、冬になっても白く枯れてしまうことがありません(注2)。しかも、春や秋の生育盛期には輝くほどの緑鮮やかな芝生になりますので、私たち日本人の目にはまるで夢のような美しい芝に映ることでしょう。
おそらくこのページをご覧いただいている方の多くが、テレビに映る青々とした西洋芝の芝生を見て、「自宅の庭をあのような緑鮮やかな芝生にできたら……」と思われたことがあるはずです。
実際、当社が西洋芝のソッド(注3)を販売する通販サイト「イーシバフ」を開設して以来、一般のお客様からも数多くのご質問やご相談、ご注文をお受けするようになりました。しかも昨今は、当社の西洋芝ソッド以外にもネット経由で西洋芝の種子を簡単に手に入れられるようになったため、一般の芝生愛好家にとって西洋芝がより身近なものになってきたことは間違いありません。
このことは、日本で西洋芝が珍しかった時代から西洋芝ソッドの生産、販売、普及に努めてきた当社としては誠に喜ばしいことだと思っております。

ただ、その気になれば簡単に西洋芝を入手でき、自宅の庭に張ることができる時代になったとはいえ、西洋芝自体の性質が大きく変化した訳ではありません。
今では九州のゴルフ場でもベントグラスのグリーンを楽しめるまでになりましたが、これも決して西洋芝が暑さや病気に強くなった訳ではなく、単にわが国の芝草管理者の技術レベルが向上するとともに、優れた資材や管理機械が開発されたからにすぎません。また、インターネットの普及は西洋芝に関する情報量を間違いなく増やしてはくれましたが、それでもやはり西洋芝の夏越しが難しいことに変わりはありません。
西洋芝ソッドをインターネットを通じて販売する当社としては、こうした事実を一般の芝生愛好家にお伝えすることも大切な責務の一つであると考えます。

ここでは「あなたにもできる!西洋芝の管理」と銘打って、寒地型の西洋芝に挑戦するお客様のために、寒地型西洋芝の管理方法の概要をご紹介しております。
ただ、ここに書かれているのはあくまで概略程度のことだけで、これだけ読めば十分というものではありません。
なにしろ、芝生管理の中でも寒地型西洋芝の管理は難易度が高く、とてもその全てをご説明できるものではありません。
ですから、ここでは西洋芝に挑戦されるお客様の「一助」となることを目標に、基本的なポイントだけに絞ってご紹介させていただきます。どうかその旨を十分ご理解いただいた上で、当ページをお読みいただきますようお願い申し上げます。

最後に重ねて申し上げますが、寒冷地以外の地域で西洋芝を育て、美しい芝生を維持するということは決して容易なことではありません。
日本芝の管理に習熟した方にとっても、勇気と覚悟を必要とする大きな「挑戦」となるはずです。ただ、その挑戦は誰もが必ず失敗するというほど無謀なものではありません。
西洋芝管理についての正しい知識を持ち、西洋芝への深い愛情と惜しまぬ努力をもって臨めば、成功することも十分にありうるものなのです。
実際に、当社のお客様で何度も夏越しに成功し、見事なまでに管理されている方もいらっしゃいます。ただ、あくまで「挑戦」である以上、それなりのリスクは覚悟しなければなりません。
慣れない内は失敗することもあるでしょう。しかし、芝生を愛する人にとって、西洋芝ほど挑戦し甲斐のある芝生はないと思います。
もし緑鮮やかな西洋芝に憧れをお持ちであるのならば、このページを参考に西洋芝の管理にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
きっと、“あなたにもできる”はずです。

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1.芝生の刈り込み

1)刈り込み機械(芝刈り機など)について
<芝刈り機について>
芝刈り機(モア)には、大きく分けてプロペラ式回転刃のロータリーモアと回転巻刃タイプのリールモア(写真1)があります。両者の主な違いは芝を刈る方式(刈り刃の構造)で、例えて言うならば、前者のロータリーモアは芝を鎌で刈り払うようなイメージ、後者のリールモアは芝をハサミで切るようなイメージになるでしょうか。そうした違いから、両者にはそれぞれ適した用途があり、ロータリーモアは主に緑地や公園などやや粗放的な管理を行う芝生を能率よく刈る場合などに、リールモアは美しい刈り上がりが求められる高品質な芝生を刈る場合や、ゴルフ場のグリーンのように非常に低い刈り高で刈る必要がある場合などに使用されます。一般にお庭の芝生は美観重視となりますので、リール式のモアが適していると言えます。
特 長 用 途 駆動方式
ロータリーモア 高刈りが可能(機種によっては50mm以上も可能)
作業能率が高い
緑地や公園等の芝生、ゴルフ場のラフなど エンジン
モーター
リールモア 低刈りが可能(機種によっては5mm以下も可能)
刈カスの回収が可能(集草バケットを装着した場合)
刈り込みの精度が高い
刈り上がりが美しい
排水性・通気性に優れた土壌(砂質土壌)を好む 手動
モーター
バッテリー
エンジン
注)芝刈り機は機種によって設定できる刈り高の幅が異なりますので、購入する場合には必ず設定可能な刈り高の値と調整範囲を確認してください。一般には、細かく調整できる機種ほど価格も高くなるようですが、芝刈り機は最も頻繁に使用する機械ですので、ご予算の許す限り高性能な機種をご購入ください。
<お庭にゴルフ場のグリーンを作りたいとお考えの方へ>
「自宅の庭にゴルフ場と同じグリーンを作って、思う存分、パットの練習ができたらなぁ……」

そうした想いから当社のベントグラスの購入を検討されるお客様も少なくないようです。確かに熱心なゴルフ愛好者ならば一度は夢見ることかも知れません。

もちろん、当社のベントグラスはゴルフ場のグリーンで広く使われているものですので、ゴルフ場と同じような環境で同じようなメンテナンスを行えば、ゴルフ場のグリーンと同じレベルの芝生にまで仕上げることは可能です。しかしながら、その場合には、ゴルフ場のグリーンで使用するモア(グリーンモア)と同程度の低刈り性能を持つ芝刈り機が必要になってきます。そうした機種は高性能である分、大変高価でもありますし、その性能を維持するには日常的なメンテナンスも必要になります。また、業務用の高性能なモアは通常、エンジン駆動タイプですので、作業時のエンジン音にも注意する必要があります。特に住宅地で使用する場合には作業時の大きなエンジン音は騒音問題にもなりかねません。購入を検討される際には、購入金額だけでなく、販売業者側のサポート体制や購入後のメンテナンス費用、使用時に発生する音の問題なども含めて、慎重にご検討いただくことをお勧めいたします。

なお、市販されているリールモアにはエンジンよりも静かなバッテリーやモーターで駆動する機種もあるようです。そうした機種で低刈り(5mm前後)可能なものがあれば、そちらを検討してみてはいかがでしょうか。
注)高性能なモアを購入すれば、取りあえずグリーンと同じような刈り高で芝生を刈ることはできますが、問題はその後です。ゴルフ場のグリーンのような芝生を維持するには、やはり、ゴルフ場のグリーンに近い高度な管理をしなければなりません。高価な芝刈り機を購入する前に、芝生造成後の十分なメンテナンスが可能かどうかをご検討ください。
<小面積の芝生や縁石付近の刈り込み>
小面積の芝生や庭のコーナー部分、樹木や縁石等の周りなどは、芝刈り機ではうまく刈れませんので、刈り込みバサミ(写真2)や電動バリカン(写真3)などを使用します。
写真1.電動式リールモア

写真1.電動式リールモア

写真2.刈り込みバサミ

写真2.刈り込みバサミ

写真3.電動バリカン

写真3.電動バリカン

2)リールモアによる刈り込みの方法
  1. 1.刈り込みを始める前に、芝生の上に小石や枯れ枝、金属類などが落ちていないかを確認し、もしあれば全て取り除きます。
  2. 2.芝刈り機を取り出し、設定されている刈り高を確認します。刈り高は芝生の状態を大きく左右しますので、芝生の種類、用途、状態に合わせて適切な刈り高を設定します。当社の西洋芝における刈り高の目安は以下の通りです。
芝生の刈り高の目安
ベントグラス<ゴルフ場グリーン並み> 5mm前後
ベントグラス<芝庭用、観賞用、装飾用> 10mm~15mm
ビバターフ(ケンタッキーブルーグラス) 25mm~30mm
ジョイターフ (トールフェスク、ケンタッキーブルーグラス混合) 30mm~35mm
注)上記はあくまで芝の生育と芝生としての美観を考慮して当社で設定した一つの目安です。上記の数値よりも低くすることはお勧めできませんが、高くすることは可能です。刈り高を高くしますと芝はより丈夫になりますので、芝の生育が良くない(芝が弱っている)場合や夏越しが不安な場合には上記の目安よりも高い刈り高をお勧めします。
  1. 3.刈り刃の状態を確認したら集草バケットを芝刈り機に取り付けます。
  2. 4.芝生の端から刈り込みを始めます。少し刈ったところで、きちんと刈れているか、刈り高は適切か、刈りかすはバケットに収まっているかを確認します。問題がなければそのまま真っ直ぐに刈って行きます。
  3. 5.芝生の突き当たりまで刈ったら、芝刈り機の刃を浮かしながら(刈り刃の回転を停止できる機種では回転を止めます)芝生の外へ出し、芝刈り機を反対方向にターンさせます。芝生外に出せない場合には芝生内でターンを行いますが、くれぐれも芝を傷つけないよう注意して行ってください。
  4. 6.先ほど刈り込んだラインの端と数cm重なるように芝刈り機の位置を合わせ、逆方向に真っ直ぐ刈り込んで行きます。この時に先のラインと平行になるようにし、重なる幅を一定に保つようにして下さい。慣れない内は難しいでしょうが、上達してくるときれいに揃うようになってきます。
  5. 7.上記の作業を繰り返して芝生全面を刈り込みます。より美しく仕上げるのであれば、刈ったラインとクロスする方向での刈り込みを再度行います。
  6. 8.一通り刈り込みが終了しましたら、刈り残し部分がないかを確認します。特に芝生内でターンした場合には芝生の外周付近に刈り残しが生じやすいので要注意です。刈り残しがあればその部分を再度刈り込みます。
  7. 9.芝生全面をムラ無く刈り込めたことが確認できましたら、集草バケット内の刈りカスを処分し、芝刈り機を掃除します。刈り刃の部分は特に汚れやすいので丁寧に掃除しておきます。もし刃の切れ味が鈍いようであれば、次回使用する時までに刈り刃を研磨しておきましょう。なお、芝刈り機の刈り刃は鋭利な刃物と同じで非常に危険です。芝刈り機の掃除や整備を行う場合にはくれぐれも刈り刃で指などを切らないよう注意してください。
注)上記の手順は手動式リールモアを使用した場合を想定したものです。モーターやエンジンで駆動するタイプのモアを使用する場合、芝生を刈る時以外は必ず刈り刃の回転を停止しておきましょう。
<補足事項>
・芝の生育が安定している場合、刈り高はできるだけ一定にしてください。もし刈り高を下げる場合には、春先や秋口といった芝生の状態の良い時期を選び、数mm単位で少しずつ下げてください(グリーン並みの刈り高の場合には0.5~1mm単位で下げます)。急激に刈り高を下げますと芝の成長点を刈ってしまい(軸刈りといいます)、大きなダメージを与えてしまします。芝生が黄化したり、最悪の場合、枯死してしまうこともありますのでくれぐれもご注意ください。
※暖地で夏越しが心配な方は、上記の目安にこだわらず、気温が高くなったら刈り高を上げてください。それだけでも夏越しできる可能性は随分と高まるはずです。

・寒地型の西洋芝の場合、気温が15~25℃の時に最も生育が活発になります。芝の成長が盛んになりましたら、出来る限り頻繁に刈り込んでください。芝が伸びてから刈り込むというのではなく、間隔を決めて定期的に刈り込むと良いでしょう。

・刈り込みを行う頻度は年間管理計画内の刈り込み回数を参考にしてください。寒地型西洋芝の場合ですと、成長期間中はどの芝種であっても最低、週に1回は刈り込みが必要です(生育盛期は週2回以上必要です)。※ベントグラスの芝生をゴルフ場のグリーンのような状態に維持する場合には、ほぼ毎日刈り込みを行います。

・芝が伸びすぎたからといって一気に刈り込んだのでは軸刈り(葉先だけでなく茎まで刈ってしまうこと)となり、芝生を傷めてしまいます。一旦長く伸ばしてしまった芝は徐々に下げるしかありません。それゆえ、いかに頻繁に刈れるか(芝を伸ばしすぎないか)が刈り込み作業を適切に行う上での大切なポイントになります。

・一度に刈り込めるのはその時の芝の高さの2/3までです。つまり、60mmにまで伸びた芝を刈り下げるのであれば刈り高が40mm以上ならOK、それ以下に低く刈るのはNGということです。よって、もし刈り高30mmが上限の芝刈り機を使用しているのであれば、芝の高さが45mmになる前に刈り込む必要がある、ということになります。もちろん、これを厳守しなかったら直ちに芝が枯れるというわけではありませんが、刈り高の変更や刈り込みのタイミングを判断する上で非常に重要な目安となりますので、是非とも覚えておきましょう。

・ロータリーモアを使用して刈り込みを行った場合、芝生の上に多量の刈りかすが残ります。そのまま放置しますと美観を損なうばかりか、後々サッチ層となって芝の生育にも悪影響を及ぼすことになります。刈り込み後はホウキ等を使って刈りかすを取り除いておきましょう。集めた刈りかすについてはお住まいの地域のルールに従って適切に処分してください。(写真4-6)
写真1.電動式リールモア
写真2.刈り込みバサミ
写真3.電動バリカン
写真4-6.刈りかすは集めて適切に処分してください。

・芝刈り機を水洗いした場合には十分に乾かしてから収納してください。特に刈り刃の部分は錆びやすいので、乾かした後に防錆潤滑剤などをスプレーしておくことをお勧めします。詳しいお手入れ方法については芝刈り機の取扱説明書をご参照ください。

・芝刈り機の刃は使用するごとに少しずつ摩耗し、切れ味も悪くなって行きます。切れ味の鈍い刃で刈り込みを続けますと芝の葉先を「切る」のではなく「引きちぎる」ようになり、芝に大きなダメージを与えてしまいます。刈り込みを行う際には常に刃の切れ味に注意し、少しでも切れ味が落ちたと感じたら刃の研磨(ラッピング)を行ってください。詳しい研磨方法等については芝刈り機の取扱説明書をご参照ください。
写真3.電動バリカン
写真7.手動式リールモアと集草バケット
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2.芝生の施肥(肥料散布)

1)肥料散布に必要な器具
<粒状肥料を散布する場合>

粒状の固形肥料を散布するために必要となる機具は以下の通りです。

なお、肥料散布のための機械として肥料散布機(散粒機、スプレッダー)が販売されておりますが、小面積の芝生の場合には手撒きでも差し支えありません。肥料散布機の使用は芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合などにお勧めいたします。

  • ・家庭用はかり:粒状肥料を計量するために使用します。
  • ・小型のバケツ、ポリ袋など:粒状肥料を手撒きする場合に使用します。大面積の場合には下記の肥料散布機をお勧めします。
  • ・肥料散布機:粒状肥料を散布するための機具です。大面積の芝生に散布する場合に必要になります。
<補足事項>
  • ・肥料散布機にはハンディータイプの手動式のものや手押し式のもの、電動式のものなど様々な種類があります。芝生の広さに合わせて適切な機種をお選びください。
  • ・大面積の芝生に肥料を手撒きする場合には、できるだけ均一に撒けるよういくつかの区画に区切って散布することをお勧めします。その際には、重複して散布しないよう水糸などで目印を付けておきましょう。
<液体肥料を散布する場合>
  • ・噴霧器 または ジョウロ:希釈した液体肥料を散布するために使用します。
  • ・計量カップ と ピペット:液体肥料や水を計量するために使用します。キャップに計量用の目盛りが付いている場合もあります。
  • ・バケツ:液体肥料を水で希釈する際に使用します。
  • ・撹拌棒(かくはんぼう):液体肥料と水を混ぜるために使用します。液体をかき混ぜられるものであれば何でも結構です。
<補足事項>
  • ・使用する器具は念のため使用前に十分に洗浄しておきましょう。特に薬剤散布に使用した後などは丁寧に洗浄してください。
  • ・噴霧器のノズルやジョウロのハス口をよく洗浄し、目詰まりがないことを確認しておきましょう。
  • ・芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合にはジョウロでなく噴霧器の使用をお勧めいたします。
2)肥料の種類と施用量

芝生に使用する肥料としてお勧めするのは、粒状の化成肥料と液体肥料です。その中でも特に粒の小さな粒状肥料は芝生の奧深くまで入りやすいため葉焼けしにくく、肥料ムラも少なくなるため、芝生用肥料として適しています。

粒状の化成肥料には成分の多少によって、高度化成(成分量の多い化成肥料)と普通化成(成分量の少ない化成肥料)とがありますが、特別な意図でもない限り、成分の少ない普通化成を使用した方がよいでしょう。芝生への肥料散布で最も恐ろしい失敗は、肥料の与えすぎと肥料焼け(肥料成分の濃度が高すぎて肥料が付着した箇所が変色したり枯れてしまう症状のこと)です。高度化成を使用した場合、それらのリスクが普通化成に比べて高くなります。普通化成であれば、多少のミスも許容されるところがあるので、不慣れな内は普通化成を使用すべきでしょう。

また、肥料は効果の現れる速さによって、速効性肥料と緩効性肥料とに分けられます。速効性肥料は施用すると早期に効果が現れますが、その分、早く効果が切れてしまいます。緩効性肥料は速効性ほどすぐに効くわけではありませんが、じわじわと長く効いてくれるので頻繁に肥料散布を行う必要がありません。よって、お庭の芝生に撒くのであれば、断然、後者の緩効性肥料がお手軽でお勧めということになります。

液体肥料(液肥)も使用時期などによっては大変有用な肥料です。液肥の良さは、水で薄めて散布するため自在に施用量を調整できることや肥料ムラが生じにくいこと、芝が弱って根から養分を吸収しにくくなった場合でも微量とは言え葉面から吸収させることができること(葉面散布用の肥料もあります)などがあります。ただ、液体であるため保肥力の低い土壌では肥料成分が失われやすく、効果の持続性という点では固形肥料には敵いません。芝生の場合にはあくまで使用目的が明確な場合に使用する補助的な肥料だとご理解ください。

上記以外にも、堆肥などを含む有機質肥料、中量要素や微量要素を含む肥料、土壌の酸度調整を兼ねた肥料など様々な肥料があり、それぞれに特徴を持っています。芝生を長く管理していますとそれらを必要とする場合も起こりうるはずですが、基本的には、窒素(N)、リン酸(P)、カリ(K)という三大要素を含む細粒の普通化成肥料で緩効性のものを選び、それを中心とした施肥プログラムを考えてみることをお勧めいたします。その上で、芝生管理の経験と知識を深めながら、ご自分の芝生に合った施肥プログラムを作成し、適宜、改良していくことをお勧めいたします。

<補足事項>
  • ・一口に肥料と言っても実に多くの種類があり、それぞれに形状や化学的な性質、成分の種類、成分量、効果の出方などが異なります。したがって、まずは基本的な肥料の種類と特徴、成分表の見方などを学習しておくことが大切です。そうした基本的な知識を持っていれば、園芸店に並ぶ多くの肥料から適した肥料を選べるようになりますし、誤った施用の仕方をして芝にダメージを与えたり、無駄な肥料を撒いてしまうことなどもなくなるはずです。
  • ・肥料はいろいろな分類の仕方があるため、正確な名称(呼び方)を覚えるのはかなり厄介かも知れません。ただ、実際に肥料を購入したり、使用したりする場合に知っておくべき名称はそれ程多くはありません。基本的には、無機肥料と有機肥料の区別や、固形肥料と液体肥料の区別、化学肥料(化学的に合成された無機肥料)に含まれる単肥、複合肥料、化成肥料の区別、化成肥料の含有成分量による普通化成と高度化成の区別、効果の速さの違いによる速効性肥料と緩効性肥料の区別、などが理解できれば十分でしょう。あとは種類毎の特徴や性質などを理解することで肥料の使い方が分かってくるかと思います。
  • ・理想的な施肥とは、土壌分析結果などの科学的データに基づき、数ある肥料の中から最も適切な肥料を選び、適切なタイミングと方法で適切な量を施用することだと言えますが、しかしながら、家庭園芸においてそのような理想的な施肥を行うことは実質、不可能ではないでしょうか。まずは下記に示した施肥モデルを参考に一つのプログラムを試し、芝生の反応を見ながら、少しずつ修正、改良していくのが最も実用的だと思います。
3)施肥量の目安

以下に粒状の化成肥料と液肥を使用した場合の施肥プログラムの一例(北関東辺りの気候を想定したもの)をご紹介します。(注:表中の「粒状」とは粒状化成肥料のこと、「液肥」とは液体肥料のことを示しています)

以下の例では、窒素量にして1年間で20g/m2の施肥が必要となっておりますが、これはあくまで一つの目安で、実際には、お住まいの地域の気候や刈り込みの頻度、芝の種類や生育状態、床土の土質や肥沃度などに合わせて総合的に判断し、上手に調整する必要があります。さすがに経験を積みませんとどの程度加減すべきかの判断は難しいかと思いますが、とりあえずは少量ずつ、芝の伸びる速さや葉色を見ながら施用してみると良いでしょう。とにかく、肥料は一度与えてしまうと後で減らすことができません。足りない分にはいくらでも後で追加できますので、判断に迷ったら少量ずつ、何回かに分けて与えるようにしてください。

なお、下記の施肥プログラムは窒素成分だけを基準としたものですが、芝の健全な生育には窒素以外の成分も必要になります。初級者の段階で使用するのであればN-P-Kの成分比が8-8-8や10-10-10といった水平型の化成肥料(粒状肥料の場合)がお勧めとなりますが、中級、上級を目指すのであれば、N-P-Kの成分比が異なる肥料やカルシウム、マグネシウム(苦土)などの肥料、その他の微量要素肥料、更には葉面散布用肥料や糖類、アミノ酸、サイトカイニンなどを含む生育活性剤なども用意して、芝の生育ステージや生育状態(根の状態)、季節や天候などに応じた使い分けに挑戦してみましょう。

年間の窒素施肥プログラムの一例(単位:g/m2)

(ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、ジョイターフ等)

1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
化成肥料(8-8-8) 0 0 20 35 35 25 10 10 20 40 35 20 250
上記の窒素成分量 0 0 1.6 2.8 2.8 2.0 0.8 0.8 1.6 3.2 2.8 1.6 20
肥料のタイプ 粒状 粒状 粒状 粒状 液肥 液肥 液/粒 粒状 粒状 粒状
4)作業方法

肥料の撒き方として第一に心掛けたいのは、肥料を芝生全体に均一に撒く、ということです。そのためには肥料散布機を使用することが最も簡単かつ確実ですが、小面積の芝生では大袈裟な印象も否めません。手撒きであっても、工夫次第ではかなり均一な散布も可能ですので、ここでは手で粒状肥料を撒く方法について簡単にご紹介いたします。

  1. 1.散布する粒状の化成肥料(できるだけ細粒のもの)、バケツ、はかりなどを準備します。
  2. 2.小面積の芝生であれば一度に撒けますが、芝生が広い場合には複数の区画に分け、水糸を張るなどして目印を設定します。
  3. 3.一区画に散布する肥料の量を計算し、その半分の肥料を計量してバケツ(ポリ袋など)に入れます。
  4. 4.肥料を手に取り、左右に振りながら区分内に均一となるようパラパラと撒いて行きます。この時、体の向きはかえず一方向に移動するようにします(ここでは、仮に南北方向とします)。
  5. 5.つぎに残り半分の肥料を計量し、空いたバケツ(ポリ袋など)に入れます。
  6. 6.今度は上記の移動方向とクロスする方向(ここでは東西方向ということになります)に移動しながら、残りの肥料を均一に撒いて行きます。
  7. 7.複数の区画に分けた場合、残りの区画についても同様の方法で肥料を散布します。
  8. 8.最後に、芝生全体にたっぷりと散水を行います。これにより茎葉の上に残った肥料が芝生の中に落ちると共に、溶け出して芝に吸収されるようになります。
<補足事項>
  • ・肥料焼けを防ぐためにも、散布時の天候や気温には注意が必要です。気温の高い時期の日中などに散布しますと、肥料焼けをおこす危険性が一層高くなります。
    できるだけ気温の低い時間帯(夕方)や曇天の日などに散布するようにしましょう。また、化成肥料の粒が茎葉の上に長く残っていますと肥料焼け(葉焼け)の原因になります。散布後には必ず散水するか、降雨の直前に散布するよう心掛けましょう。
  • ・せっかくの肥料も散布量が多すぎますと芝の徒長(注)をもたらし、かえって芝生の状態を悪化させる原因となります。くれぐれも過剰散布とならないようご注意ください。
    注)徒長(とちょう)とは、窒素過多や日照不足、密度過剰などによって茎葉が充実しないまま伸びすぎて、弱くなることを言います。
写真8.バケツに肥料を移します

写真8.バケツに肥料を移します

写真9.手で満遍なく散布します

写真9.手で満遍なく散布します

写真10.均一に撒きましょう

写真10.均一に撒きましょう

写真11.散布後は散水します

写真11.散布後は散水します

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3.薬剤(殺菌剤・殺虫剤)散布による芝生の病虫害防除

1)病虫害防除の重要性

芝生を維持管理する上でどうしても避けられないトラブルが「病虫害の発生」です。

本来、芝が自然のまま健全に生育していれば病原菌に対する抵抗力も高く、容易には発病しないはずですが、芝生においては常に極端な低刈り状態にあることや踏圧を受けることなどによって、芝の体力は大幅に低下しているものと考えられます。特に寒地型西洋芝の場合には、本来、生育に不適なはずの地域(北海道や本州高冷地以外の地域)でも広く利用されていることもあって、どうしても高温期を中心に芝の体力(抵抗力)が衰え、病気にもかかりやすくなってしまいます。

また、芝生という環境は一部の昆虫にとって産卵に最適な環境となるらしく、自然の豊かな地域ではどこからともなくコガネムシなどの芝生を好む昆虫が飛来しては産卵し、孵化した幼虫が芝の根などを食害することによって芝生に被害をもたらします。

したがって、どのように万全の維持管理を行っていたとしても、早晩、病虫害の発生に見舞われる可能性は高く、日々の観察による早期発見、早期防除はもちろんですが、時には発生時期に予防的に殺菌剤や殺虫剤を散布することも必要な対策だと言えるでしょう。特に、早期発見が難しいであろう西洋芝初心者の方にこそ、こうした予防的散布は有効であると言えます。

以下に寒地型西洋芝が被害を受けやすい病虫害をご紹介いたします。

病害:葉腐病(ブラウンパッチ)、ダラースポット病、ピシウム病、赤焼病、葉枯病、さび病※1、疑似葉腐病(イエローパッチ)など
虫害:コガネムシ幼虫、シバツトガ幼虫※2、カラスによる二次的被害※3など
※1:主にケンタッキーブルーグラスに発生
※2:主にベントグラスに発生
※3:コガネムシ幼虫を補食するために芝生に穴を開ける被害

2)薬剤散布に必要な器具

薬剤を散布するために必要となる器具は以下の通りです。(写真12)

  • ・噴霧器 または ジョウロ:薬剤散布に使用します。
  • ・家庭用はかり:固体の薬剤を使用する場合、計量のために使用します。
  • ・計量カップ または ピペット:液体の薬剤や水を計量するために使用します。キャップに計量用の目盛りが付いている場合もあります。
  • ・バケツ:薬剤を水に溶かす(薄める)ために使用します。
  • ・撹拌棒(かきまぜ棒):水と薬剤をかき混ぜて溶かすために使用します。液体をかき混ぜられるものであれば何でも結構です。
<補足事項>
  • ・噴霧器やジョウロ、バケツなどは念のため使用する前に洗浄しておきましょう。
  • ・噴霧器やジョウロはノズルやフィルターなどに目詰まりがないことを確認しておきましょう。
  • ・芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合にはジョウロでなく噴霧器の使用をお勧めいたします。
写真3.電動バリカン
写真12.必要な資剤と器具を用意します
3)使用する薬剤の準備

散布する薬剤を用意します。一般の園芸店で入手可能な薬剤については「園芸店で購入できる芝生用資材のご紹介」ページをご参照ください。

農薬を購入する際には、必ずラベルの記載内容をよく読んで、使用可能な芝の種類、防除できる病害虫の種類などが正しいかを確認してください。間違った農薬を使用しますと効果がないばかりか、芝生にも大きなダメージを与えることがありますので、くれぐれもご注意下さい。

  • ・殺菌剤:ダコニール1000、ロブラール水和剤、ベンレート水和剤、オーソサイド水和剤80など
  • ・殺虫剤:スミチオン乳剤、オルトラン粒剤、オルトラン水和剤、オフナック乳剤など
  • ・展着剤:ダイン、トクエースなど
<補足事項>
  • ・展着剤とは薬剤を効果的に作用させるための補助剤です。
  • ・農薬には水に薄めて使用するものとそのまま使用するものがあります。また希釈倍率や散布薬量も薬剤ごとに異なります。
  • ・一般の園芸店で入手できる芝生用の農薬は種類が少なく、残念ながら全ての病害虫を防除することは難しいのが実情です。
4)作業手順

ここでは一例として、水に薄めるタイプの殺菌剤(水和剤)と殺虫剤(乳剤)を同時に散布する場合の手順をご紹介いたします。

なお、殺菌剤と殺虫剤の混合散布は手間を省くには良いのですが、規定の散布水量が異なる場合が多く、また、薬剤によっては特定の剤との混合が禁止されている場合もありますので、事前に説明書を良く読んでくれぐれも不適切な散布とならないよう注意して下さい。一般に、殺菌剤は芝の茎葉に薬剤を付着させる必要があるため散布水量は少なめとなり、殺虫剤は土壌中に潜んでいる害虫に薬剤を届かせる必要があるため散布水量は多めとなる傾向があります。

  1. 1.バケツに所要量の水を入れます。
  2. 2.所要量の展着剤を計量し、バケツに入れてよくかき混ぜます。
  3. 3.殺虫剤(乳剤)の規定量を計量カップや目盛付きキャップなどで計り、バケツに入れてよくかき混ぜます。(写真13、14)
  4. 4.殺菌剤(水和剤)の規定量を重量計で計り、バケツに入れてよくかき混ぜます。(写真15、16)
  5. 5.バケツに入れた薬剤の混合液を噴霧器(ジョウロ)に移します。(写真17)
  6. 6.噴霧器(ジョウロ)を使って芝生全体に散布液を“均一に”散布します。(写真18)
  7. 7.作業終了後は使用した道具を全て洗浄しておきます。
<補足事項>
  • ・異なるタイプ(剤型)の農薬を混ぜる場合、混ぜる順番は液剤、乳剤、フロアブル、水和剤の順になります。水に溶けやすいものから順に混ぜるのがコツです。
  • ・散布液が均一に散布されませんと薬剤の効果がばらつきますのでご注意ください。
  • ・芝生面積が広い場合には、施肥と同じくエリアを分けて散布するとよいでしょう。
  • ・病害、虫害とも被害が発生した箇所だけでなく芝生全体に散布しておきましょう。
  • ・風のある日や降雨が予想される日の散布は避けてください。
  • ・作業後は使用した器具に薬剤が残らないよう十分に洗浄して下さい。
  • ・散布に際しては薬剤の使用上の注意をよくお読みになり、手袋、マスク等を着用して行ってください。
写真13.殺虫剤を計量します

写真13.殺虫剤を計量します

写真14.殺虫剤を混ぜて撹拌します

写真14.殺虫剤を混ぜて撹拌します

写真15.殺菌剤を計量します

写真15.殺菌剤を計量します

写真16.殺菌剤を混ぜてよく撹拌します

写真16.殺菌剤を混ぜてよく撹拌します

写真17.散布液をジョウロに移します

写真17.散布液をジョウロに移します

写真18.均一に散布します

写真18.均一に散布します

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4.芝生のエアレーション(通気作業)

1)エアレーションの重要性

一見するとほとんど変化がないように見える芝生も、年々、土壌の固結や枯れた茎葉の堆積が進み、徐々にですが老化してゆきます。それを防ぐために有効な手段が「更新作業」であり、その一つが「エアレーション」と呼ばれる作業です。

一般に、エアレーション作業では、芝生に穴を開け、そこに新しい土壌(砂を用いるのが一般的です)を充填します。この時、芝と土を抜き取る方法とただ単に穴を開けるだけの方法とがあり、前者は更新効果は高いものの作業性の点で劣り、後者は作業性に優れるものの効果の点では前者よりもやや劣る、という違いがあります。

このように効果の違いこそありますが、何れの方法でも土壌の通気性や排水性が改善され、同時に新しい茎葉や根の発生が促されて、芝生の若返り(更新)につながることに変わりはありません。こうした作業を定期的に実施することで、わずかずつではありますが、芝生の老化を防ぎ(遅らせて)、より長期にわたって芝生を健全な状態で維持することが可能になるのです。

現在、ゴルフ場等の芝生が見事なまでに美しく維持できるようになったのは、こうした更新作業の重要性がわが国の芝草管理者に広く知られるようになり、合わせて各種の優れた更新用機械が開発され、広く利用されるようになったからでもあるのです。是非とも、一般の芝生愛好家の方々にもこの作業の重要性についてご理解いただき、ご家庭の芝生管理における定期的な作業として実施していただきたいと思います。

2)エアレーションに必要な機具と資材

エアレーションを実施するために必要となる機具と資材は以下の通りです。

  • ・足踏み式の簡易穴あけ器具:「ローンスパイク」等の名称で販売されています。(写真19)
  • ・ホウキ(竹箒など):抜き取った芝の掃除や目土の擦り込みに使用します。芝を傷めない材質のものをお選びください。
  • ・ちり取り:抜き取った芝の掃除に使用します。
  • ・目土用の土壌(砂):土壌の排水性や通気性を改善したい場合には良質の砂(川砂、洗い砂など)を使用します。
  • ・ショベル、角スコなど:目土の散布に使用します。
  • ・散水器具:目土を擦り込んだ後に使用します。
<補足事項>
  • ・簡易穴あけ器具には刃が中空で芝を抜き取るタイプのものやスパイク状のもの、根きり用になっているものなどがあります。何れのタイプもそれなりに有効ですが、更新作業の効果としてはやはり、芝を抜き取るタイプが最も優れていると言えるでしょう。
  • ・芝を抜き取るタイプのものは刃の部分が中空になっており、芝生に何度か突き刺すことで刃の中に詰まった芝が押し出されるような設計になっています。この時、詰まった芝がスムーズに抜けるかどうかで作業性は大きく違ってきます。
  • ・業務用の刃(タイン)を転用した家庭向け製品も市販されているようです。性能は申し分ないはずですので、ご予算に余裕のある方はご検討ください。
  • ・目土用の土壌には排水性や通気性の改善を期待できる川砂などの良質な砂をお勧めいたします。
  • ・穴あけを行った時が土壌改良や肥料の土中施用のまたとない好機です。床土に何らかの問題がある場合や元肥を入れていなかった場合などは、砂に土壌改良材やリン酸肥料を混ぜて擦り込むと良いでしょう。
3)作業手順

散布する薬剤を用意します。一般の園芸店で入手可能な薬剤については「園芸店で購入できる芝生用資材のご紹介」ページをご参照ください。

農薬を購入する際には、必ずラベルの記載内容をよく読んで、使用可能な芝の種類、防除できる病害虫の種類などが正しいかを確認してください。間違った農薬を使用しますと効果がないばかりか、芝生にも大きなダメージを与えることがありますので、くれぐれもご注意下さい。

  1. 1.用意した足踏み式の器具(ローンスパイク等)を芝生に垂直に立て、体重を掛けて芝生に深く突き刺します。(写真20、21)
  2. 2.上記の作業を繰り返して、芝生全面に穴をあけて行きます。穴の間隔が狭いほど高い効果が得られますが、その分、多くの時間と労力が必要となります。健全な状態にある芝生での定期的作業の場合、5cm程度の間隔で作業すれば十分でしょう。
  3. 3.芝を抜き取るタイプの穴あけを行った場合、抜き取った芝が芝生上に散乱しますので、それをホウキなどで集めて取り除きます。
  4. 4.芝生に満遍なく目土(砂など)を散布し、ホウキで芝生に擦り込みます。特に穴については穴が目土で塞がるまで丁寧に擦り込んでください。
  5. 5.仕上げに散水を行います。開けた穴から土壌深くまで浸透しますので、たっぷりと与えて下さい。目土が不十分だと穴が目立ってきますので、足りない箇所については再度、目土を入れておきます。
  6. 6.目土を入れ直した場合には再度、散水しておきます。
<補足事項>
  • ・排水不良箇所がある場合には、その箇所について集中的に穴あけを行なってください。
  • ・散水後に再度目土をする場合、芝生が濡れた状態ですとうまく擦り込めませんので、芝生が乾いてから行うようにしましょう。
  • ・作業時期としては寒地型西洋芝の生育盛期となる春(晩春~初夏)と秋(初秋~中秋)が適期となります。くれぐれも芝の状態が悪い時や芝の弱る夏期(高温期)には行わないようにしてください。
  • ・寒地型西洋芝の生育は春>秋ですので、年に1回だけ穴あけを行うのであれば春期の施工をお勧めします。
写真19.足踏み式の更新器具

写真19.足踏み式の更新器具

写真20.足で踏みつけます

写真20.足で踏みつけます

写真21.5cm間隔位が目安です

写真21.5cm間隔位が目安です

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5.芝生の目土散布(単独で行う場合)

1)目土(めつち)散布の重要性

目土散布は芝生の更新作業の一つであり、エアレーション同様、長期にわたって芝生の健全な生育を維持するために欠くことのできない大切な作業です。是非とも、年間の作業計画に組み込んで定期的に実施するようにしてください。

なお、エアレーション時の目土散布については上記でご説明しましたので、ここでは目土散布を単独で行う場合についてご紹介いたします。

2)目土散布に必要な機具と資材

目土散布を実施するために必要となる機具と資材は以下の通りです。

  • ・目土用の土壌(砂):床土と同じものか、より良質な土壌(砂)を使用します
  • ・ショベル、角スコなど:目土の散布に使用します
  • ・ホウキ(竹箒など):目土の擦り込みに使用します。芝を傷めない材質のものをお選びください
  • ・散水器具:目土を擦り込んだ後に使用します
<補足事項>
  • ・目土用の土壌には床土と同じものを用いるのが基本となります。ただし、土を主体とした床土である場合、排水性・通気性の改善や土壌の固結防止のためにも、目土には良質な砂を使用されることをお勧めいたします。
  • ・在来の土には雑草の種子が混ざっているため、それを目土として使用しますと雑草発生の原因になることがあります。その点、川砂や洗い砂ですと混入する雑草種子も少なく、これも砂を使用することのメリットの一つと言えます。
  • ・園芸店などでよく「芝生の目土」と称する粒状の用土が販売されておりますが、購入に際しては、踏圧に対する耐久性や長期的な安定性、すなわち、どの程度の期間、粒子の形状が維持されるのか、また、粒子が潰れた場合にどのような性質を示すのか(目詰まりの原因にならないか)などに注意して慎重に検討されることをお勧めします。
3)作業手順
  1. 1.上記の目土散布に必要な資材と道具を用意します。
  2. 2.ショベル等で山になった砂を取り、均一になるように目土を撒きます(写真23、24)。一度に多量の目土を散布しますと後の擦り込み作業が面倒になりますので、できる限り満遍なく、薄く散布します(写真25)。
  3. 3.芝生全体に散布しましたら、ホウキを使って目土を均一の厚さになるように擦り込んで行きます(写真26)。状況にもよりますが、目土の量(厚さ)は枯れた下葉が隠れる程度を目安とします。
  4. 4.芝生の凹凸を軽減することも目土の目的の一つですので、地面に凸凹がある場合には凹部にやや厚めの目土を入れます。ただし、くれぐれも凹部の芝が目土で埋もれることのないようにしてください。厚すぎる目土はかえって芝生を傷める結果になります。大きな凹凸については一度に修正しようとせず、何度か作業を繰り返すことで修正するようにします。
  5. 5.目土の擦り込みが終わりましたら、芝生全面に散水を行います(写真27)。この散水は目土を落ち着かせることが目的なので軽めで十分ですが、潅水を兼ねる場合には、土壌深く浸透するようたっぷりと与えておきましょう。
<補足事項>
  • ・作業時期としては寒地型西洋芝の生育盛期となる春(晩春~初夏)と秋(初秋~中秋)が適期となります。くれぐれも芝の状態が悪い時や芝の弱る夏期(高温期)には行わないようにしてください。
  • ・目土を厚く入れすぎますと茎葉が埋もれて芝の生育に悪影響を及ぼします。1回の目土は少なく、その分、回数多く実施するのがポイントです。
写真22.サラサラした川砂

写真22.サラサラした川砂

写真20.足で踏みつけます

写真20.足で踏みつけます

写真21.5cm間隔位が目安です

写真19.足踏み式の更新器具

写真25.薄く撒けます

写真20.足で踏みつけます

写真26.ホウキで擦り込みます

写真21.5cm間隔位が目安です

写真27.散水します

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6.散水

1)散水に使用する道具

芝生への散水(水やり)をするために必要な(あると便利な)機具は以下の通りです。

  • ・ジョウロ:小面積の場合にはこれで十分です。
  • ・ホース:手撒きの場合、またはスプリンクラーにつないで使用します。
  • ・散水ノズル:ホース先端に取り付けて散水パターンや水量などを調整します。
  • ・スプリンクラー:大面積の場合、または作業効率を求める場合に使用します。
  • ・散水タイマー:これがあると散水時間を設定でき、撒きすぎを防止できます。また、自動タイマーがあると外出時に自動で散水でき、非常に便利です。
2)実際の作業

簡易スプリンクラーの場合には、スプリンクラーを水道のホース先端につなぎ、スプリンクラーを芝生の中央に置いて下さい。蛇口をひねりますと、水圧によりスプリンクラーが回転します。後は水がどの範囲まで届いているのかを確認し、散水ムラのないようにスプリンクラーの位置と水圧を調整します。その日の風向きや風速によって散水範囲は様々に変化しますので、散水の都度、目視により確認し、位置等を調整してください。

散水は芝生全体に満遍なく、かつ下の土壌までよく染み込むようにたっぷりと行います。しかし、あまり頻繁に散水したり、散水量が多すぎたりしますと芝の根腐れや病気発生の原因となりますので、散水のタイミングと量は芝生や土壌の乾燥具合を見て判断してください。

しばしば「西洋芝の場合には毎日の散水が必要なのか?」とのご質問をいただきますが、雨量の多い日本の場合、基本的に毎日行う必要はないでしょう。雨が少なく芝生が乾燥し始めた時のみ散水すれば十分です。芝は乾燥しますと葉が萎れてきて、葉色もやや黒ずんだように変わってきます。一部分でもこのような症状が出ましたら、乾燥し始めた証拠ですので、早めに散水した方がよいでしょう。

ただ、同じように造成したつもりの芝生でも、排水の取り方や周囲の環境などの影響もあって、必ずしも乾燥の仕方は一様とはなりません。よく観察すれば、必ず乾燥しやすい箇所や過湿になりやすい箇所があったりするものです。まずはそうした芝生の傾向や癖を知ることから始めて下さい。それが分かれば、乾燥しやすい箇所にのみ散水したり、部分的に散水量や散水間隔を変えるといった細かな対応も可能になってきます。

よく「水やり三年」と言われるように、水やりは実に奥の深い作業です。水やり一つで植物の生育は大きく変わります。芝においても同様で、常に決まった間隔で、決まった量を芝生一面に撒いていたのでは、決して上手な水やりとは言えません。初心者の内は仕方ないことでしょうが、是非とも腕を磨いて、ご自分の芝生の癖やその時々の芝の状態、気象状況等に応じて、適宜、散水の仕方を変えられるようになって下さい。とりあえずは次のステップとして、全面散水オンリーから脱却して、手撒きによる部分散水(スポット散水)に挑戦してみてはいかがでしょうか。これが上手にできるようになれば、芝生の均一性が一層高まるものと思います。

注)上記の内容はあくまで通常管理におけるもので、張り芝後の養生管理には当てはまりません。芝が根付くまでの養生期間中(春、秋の張り芝適期では約2週間~3週間)は基本的に降雨のあった日以外、毎日、散水を行うようにしてください。特に乾燥した日などは日に何度か散水する必要があります。くれぐれも乾燥で張ったばかりの芝を枯らさないようご注意ください。

写真19.足踏み式の更新器具

写真28.手撒きによる散水

写真20.足で踏みつけます

写真29・30.簡易スプリンクラーでの散水

写真21.5cm間隔位が目安です
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7.除草

西洋芝に使用できる除草剤は種類も少なく、また薬害も出やすいので、除草は手取りをお勧めします。芝生が良い状態で管理されておりますと雑草は発生しにくいものです。ですから、除草のことを考える前に、雑草の生える隙間のない、密な芝生を維持することを心掛けてください。芝の状態が良ければ、万一発生した場合でも十分に手取りで対応できるはずです。

8.西洋芝の年間管理計画

これまで、寒地型西洋芝の維持管理の概要を一通りご紹介してきましたが、実際にこうした維持管理を上手に行うためには、芝生管理についてある程度の知識を持っていただくことはもちろんのこと、それらを年間の管理作業の中に活かして行っていただく必要があります。そのためにはまず、いかに合理的な管理計画を立て、それをいかに忠実に実行できるかがポイントとなってきます。ここでは一つの目安(叩き台)として、当社が”是非ともこの程度の管理はやっていただきたい”と期待する年間管理計画表をご紹介しておきます。これをベースに、ご自分の居住する地域の気象条件や環境条件、芝生管理に掛けられる労力、ご予算などに合った独自の作業計画を策定してみてください。

西洋芝の年間管理計画の一例

(ベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、ジョイターフ等)

作業内容 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計
刈り込み ベントグラス(5~7mm) 1 1 8 毎日 毎日 毎日 毎日 毎日 毎日 毎日 15 8 247回
その他 0 0 4 8 8 8 8 8 8 8 4 4 68回
施肥 1 2 2 2 2 2 2 2 2 1 18回
薬剤散布(殺菌剤、殺虫剤) 1 1 2 2 1 1 8回
目土散布 1 1 2回
エアレーション 1 1 2回
手取り除草 1 1 1 1 4回
散水 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時 随時
<補足事項>
  • ・ここでは月毎の回数でしか示しておりませんが、実際に立案される際には、週毎もしくは旬毎の作業計画を立てることをお勧めいたします。
  • ・寒冷な地域や冷夏の年であれば刈込み、施肥、施薬の時期をずらしたり、回数を減らしたりできるでしょうし、温暖な地域や猛暑の年であれば、施薬の時期を早めたり、回数を増やしたりする必要もあるでしょう。
  • ・施肥に関しては肥料の種類や施肥量、養分バランスなども重要です。これらについては「施肥」のページをご参照ください。
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9.おわりに

先に、いかに合理的な管理計画を立て、それを忠実に実行できるかが芝生管理のポイントだと申しましたが、もちろん、趣味の一つとして芝生を管理される方がほとんどであるわけですから、芝生の管理に生活の全てを合わせることなどは到底不可能でしょうし、何事も予定どおりにはいかないのが世の常でもあります。ただ、ここで最後に申し上げておきたいことは、少なくとも寒地型芝草の芝生を上手に管理するためには、相当な覚悟と思い入れが必要だということです。今では国内にも芝生管理の専門書が数多くありますので、その中の1冊でも読めば、ある程度の知識は得られます。ですから、その道のプロでなくても、独自の管理作業計画を立てることは十分に可能です。しかし、プロとアマチュアの違いはその後なのです。どうしても趣味で芝生を管理される方は、ついつい日常の忙しさから手を抜いてしまいがちです。「まあ、1回くらい省いても大丈夫だろう」とか「今週は忙しいから来週にしよう」とか……。もちろん、多少の変更は仕方ありませんが、場合によってはその1回、その1週が取り返しのつかない結果につながってしまうこともあるのです。

その辺の作業の重要性や緊急性についての見極めというは、やはり、何年もの経験(時に、何度かの失敗)を経てはじめて身に付くものなので、残念ながらここでお教えすることはできません。ですが、ご自分でお立てになった作業計画を“きっちりと”守って、教科書どおりの管理を実践してさえいれば、そうした高度な判断が必要になることはそう多くはないはずです。つまり、“職業”ではなく、“趣味”として芝生を管理される方にこそ、合理的に策定された緻密な管理作業計画が必要なのであり、それを忠実に実行することが何より重要というわけです。ですから、少なくとも西洋芝管理の要領がつかめるまでの何年かは、できるだけ日常生活における芝生管理の優先度を上げていただき、可能な限りセオリー通りの管理を行っていただきたいのです。そして何より、芝生の管理(芝生を観察することも含めます)を炊事や掃除、洗濯と同じように、毎日の欠かせない「日課」としていただきたいのです。そうすれば、必ずあなたの腕前も上達してくるはずですし、それに応じてあなたの西洋芝もさらに美しい芝生となるはずです。そして、いつしかきっと西洋芝管理の奥深さと楽しさに気付かれ、芝生の管理を生涯の趣味として、末永く楽しんでいただけるものと思います。

最後に、西洋芝との出会いによって、あなたの人生がより豊かなものとなりますよう祈念いたしております。

写真3.電動バリカン
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