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芝生の情報館

あなたにもできる!西洋芝の管理

3.薬剤(殺菌剤・殺虫剤)散布による芝生の病虫害防除

1)病虫害防除の重要性

芝生を維持管理する上でどうしても避けられないトラブルが「病虫害の発生」です。

本来、芝が自然のまま健全に生育していれば病原菌に対する抵抗力も高く、容易には発病しないはずですが、芝生においては常に極端な低刈り状態にあることや踏圧を受けることなどによって、芝の体力は大幅に低下しているものと考えられます。特に寒地型西洋芝の場合には、本来、生育に不適なはずの地域(北海道や本州高冷地以外の地域)でも広く利用されていることもあって、どうしても高温期を中心に芝の体力(抵抗力)が衰え、病気にもかかりやすくなってしまいます。

また、芝生という環境は一部の昆虫にとって産卵に最適な環境となるらしく、自然の豊かな地域ではどこからともなくコガネムシなどの芝生を好む昆虫が飛来しては産卵し、孵化した幼虫が芝の根などを食害することによって芝生に被害をもたらします。

したがって、どのように万全の維持管理を行っていたとしても、早晩、病虫害の発生に見舞われる可能性は高く、日々の観察による早期発見、早期防除はもちろんですが、時には発生時期に予防的に殺菌剤や殺虫剤を散布することも必要な対策だと言えるでしょう。特に、早期発見が難しいであろう西洋芝初心者の方にこそ、こうした予防的散布は有効であると言えます。

以下に寒地型西洋芝が被害を受けやすい病虫害をご紹介いたします。

病害:葉腐病(ブラウンパッチ)、ダラースポット病、ピシウム病、赤焼病、葉枯病、さび病※1、疑似葉腐病(イエローパッチ)など
虫害:コガネムシ幼虫、シバツトガ幼虫※2、カラスによる二次的被害※3など
※1:主にケンタッキーブルーグラスに発生
※2:主にベントグラスに発生
※3:コガネムシ幼虫を補食するために芝生に穴を開ける被害

2)薬剤散布に必要な器具

薬剤を散布するために必要となる器具は以下の通りです。(写真12)

  • 噴霧器 または ジョウロ:薬剤散布に使用します。
  • 家庭用はかり:固体の薬剤を使用する場合、計量のために使用します。
  • 計量カップ または ピペット:液体の薬剤や水を計量するために使用します。キャップに計量用の目盛りが付いている場合もあります。
  • バケツ:薬剤を水に溶かす(薄める)ために使用します。
  • 撹拌棒(かきまぜ棒):水と薬剤をかき混ぜて溶かすために使用します。液体をかき混ぜられるものであれば何でも結構です。

<補足事項>

  • 噴霧器やジョウロ、バケツなどは念のため使用する前に洗浄しておきましょう。
  • 噴霧器やジョウロはノズルやフィルターなどに目詰まりがないことを確認しておきましょう。
  • 芝生面積が大きい場合やより均一に散布したい場合にはジョウロでなく噴霧器の使用をお勧めいたします。

写真12.必要な資剤と器具を用意します

3)使用する薬剤の準備

散布する薬剤を用意します。一般の園芸店で入手可能な薬剤については「園芸店で購入できる芝生用資材のご紹介」ページをご参照ください。

農薬を購入する際には、必ずラベルの記載内容をよく読んで、使用可能な芝の種類、防除できる病害虫の種類などが正しいかを確認してください。間違った農薬を使用しますと効果がないばかりか、芝生にも大きなダメージを与えることがありますので、くれぐれもご注意下さい。

  • 殺菌剤:ダコニール1000、ロブラール水和剤、ベンレート水和剤、オーソサイド水和剤80など
  • 殺虫剤:スミチオン乳剤、オルトラン粒剤、オルトラン水和剤、オフナック乳剤など
  • 展着剤:ダイン、トクエースなど

<補足事項>

  • 展着剤とは薬剤を効果的に作用させるための補助剤です。
  • 農薬には水に薄めて使用するものとそのまま使用するものがあります。また希釈倍率や散布薬量も薬剤ごとに異なります。
  • 一般の園芸店で入手できる芝生用の農薬は種類が少なく、残念ながら全ての病害虫を防除することは難しいのが実情です。

4)作業手順

ここでは一例として、水に薄めるタイプの殺菌剤(水和剤)と殺虫剤(乳剤)を同時に散布する場合の手順をご紹介いたします。

なお、殺菌剤と殺虫剤の混合散布は手間を省くには良いのですが、規定の散布水量が異なる場合が多く、また、薬剤によっては特定の剤との混合が禁止されている場合もありますので、事前に説明書を良く読んでくれぐれも不適切な散布とならないよう注意して下さい。一般に、殺菌剤は芝の茎葉に薬剤を付着させる必要があるため散布水量は少なめとなり、殺虫剤は土壌中に潜んでいる害虫に薬剤を届かせる必要があるため散布水量は多めとなる傾向があります。

  1. バケツに所要量の水を入れます。
  2. 所要量の展着剤を計量し、バケツに入れてよくかき混ぜます。
  3. 殺虫剤(乳剤)の規定量を計量カップや目盛付きキャップなどで計り、バケツに入れてよくかき混ぜます。(写真13、14)
  4. 殺菌剤(水和剤)の規定量を重量計で計り、バケツに入れてよくかき混ぜます。(写真15、16)
  5. バケツに入れた薬剤の混合液を噴霧器(ジョウロ)に移します。(写真17)
  6. 噴霧器(ジョウロ)を使って芝生全体に散布液を“均一に”散布します。(写真18)
  7. 作業終了後は使用した道具を全て洗浄しておきます。

<補足事項>

  • 異なるタイプ(剤型)の農薬を混ぜる場合、混ぜる順番は液剤、乳剤、フロアブル、水和剤の順になります。水に溶けやすいものから順に混ぜるのがコツです。
  • 散布液が均一に散布されませんと薬剤の効果がばらつきますのでご注意ください。
  • 芝生面積が広い場合には、施肥と同じくエリアを分けて散布するとよいでしょう。
  • 病害、虫害とも被害が発生した箇所だけでなく芝生全体に散布しておきましょう。
  • 風のある日や降雨が予想される日の散布は避けてください。
  • 作業後は使用した器具に薬剤が残らないよう十分に洗浄して下さい。
  • 散布に際しては薬剤の使用上の注意をよくお読みになり、手袋、マスク等を着用して行ってください。

写真13.殺虫剤を計量します

写真14.殺虫剤を混ぜて撹拌します

写真15.殺菌剤を計量します

写真16.殺菌剤を混ぜてよく撹拌します

写真17.散布液をジョウロに移します

写真18.均一に散布します