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ベントグラス(Bentgrass)
< 2011年02月18日更新 Ver.1.5 >

ゴルフ場のグリーンの芝草として、なくてはならないもの

ベントグラスは、寒地型芝草の代表格ともいえる種類で、とくにゴルフコースのグリーンに使われます。短く刈り込まれたターフは極めて美しく、きめ細かなターフを形成します。芝草として使われるものには以下の4種類があります。

●レッドトップ(Agrostis alba

Agrostis属のなかでは最も葉巾が広く、ワイルドなイメージがあり、ターフとしての密度も低い芝草です。グリーンとして使用されることはありませんが、ティーグラウンド、フェアウェイに他の種類と混播して使われることがあります。

●コロニアルベントグラス(Agrostis tenius

種子からの繁殖で、ほふく茎が少なく、ほとんど株立となります。グリーンの芝草として1960年代までは使われていましたが、クリーピングベントグラス全盛の現代では、新しい品種開発はほとんど行われていません。

●ベルベットベントグラス(Agrostis canina

その名が示すように、非常に繊細な葉をもち、優美なターフを形成するため、芝草のなかの貴婦人と呼ばれていますが、現在はほとんど利用されていません。

●クリーピングベントグラス(Agrostis stolonifera

ベントグラスの中でも「ペンクロス」を中心にゴルフ場のグリーン用として最も多く利用されています。これは世界的な傾向で、この傾向はこれからも当分続くと予想されています。

ほふく茎がよく発達し、裸地をカバーするスピードも速く、また生育がアグレッシブなため、ターフのリノベーション(更新)を頻繁に行うことが必要です。

クリーピングベントグラスには、種子繁殖と栄養繁殖があり、種子繁殖の中のベントグラス品種の一つである「ペンクロス」は、ベントグラスは夏期病害に弱いというそれまでの概念を一変させ、その優れた耐暑性により広い地域で使われるようになりました。また、1986年に発表されたペンリンクスは、ペンクロスの弱点とされる葉色の悪さをカバーし、斑点もできにくいといった特徴を備えているといわれますが、これについてはいささか疑問が残ります。

現在は品種改良も進み、第三世代といわれる品種(Aシリーズ、Gシリーズなど)が発売され、トーナメント開催コースなどで高い評価を受けています。


ペンクロスのターフ

ペンクロス物語

ベントグラスには多くの品種があり、それぞれ特性をもっていますが、おそらく現在世界中のゴルフコースのグリーンに使用される芝草の80%以上は、ペンクロスであるとみていいと思われます。

ペンクロスは1954年(昭和29年)に発表されて以来、40年経つにもかかわらず、今なお新設のゴルフコースはもとより既設のゴルフコースの改造工事においても採用されています。このことはいかに優れた特性をもっているかの証明にほかなりません。


ペンクロスの採種圃場

ペンクロス以前のベントグラスは高温の条件下で衰弱がひどく、耐病性に劣っており、冷涼地のごく限られた地域以外は夏の利用はできませんでしたが、ペンクロスの出現以来、その優れた耐暑性、耐病性によって、日本では南九州まで、アメリカではフロリダ半島までグリーンの芝草として利用されるようになりました。

ペンクロス以降、ペンクロスII(後にペンイーグルとなる)、ペンリンクスが同系列のものとして発表されていますが、ペンクロスを越えるものであるかは疑問に思われます。

ただ、このペンクロスは低温期の変色や斑点ができ易いなど、いくつかの欠点がありますが、そうした欠点をカバーしてあまりある長所をもっていることから、ペンクロスの時代はしばらく続くものと思われます。

ペンクロスは、アメリカ・オレゴン州の採種圃場(写真参照)でみられるように3列に並べて植えられた3種類の親系統を交配させたもので、その種子が毎年採取され、日本に輸入されています。