トールフェスク(Festuca arundinacea)は、1931年に「Kentucky 31 Fescue」という品種が発表されて以来、注目されるようになった芝草です。この芝草が発表された当時は、奇跡の草(miraclegrass)としてもてはやされ、戦後日本に初めて輸入された時は1kg5万円という高価なものでした。しかし、この「Kentucky 31 Fescue」は芝草としての利用に応じられるようなものではなく、道路の法面や河川の堤防などの緑化用の草として利用されるだけでした。 その後、芝生用としての改良が始まり、1970年頃から芝生に適した新品種(ターフタイプ・トールフェスク)が発表されるようになり、とくに1985年以降は毎年のように新しい品種が発表されるようになりました。 芝草としてのトールフェスクを考えてみますと、下記の表のように長所ばかりでなく、いくつかの短所も挙げることができます。しかしながら、この芝草は寒地型芝草でありながらも暖地型芝草に近い性質をもった唯一の芝草として、今後更に広く利用される可能性が高いように思います。しかも、近年はより矮性の品種が開発されていることから、減農薬を可能にしながらも、寒地型芝草の美しさを保つ芝草としてより多くの場所で利用されるようになるでしょう。 |
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ゴルフコースにおいては、グリーンを除いて、ティーグラウンドからエプロン、フェアウェイ、ラフまで広く利用できます。株立ちタイプでありランナー(匍匐茎)をもたない(注)ことからティーグラウンドの芝草としては不向きに思われがちですが、当社の実績をみるかぎり、決して不向きな芝ではありません。また、フェアウェイの芝草としてケンタッキーブルーグラスと混播すると、両者の優れた性質がさらに強調されてより良い結果が得られるようです。 アメリカにおいても、25年位前まではターフグラスとしての利用はあまりみられませんでしたが、近年では公園や広場の芝草としてみかけるようになってきています。今後この傾向はますます強まり、21世紀の芝草としての地位を確立するものと思われます。 注)近年、匍匐性の茎をもつ品種が開発され、注目されています。 |
道路脇に植栽されたトールフェスク |
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