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482だより

2000年5月号

先月号では、ベントグラスという芝草がゴルフ場のグリーンに使われるようになったお陰で、ゴルフというスポーツがより一層面白いものとなり、それがゴルフの発展にもつながった、それ故、ゴルフ業界にとって、ベントグラスは正に「宝物」である、と述べました。

しかし、このベントグラスという芝草にも大きな弱点があります。それは日本の夏のような高温多湿という気象条件が苦手だということです。ですから、日本はもとより、これと似た気象条件の地域でベントグラスをグリーンに採用することには、実に様々な障害や困難が伴います。

先月、アメリカで行われましたマスターズトーナメントは、毎年、オーガスタナショナルG.C.というゴルフ場で開催されておりますが、このゴルフ場も20年近く前までは、ベントグラスのグリーンではなく、バミューダグラスにライグラスをオーバーシードしたグリーンを使っておりました。そもそも、このオーガスタナショナルG.C.はアメリカ南部のジョージア州アトランタの郊外に位置しており、夏の蒸し暑さは、日本のそれによく似ておりますので、気象条件からすればバミューダグラスを採用するというのは最も妥当な選択であるわけです。

しかし、このオーガスタナショナルG.C.も、1982年のマスターズからはベントグラスのグリーンが使用されるようになりました。これはジャック・ニクラウスらの提言によるもののようですが、当時の管理技術のレベルからすれば、その実現に当たっては今以上に大きな困難が予想されたはずです。それでもこの提言が受け入れられた背景には、ジャック・ニクラウスというスーパースターの存在だけでなく、やはり当時の主催者らの中にもベントグラスグリーンの素晴らしさに対する共通した認識があったからだと思います。

私が初めてオーガスタナショナルG.C.を訪れたのは1981年の8月初めだったのですが、ちょうどその時にベントグラスへの改造工事が行われておりました。運良く、アメリカ流のグリーン改造法を見ることが出来たのですが、あれから早20年弱が経ち、今ではそのグリーンも「鏡のグリーン」と形容されるほどに高速で美しいグリーンになっております。

このマスターズでの成功に触発されたのでしょうか、それ以降、ベントグラスに不適とされるその他の地域、例えばフロリダ半島やハワイのようなところでも、ベントグラスを採用するゴルフ場が現れる程になり、今やグリーン用の芝草として、ベントグラスは不動の地位を築いたといえるでしょう。

このようにグリーン用の芝草としてもてはやされているベントグラスですが、こうなるにはそれなりの理由があったわけです。その最たるものが、マスターズの例でもお分かりのように、グリーンの更なるスピードアップを可能にする点です。

高速のグリーンでは、プレーヤーの技術の差がはっきりと現れることになり、それがゴルフというスポーツのおもしろさと難しさの両面を際立たせてくれます。そして今や、アマチュアゴルファーまでが速いグリーンを好むようになり、各ゴルフ場がグリーンの速さを競う時代になっております。こうしたゴルファーが求める高速グリーンを実現できる芝草こそがベントグラスであり、これ以外の芝草では殆ど不可能であるといえます。それゆえ、グリーンの芝草としてはベントグラスが唯一無二の存在といえるのです。

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